キスは
するとされる より
するとする が、いい
海岸沿いを走る車は、山道に入り
坂を上る、木々の葉群の隙間に
一瞬、輝く太陽の顔は覗き
夜の列車のドアに凭れた窓から
ふいに見た、夜空に浮かぶ
ましろい盆の月は夜を照らし
――昼も ....
季節は容赦なく 黄昏を早める
暮れなずむ街頭に キャバクラの呼び込み
ラインを際立たせる タイトなミニのワンピースで
道行く仕事帰りの おじさん達に声をかけている
下心に乗っか ....
賑やかな祝祭は
終わり
各人は家路に着いた
人の優しさ
温もりが
泉のようにあふれでて
懐かしい人の
胸を満たし
小さかった人は
見上げるような大人になり
いたわられる人となって
....
海が見える新興住宅地
まだ買い手のつかない広い区画には
イタドリ ススキ タンポポ
何処からともなくやってきた
柳や白樺の若木も生え
地面は覆い尽くされることもなく
盛り固められた土が腐 ....
ことばの奥底にある
私の声が聴きたい。
そう扉を開く時にいつもあなたはいない。
なかないで、
なかないで、
あなたはいつ ....
キスを与えられないので
夫に向かってワンワン吠えているの
毎晩のベッドへ向かう
スクショしてほしい
切り貼りしたい夫との演舞
明日から残業が増えるんだって
へー関係ない体力 ....
コスモス
風にゆれる
何を言っても
遅いと揺れる
コスモス
風に散る
何を喚こうが
間に合わないと
散る
コスモス
風に折れる
ただ真っ直ぐに
延ばそうとした
腕のか ....
もう君の見ている風景に
僕は居ないのかも知れないけど
僕の見ている風景に
君がいつも居るんだよ
強い強い風の中
白いワンピースをひるがえして
一人立っている
大人になると言う事は
....
虫の音は過去から届くメッセージ紐解きながら浅い夢みる
つかめばするりと逃げてゆくとかげのしっぽに似た夜だ
まだら雲見ている猫の背中にもまだら雲がひとつぽっかり
朝起きて歯医者の予約を ....
雨の夜
傘をさして街に出る
顔も知らない人に会うため
自分じゃないような早足で目的地に向かった
複雑で微妙な心境
臆病な人見知り
本当に会いたかったかどうかは
今もよくわから ....
公園のベンチに座っていた
そよ風が恋人のように寄り添っていた
古いノートの中で
ことばは悶えた
それとも窮屈な服を着せられて
詩がのたうち回っていたのか
その時ひとひらの蝶が
記憶に ....
プラナリアに 出会いたい
永遠の命だというプラナリア
世界が黄砂に なぶられて
沈鬱が大陸を覆い 海洋にも降りた
人は みみずのように
スマホのなかの情報に生きる術をもとめ
無数の出口 ....
水時計に溶けていた
血液の雫があって
時計の器の外には
一枚の翼が堕ちている
静かな痕跡がある
誰しもの夢のなかで
真夜中にも時間を報せる
いっぱいになった
聖なる水時計は
透明な水 ....
何処にも見つけることは出来なかったはずだ
そう訴えているかのように
私の視覚を証言台に立たせ尋問する
画家であれば画材は其れまでに蓄えてきた感情の十色
上手く言葉を塗り付けようとするが
もう ....
およそ文芸である以上読者がいて、
個人的な人生あるいは社会的になんらかの影響力をもつもの、
あるいは芸術としての愉悦を読者に与えるものでなければならない。
なんてね!
詩として
C4 ....
炎に出合うと体が勝手に近づいていく
この習性を
人間に気付かれたのはいつだったろう
夏の水田に灯火が点いて
人が居るかと思えば炎だけ
どれだけの仲間が焼け死んだことか
人間にも似た ....
おそらくもう夏は行ってしまったのに
夕刻になると
埋葬されない蝉がうたう
取り残されるということは
ひとつぶの砂のような心地
苦いさみしさだろう
――さいごの一匹になりたくないのです
生 ....
北風の只中を防寒靴で歩いた、僕は
あの日の旅路を手にしたペンで、筆記する
*
――記憶に蘇る、海の匂い
遠くに見える、断崖に近づくほど
潮の香りを鼻腔に…吸いこみ
断崖の ....
絨毯は 空に舞い上がって
塔や市場や 大きな川を見下ろす
初めて 飛行機に乗った時の記憶
風を耳元に感じることはなかったけど
ぼくは古びたランプを 本棚の後ろに
小難しげな専門書 ....
透明に輝く街並み
降りしきる雨空の許
嘘のように広がります
街路樹の緑艶やかに
用水路の水の流れは銀の透明
街道を走る車音すら響き澄む
私の右目はとっくに塞がり
捕捉可能な視野が ....
私の心の鏡に
魑魅魍魎の輩
知力欠如の姿
視力のすべて
聴力をも失い
手探りで嗅ぐ
風に混じる潮
光がさす感触
誰を呼んでも
聞えないまま
自分の声すら
耳 ....
ムシと言えば…
小学生のとき、有名な昆虫博士のお話を聞いた。
日本では 蜘・ムカデ・蛇にトカゲ・ノミ・虱など 小さな生きものをムシといったけれど ここでは昆虫のことを言います。では、昆虫とは何 ....
夕暮れの教室で
君と二人きり
何か話したかったけど
とうとう
話せなかった日
大人になって今
ぼんやりと思い出す
あの日の教室
何も話せなかった事を
いつも後悔したけ ....
球体は弾けた
その飛散した一粒一粒の種子が
時代をあまねく代弁するかのように
ある方向へと向かって流れ出す
思い出して欲しい
白い腕が守ろうとしていたのは何だったのか
幸運の女神は目を ....
秋刀魚のような
ひとでした
辛味のきいた
大根おろしが
ほどよく似合う
それはおいしい
ひとでした
....
深い森の中を彷徨っていた あの頃
草木の名も 花の色さえも知らないで
認識は ぽっかりと開いた陽だまりの草地に
唐突に現れて 「境界」 を教えた
黒い雲の切れ間から洩れる 血のよう ....
雨の夜
国道には死があった
帰り道を急ぐ車の
その一台一台に生があるその対極に
或いは
その隣りに
ぴくりとも動かない人間の脚はまるで
精巧なマネキン人形の部品のよう
アスファ ....
坂を上りきったところには思い出が宿る。
僕は持ってきた手帳を開き、使い古した万年筆でそっと言葉を描く。
生命の継続。生命の継続。生命の継続。
三回繰り返すと不思議とその場所には新しい ....
人生に意味はない。
毎日に意味はない。
考えれば考えるほど
その想いが強くなってくる。
長く考えてしまうほど
深く考えてしまうほど
その想いが強くなってくる。
人生の
無意 ....
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