見知らぬ男に
いつかに刺された右脇腹
抜糸の痕と汗の匂い
蜃気楼を初めて見た夏
君がこの世に降り立った夏
今世紀最大の奇跡
真白で生まれた君
僕と同じ 驚愕した
右脇腹に抜 ....
マーブルチョコレートを口に含み
父の事を浮かべながら
「美味しい。」とつぶやく。
喉を滑り込み
口の中をほろ苦くして
「これはうまいね。」とほころんだ父の顔が
はっきりと見えた。
....
過去は
かるがる
捨てながら
未来は
みるみる
やってくる
☆
無邪気な季節は
もはや
過ぎ去り
まのびして
夢も現も
薄くなりつつ
☆
....
望んでいた感覚
手にした途端に褪せていく
こんな繰り返し そんな繰り返し ウンザリしながら
積み重ねた努力に比例しない成果
描き尽くした風景に比例しない高揚
何もかもが目的化ベー ....
彼女が弾く
クラシックピアノの旋律で
ジョン・レノンのImagineが
魔法のように何処からともなく
記憶として生まれて
再び消える
彩られるブーケを持って
一緒に写真を
撮ろうと ....
詩を書かなくなった詩人を見て思う
ああ君は満たされたんだね
だから詩を書かないんだね
いいよ
僕は
人生のど真ん中で
一所懸命生きているから
いつでももどっておいで
五月の蒼い蒼い空の ....
たった三日でもわたしをあなたのテーブルに飾ってくれてありがとう
消毒臭くて清潔な水は、もちろん雨よりも美味しくはなかったけれど
あのまま樹にいたとしてもどのみち無残に滅びていく事にかわりない
....
寝起きの熊のよう
ボンヤリ不機嫌
だぶだぶの部屋着
クロックスを引きずって
それでも花
今朝 三つめ
ピンクのチューリップ
黄色い水仙
真っ赤な髪の少女
重そうにコンビニの ....
手袋をした手が 器から
大量の人を掬い上げていた
その指の狭間から 夥しい人が
こぼれて落ちていった
器の底から
呻き声や悲鳴や嗚咽が聞こえても
泡がはじけるように消されて ....
僕は、今から四十年前
{ルビ勾玉=まがたま}のような白い種として
母の胎に宿りました。
それがこうしていつのまにやら
大人になって、独歩して
思考しては、言葉を発し
地上の日々を営んで ....
囲碁には(天元)の一手があるという。
運命の場所をそっと探るように
シナリオの無い未来を読むように
白と黒の石は…互いに音を立て
碁盤の升目を、埋めてゆく。
――碁石とは、天の星々の ....
みんなおんなじ人間だ
といってみたり
おなじ人間なんていないんだよ
なんていってみたり
結局どうしたいんだよ
わからないことって
なんでこんなにこわいんだろうね
咲いてい ....
中学生になってはじめて学校へ行った日
いくつかの坂道を登り下りし
いくつかの集落を抜けてたどり着く
坂道は辛かったが
ところどころに桜が花をつけていて
気分は悪くなかった
集落は ....
音に当たり
目が痛む
何も見ない
器の心
火傷
夜の雨を着る
灯りのはざま
見えない橋
切れぬ鋏が切る静けさがあり
水たまりを避け曲がる色
星は無く ....
{引用=びっくりしました
先生が私のアパートのバスタブの底に沈んでいるのを見た時は
ついにやらかしてしまったと思った
内臓が一度にズンと下降する感覚
愛用のキャメルのジャケットを着たままの抜け ....
伝えたい
と思って伝えた真実。
それは絶望と嫌悪と怒りをもたらした。
言わないでおこう
と隠した真実。
それは安心と安定をもたらした。
伝えたい
と思って伝えた真実。
それ ....
私は詩を書いているのではありません。あなたが読むまで詩ではないのです。風が吹いた。花が揺れた。
そんなことは詩ではないのです。あなたが読んだものだけが詩なのです。詩は日常にありません。日常に詩がある ....
ほんとなんてものがないなら
うそをついて
うそがほんとになるまで
いいことがあるかもしれない
今日に想う
丁寧に話しかけたあなたが
丁寧にこたえてくれた
なにかできるかもしれない
深呼吸してグーパー
わたしのこのてで
父の眼鏡が光を取り込んで
天井に反射をした淡い粒子が
「帰ってきたよ。」と呼びかける初夏の午前中。
庭では母と娘が
来たるべき新盆に備え
草取りをしている。
うっすらと積もる雪の中 ....
川沿いに座る
気持ちの良い風
どこからか
遠くだろうか近くだろうか
電話のベルが鳴っている
ちりりりりん
ちりりりりんと
よく響く黒電話の音
ベルが止む
誰かの話し声
年老 ....
頭皮が何か云っている
お疲れ様 そろそろ本格的に休めよ〜
頭痛の前兆のような頭皮痛
マッサージでほぐして
頭皮の美容液という名の育毛剤をシュッシュッ
ああ痛い痛い
そろそろ ....
昨日をすべからく塗りつぶす朝
古い置時計の振り子のよう
きらめけば朝日に染まる空
止めどなく冷たい空気の粒子のふれ
透明度の高い雨粒よりうつくしい
太陽にとどまるたんぽぽの綿 ....
霧の漂う高原で朝を迎える
冷えた暖炉に薪をくべる時
私の内側で眠っていた生命の光も
優しく穏やかに目を覚ます。
何かが覚醒するときに感じる小さなエクスタシーは
すでに準備 ....
ただ光のみ求め歩いていた
右手には闇
左手にも闇
光の道は永遠に続く
ただ光のみ求め歩いていた
哀しくなっても
歩み自体は止めなかった
苦しくても
くさらずにいようと決めた
ただ光の ....
現実から逃れるためではない
現実を死ぬまで生きる
そう 何処かで決めているから
扉も窓も開けたままにしてある
鍵は壊れたまま
入口は出口で出口は入口
外側は内側で内側は外側
脳が現実だと ....
駅前ターミナルに到着しようとしていた
路上に杖をついた高齢の紳士が
窓のすぐ下に見えた
彼の進む先には確かにバス乗り場があるが
そこが人の歩くべき路でないことに
既に気付いたのか
ほんの少 ....
大型ショッピングモールを歩いていた
なぜ生きるのだろう
そう考えた時
心がしんと冷えた
なぜ生きるのだろう
なぜ生きるのだろう
とりあえず今日のめしを確保するため
働くけど
感謝そ ....
神社のない
町に生まれた
墓もない
新しい町に育って
隣り町の友達は
高層マンションから
空き地だらけの町を眺めた
僕らは
歴史のない町に育った
僕らの故郷には
神社がない
僕ら ....
遥か雑踏を離れて
孤では在りえない存在を確認する
収拾のつかない順序をゆっくりと整理する
いきることは水底をしらない漣
序連で奏でられていた通奏低音は
変化しまどろみ羽化すべき朝を
....
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