春という素性の上に
細いすじがねを
うっかり高く伸ばしてしまった
ふたりは
よりかかりあう
その寸前で
定冠詞のような
小さな花を咲かせている
あなたはわたし
わたしはあなた
....
砂地にのびる
影法師
不機嫌な男みたいに
息苦しくて
湿っぽい
気圧が下がってる
きっと
嵐の前触れだ
....
{画像=140426112527.jpg}
都会の一角に寄り添って
おまえは小さき声を上げていた
1月の薄い陽射しを浴びて
身体には輝く黒石の毛皮をまとい
丸まり
鞠のように丸まり ....
一皮剥きたまえよと言われても
簡単にできないことだってある。
世界有数の薄グリーンの私でも
頭を抱えることだってあるのだ。
至高の薄エメラルドの私でもだ。
申し遅れたけどもキャベツです。
....
手指の曲がり具合
それだけを見ていた
読み取れない手話など
どうでも良くなってた
ふと
止まって
人差し指をふる
「どうしたの?」
と
見 ....
鳥が庭の果実をついばみに来た
鳥によって食べ方のリズムが違う
あんなに早く飛べるなら
雨粒も追いかけていける
まあるく逆さに空を映しながら落ちていく
綺麗なものを
風がさらった思い ....
ポカリ凍らせてきて溶けない
アンパンマンの首から下を食べるのは なし
1
おそらくどの国民でも
国の敵が現れたとき
一つにまとまろうとするであろう
為政者はそれを利用して
敵を作り国家存亡の危機をあおり
同じ方向を向けさせた歴史もある
....
コーヒー豆を煎っている
剥けてくる薄い皮を丁寧に
吹き飛ばしながら煎っている
誰かのためでもなく、自分のためでもない
ただ美味いコーヒーになるように
細心の注意を払っている
窓から ....
昼下がり
古いテニスコートを占領して
自転車の練習をする女の子
もうずい分上達したようで
ぎこちなくだが転びもせずに
不規則軌道を描いている
ヘルメットを被った人工衛星
昔は誰も被って ....
甘える
それは奮い立たせる刺激がない、もしくは、そんなもの、要らないから
私は、何かになろうという気持ちがないし、あなたは
病気を治し、社会へ戻ろうという気持ちがない
似たようなふたりが
....
鳩尾を透過していく
風のライオン
たてがみの感触に
背中が粟立つ
睫毛を蹴って逃げ出す
光のインパラ
ボンネットを飛び移る
逃げ足が眩しい
舗道に投げ出された
影のアミメ ....
人はなんでもないような場面を
なぜか覚えているものだ
中学校からの帰り道
乾いたグラウンド
走者のあげる土埃
プールに浮かんだ白いはなびら
すでに樹の指先は新しい葉を生やして
吠える ....
私の目はどんどん見えなくなっている
ぼんやりと、ゆっくりと、確実に
どんどん見えなくなれば
みなの姿も あの人の顔も
どんな感じなのか 憶測で考えていくだろう
できるだけいい方向へと思う ....
田に水を張ると
一面が鏡になる
田植え前の一瞬
薄い空を映して
今年はどんな年かと
思案している
今年はどんな稲にしようかと
話し合っている
近くの葉桜が
....
絵の具の声が
はじめて油絵具を手にした少女には 聞こえた。
「恥じるな ためらうな チューブから色を ひねりだせ」
開封し、すこしだけ色を出してはみるけれど、ぬっちょりとした色があるだけの
そ ....
夜明けの森を夢見た わたしの閉じたまぶたは
光によってひらかれる あなたの白い
春のような指さきで
わたしのためにあなたは生きていた
わたしが悲しいときははらはらと涙を流した
嬉し ....
水は、万象の旅人
生き物の身体は
彼等の泊まる、仮の宿
水よ
お前が
笑いさざめくのは
春の林床に降り注ぎ
小川を結び、走るとき
お前が
咳き込み ....
舟から生える樹
川岸の影
海を描く霧
器の水に
沈む糸くず
雪が雪を追い抜いて
土や花を振り返る
土にも花にも
雪は見えない
酒に勝つ甘味が見つからず ....
水彩の草原に僕はひとり仰向けで、
空をゆく雲を見ている。
淡い太陽の光を縫うような、
ぼやける事のない雲の輪郭を僕は指でなぞった。
寂しくなんてなかった。
なんとなくの不安を誰かに知 ....
ことばに変換できない
内に断層の捲れ上がる感覚
{ルビ穿=うが}たれた二つの池が風もないのに細波立つ
千も万もの透明な手足を生やしては
縋るものもない空の空を
死にもの狂いで掻き毟る
....
私は卵を毎日産む
優秀な鶏
多くの同胞と同じように
一羽ずつ
ケージの中で大切に守られ
整った環境で
健康に育てられ
栄養が 無駄な筋肉や
要らない羽にいかないで
卵のみに集中するよ ....
子どもの頃
大縄跳びが苦手だった
自分の順番がきて
入るタイミングを計っているが
なかなか飛び込めなくて
戸惑っていた
後ろから
早くと背中を押されて
飛び込んだら
いつも縄を踏 ....
主語がない! アレ。コレ。
子どもをたくさん産んだ主婦ほど威張っている
失敗しても謝るより先に人のせいにする
ゴキブリとおばさん、どっちがしぶといか? 生物学レベルで検証中!
....
「土地と家の権利書を盗られた」
しまった場所を忘れたのだ
「炊いてあったご飯がなくなった」
自分が食ったのを忘れたのだ
忘却は、現在の妄想を生む
生きていたときには
あれだけ不満の ....
あまった時間なんてないのにもてあます
反省なんてしたくないから探す/言葉を
文字にすればゆるされるとおもっている
今が過去になると決めている
明日の自分を想像できるけど
少し夢をみる ....
嫌な予感しかしないギターのイントロが陽気
自分が思っているようには
他人は自分を見てくれない
それで私は
極力自分を
客観視しようと試みた
気付いたら
他人の顔色ばかり伺って
ますます自分が
わからなくなっていた
....
眼下の木目のまな板に
鯛が一匹、のっている
包丁を手にした、僕は
ひと時の間、思案する
いつかの夢の誰かの囁きが
何故か脳裏にりふれいんするのだ
(かっ裁いちゃあいかん、かっ裁いち ....
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