それは引っ越しが終わり、ようやく新しい家に慣れたころ
突然やってきた。
        
我が家でなくても、彼じゃなくてもよかったはずだ。
何度そう思ったことだろう。
この時ほど ....
「釣りに行かないか」

彼がそう言いだしたのはめずらしく彼女が午前中に起きだしソファで寝転びながら、
いそいそとインテリアと家具の本を広げた時だった。
彼女はマンション購入が決まっ ....
あんぱんとカレーパン

明日の食ぱんを買って

パン屋さんを出ると

とっても可愛い白くてパンのような女の子が

こんにちわとあいさつしながら入って行った

毎日ふわふわの出来たて ....
{ルビ深閑=しんかん}とした井戸の底で 
今夜も私は、{ルビ蹲=うずくま}る。  

遥か頭上の丸い出口の雨空に 
嵐はごうごう、吹き荒れて 
木の葉がはらはら、鳴っている 

遥か ....
赤・白・黄色の器を 
ほわっと開いて 
ちゅーりっぷが咲いている 

通りすぎゆく人々の上に 
そっとそそがれる 
天の歌を受け取り 

嬉しそうに 
細い茎を揺らして 


 ....
あなたはそこに 
じっと佇んでいる 
ひとりの貝 
そっと口を開いた奥に 
光の{ルビ珠=たま}を秘めて 
闇をあまねく照らし出す 
僕たちは丘のうえのちいさな雲を思いだす
比企丘陵のなだらかな起伏のうえにそれはほっこり呼吸していた

風が窓辺を訪れて遥かな便りを伝えてゆくのだよ

荒川を挟んで大宮台地と対峙するかのように ....
それは年明け早々のことだった。
このときほど彼と彼女に驚かされた事はない。

お正月も三が日が過ぎて、ようやくいつもの生活に戻り始めた日曜日。
彼女も仕事が休みで三人揃っての休 ....
零れ落ちる花弁を無碍に季節の風が運んでゆく

ちょっと絡めただけの指先が愛しくて

君の名前をそっと呼んで見る

僕は花盗人君の唇を奪うろくでなしさ

君にあずけたこころはいつか返して ....
体育の授業でできなかった
隣に座る女の子が休み時間に
ぼくを誘ってくれた
ふたりで校庭をはしって
鉄棒につかまり
練習を始めた

雨の降らない日は
休み時間のたびに
ふたりで鉄棒をす ....
     はしる かぜ
     まどう くも
     かわく かなしみ
     うたう さんだる

     なでる ひかり
     わらう このは
     すける わだか ....
止まらない世界は僕らを圧迫する
時間は切り刻まれて疲れている

それでも安息を求めてやまない魂は
慰安の色をさがす

世界を認識し感じるのはこの皮膚

本当は政治や経済で色分けされた世 ....
木の皮に こもった熱が
少しづつ 雪を溶かし

陽射しが 波紋のように
幹の根元を まるくあゆむ

溶けた雪は水となり 土にしみ込む
しみこめない水は 雪の下をたぱたぱ流れ

水の膜 ....
木漏れ日が気持ち良い

緑が光りを浴びて生き生きしている

鳥の声も嬉しそうだ

人の声がする

嬉しそうな声だ

ちらりほらり木々の間から

鮮やかな着物を着た女性たちがこち ....
おまつりのちょうちん
ぼうととおくあかるく

おみこしを
かねを たいこを
かついで たたいているのは
おじいちゃんだ
おとうさんだ
となりの おにいちゃんだ

いまはもういない
 ....
役者は
媚びてしまった

目の前の毒リンゴを
食べてしまった

役者が
安っぽい悦楽で
身体中を痺れさせている間に

観客は
優しい嘲笑を浮かべつつ
足音もたてずに去ってい ....
子供達がてをふりながらさってゆく
老いた道化師は泣いた

彼らはもうサーカスを振り向かない
ガランとしたテントだけが残される

1918年の秋はからっぽだった
1928年には不安が流 ....
蝶を呑んだものの肌に
蝶が現われ
真昼の終わりまで
話しつづけている


小さな音の
まわりだけの冬
鳥は追う
羽を忘れる


石の径の影
曇のなかの声
 ....
わたしは失格者
子供の頃は子供として失格
いまは大人として失格だ
夫として
父親として
男として失格なのだ
当然女としても
地獄に堕ちる者として失格
天国に入る者として失格
社会人と ....
お父さんの部屋は半分おなんどで
机の横にさびたバス停がありました
お父さんが3年前
会社の近くのがらくた市で買って来ました

私と妹は大喜びしました
お母さんは
「何考えてるのよ、こんな ....
その日は珍しく彼女の帰りが早かった。
「何食べたい?」
帰って真っ先に冷蔵庫を覗くなりそうわたしに問いかける。
           
頭をめぐらせ冷蔵庫にありそうな食材でなおかつ ....
ドアをあけたらまた今日でした
かわらない君がいて
少しほっとする

ハムスターにエサあげて
いわれて小さないのちにむきあえば
もっとやさしくしてくれと
するどい爪でひっかかれた

き ....
もう冬休みに入り部活へ行く以外は毎日家にいる。
こうして彼女とふたりで休日を過ごすのは夏休みや冬休みの
彼女が休みの平日しかない。
          
「ねぇ、いい加減起きた ....
 まさぐる天の 青色の時


そらが、青いって誰がきめたのさ
海も 僕らの春も青いという


 この世のすべてを網羅する
 辞書は、こんなにも重いのに
 そらの プリズムのあらゆる小 ....
先生が僕を卑怯者と呼んだ
その名前はおでこに貼りついて
やがて
僕の皮膚になった

月日が過ぎて
周りが誰も気づかなくても
僕の耳には
先生の声が時々聞こえた

先生 僕は先生のよ ....
声がする
崖っぷちに
かろうじて
爪を立て
呼んでいる
誰かを
よるじゅう
求めている
雨に打たれて
傘も持たない
家もない
母もない
優しい思い出も持たない
痩せた猫が
 ....
やわらかな陽の差す日曜日の午前中、
朝食の片づけをする私の背中に彼の静かな声がかかる。
         
「そろそろ買い物に行くか?」

彼女は今朝もぎりぎりまで寝ていて、慌て ....
こんなにたくさんの
文字が 並んでいるのに
どうしてさみしいんだろう

文字でなんか温度を感じられない
そう言われて涙したのは私

向こう側にいるはずの
だれかの息遣いを知らない

 ....
「かあさん、コンビ二で『レシートいりますか?』って言われたら
なんて答える?」
 と中学生の娘が聞く。
「ふつーに『いりません』というかなあ」
 と私は答えた。

「えっそうなん。私はどう ....
「ねぇ、この本の表紙知らない?」
           
彼女は読み終えた本をわたしに見せる。
その顔にはどうしてないのかわからない、不思議でならないと
いった表情がありありと浮か ....
夏美かをるさんのおすすめリスト(7676)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
彼と彼女の中庭- 石田とわ散文(批評 ...3*13-4-17
彼と彼女とわたしの海- 石田とわ散文(批評 ...3*13-4-16
パン屋さんにて- 灰泥軽茶自由詩9*13-4-16
井戸の底にて_- 服部 剛自由詩6*13-4-16
春の日溜り_- 服部 剛自由詩3*13-4-16
- 服部 剛自由詩4*13-4-16
丘のうえのちいさな雲- 梅昆布茶自由詩613-4-16
彼と彼女の買い物- 石田とわ散文(批評 ...3*13-4-15
花盗人- 梅昆布茶自由詩813-4-15
逆上がり- 殿岡秀秋自由詩713-4-15
はるの_くわだて- nonya自由詩21*13-4-14
感性の幹- 梅昆布茶自由詩913-4-14
陽_波紋- 砂木自由詩17*13-4-14
陽春の花- 灰泥軽茶自由詩7*13-4-13
はるまつり- 朧月自由詩613-4-13
役者は夜になった- nonya自由詩14*13-4-13
道化師の秋- 梅昆布茶自由詩1313-4-13
午後と冬- 木立 悟自由詩1413-4-12
失格三昧- ただのみ ...自由詩20*13-4-12
バス停- salco自由詩27*13-4-11
彼と彼女とワインの夜- 石田とわ散文(批評 ...4*13-4-11
ハムスターのいる朝- 朧月自由詩413-4-10
彼と彼女と綿ぼこり- 石田とわ散文(批評 ...6*13-4-9
- 月乃助自由詩7*13-4-9
ルピナス- Lucy自由詩27*13-4-9
痩せた猫- そらの珊 ...自由詩21*13-4-9
彼とわたしとぶり大根- 石田とわ散文(批評 ...5*13-4-9
伝言- 朧月自由詩513-4-8
『あっ』というクッションに似たもの- そらの珊 ...散文(批評 ...713-4-8
彼と彼女の本棚- 石田とわ散文(批評 ...11*13-4-8

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