すべてのおすすめ
時折天井から記号が滴る

灰色の水槽の中には青白い都市が浮遊している

祭壇めいた台の上で
少年はくる日もくる日も
華奢な実験をくりかえす
時々淡いひとりごとを呟きながら

ほのかに ....
すべての数が
奇数であればいい
あるいは
すべての多角形が
三角形であればいい
それもできれば正三角形で

そんなことを思ってしまう朝はおそらく
何かをあるいは誰かを
探す夢を見てか ....
暗示は歩いてゆく
眠りをめぐる回廊を
重ねられた便箋のあいだを
どこかためらいがちな
静かな足どりで

誰ひとり知り合いのないような
それでいて誰もに挨拶をしているような身ぶりで
暗示 ....
君と私が会うと
言葉を 眼差しを交わすと
りんどう色の深淵が しずかに生まれてゆく
言葉を 眼差しを交わすほどに
それはしずかに 深まってゆく

二人して覗き込む
そのなかば透きとおった ....
{引用=*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語 ....
練習船
黒い尖塔
木馬の何頭かを失ったまま
メリーゴーラウンドは廻転している

空はいつでも鋭角
時折少年が墜落してくる

旗竿の上で
燃え尽きる旗
その下でそれでも昏い宴はつづく ....
鋭角的な警鐘が
残像する
私の眺めのどこかに いつも

おそらくあの時から
導音を失った私の音階
私はそれを
探しているのか
いないのか
果たして探すことを許されているのか?

 ....
白くしずかな八月の
午さがりのあかるい部屋である
私はただソファに横たわっている
そして部屋の中空を
一個の檸檬が歩きまわっている
まるで散歩でもしているようだ
いつのまに出現したものやら ....
この夜に砂糖とミルク少々を入れて
掻き混ぜて飲み干すんだ
――君 何処へ行きたいか云ってくれ給え
ラズベリィの憂愁に
しなやかさの極みの鋭さを閃かせ
僕らを駆動する
僕らが駆動する
{ル ....
塔を隠した樹々たちがくりかえす
やわらかな墜落

螺鈿の微笑を浮かべる遊星たちが
結晶状に形成する空間に
浮かべられた白い柱廊に
並べられたフラスコ

時折それらのいくつかの中で
新 ....
春という季節は
いつでも液状にデフォルメされてゆく
匂い立つ色彩が
にじみ流れ溶けあい渦巻く
私の輪郭もそのただなかに
半ばは溶けかかりながら
けれど決して溶けきることはなく
冬をいとお ....
白くつめたい指が摘んだ菫の花束
破綻をつづけるイノセンス
誰にもわからない時を刻む時計
虹色に震えながら遊離してゆく旋律
救いの無いシナリオ
かすかに聴こえる古いオルゴール
のようなノスタ ....
君という雨に打たれて
私のあらゆる界面で
透明な細胞たちが
つぎつぎと覚醒してゆく

 夏の朝
 影に縁取られた街路
 やわらかな緑の丘
 乾いたプラットフォーム
 きらめきに溢れた ....
風は暗がりから吹く
私の影は滴りつづける

誰も居ない
かつて誰かが居たかもしれない
そのわずかな痕跡も
とうの昔に温度を失い

記憶を失い

頭上には黒い星座たち

ただ脳裏 ....
壁を自在に移動する窓
持ち歩き可能な窓

心臓に取り付けるための窓

蜃気楼だけが見える窓

窓硝子に詩を書くための窓
叩き壊しても何度でも再生する窓

脱け出すためだけの窓
忍 ....
僕の黒いノートの表紙に
ときどき
窓が出来ていることがある
その向こうで
君のかなしみが
淡い落下をいつまでもつづけている
(背景はいつも夏の
 {ルビ誰彼時=たそがれどき}か
 {ル ....
旅をつづけるほどに
私たちの旗は透明になり
時折見いだす標にしるされた言葉も
少なく 暗示的になっていった
夜の傾斜をくだってゆく
くだるたびに傾きがちがうような
いつもおなじような気がする

夜だから傾斜は暗い
ところどころに湿った火がともっている
そのそばにその火を嘗める獣が
いたり
い ....
浅い午睡に
思いがけず野蛮な夢をみる
それを誰かのせいにしてみたところで仕方ない
けれど

ああ
夏が甘く爛れる匂いがする
それは私の倦怠と
なまぬるく混ざりあってゆく

何もかも ....
また夏がめぐり来て
空も緑も色深まり
光と影が幻のようにあざやかに世界を象っています

夏の花々も色が強く
私には似合わないのです
降りそそぐ{ルビ眩=まばゆ}さと熱にも
ただただ圧倒さ ....
夏は容易く永遠を擬態するので

僕らの意識の最も敏感な部位は

いつでも眩暈に侵されたままだ
怠惰な月に{ルビ塗=まみ}れて
果実のような遊星たちと
悪戯に耽ろう
どうせ軌道からはとうの昔に逸れて
だから輪郭も幾重にもぶれてぶれてぶれて
いるから

薔薇星雲を千切ってばら撒いて
 ....
空は虹色に溶け
得体の知れない甘さが
いちめんに薫り立つ夏のゆうぐれだ
長い夏のゆうぐれだ
君の記憶が
水のように透明に
けれど水よりも濃い密度で滴ってきて
それは容易く
私の現在を侵 ....
自分と向かいあいすぎて
時折その界面をとおりぬけて
向こう側の自分と
いれかわってしまうのだ
白い春の夕暮れ
浅い眩暈が意識を通過する
柔らかな距離がゆるやかに傾き
西に沈む誰かの声 遠い声

傍らの抽斗の中で
淡い儀式の記憶が疼く
それはやはりある春の夕暮れの
古い棟のうらさ ....
なまぬるく
なまめかしい
春の夜風の底 へ
わたしは
指を溜める

纏わりつくのは
すこしはなれたところでざわめく
緑と水の匂い
だろうか

やがて下弦の月がのぼって
ちいさな ....
淡いピンクのチューリップがいけられた
硝子の花瓶のそばに
罅の入った銀色の金属製の心臓が
取り外されて置いてあった
彼はその代わりに
肋骨の中に脈動変光星をひとつ
納めようとしていた
昨 ....
この日頃
心に映ったいくつかの言葉たちが
モビールになって
中空に
揺れる

長椅子あたりに
たたずむのは
けれどもう溶けて消えかかっている
誰かの
不在の
かたち

陽射し ....
もし愛に辿り着けたら
まずその中の闇を探り当て
もぐり込んで
しばらくは眠ってしまおう
夜が来る
月があってもなくても
私は鳴く
誰にも聞こえない声で
私にも聞こえない声で

私という存在の途切れ目 に
夜ごと咲く花があるからだ
けれど私はその花に
触れることはおろか
 ....
千波 一也さんの塔野夏子さんおすすめリスト(56)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
実験室37−C- 塔野夏子自由詩16*08-2-11
あるいは- 塔野夏子自由詩8*08-1-25
暗示は歩いてゆく- 塔野夏子自由詩11*07-12-11
りんどう色の- 塔野夏子自由詩11*07-11-5
四行連詩_独吟_<仮>の巻- 塔野夏子自由詩5*07-10-21
Quest- 塔野夏子自由詩9*07-9-29
知らない黎明- 塔野夏子自由詩10*07-9-9
檸檬の歩行- 塔野夏子自由詩10+*07-8-1
DRIVE- 塔野夏子自由詩12*07-7-7
実験室65−F- 塔野夏子自由詩10*07-5-1
春の抽象- 塔野夏子自由詩10*07-4-1
処方箋- 塔野夏子自由詩12*07-3-11
約_束- 塔野夏子自由詩30*07-2-25
黒い星座- 塔野夏子自由詩10*07-1-13
窓のカタログ- 塔野夏子自由詩15*06-12-17
黒いノート- 塔野夏子自由詩21*06-11-19
世界の核_あるいは果てへ- 塔野夏子自由詩8*06-9-29
夜の傾斜- 塔野夏子自由詩14*06-9-3
懶_惰- 塔野夏子自由詩7*06-8-11
夏に還る- 塔野夏子自由詩14*06-8-5
- 塔野夏子自由詩14*06-7-15
天体乱遊- 塔野夏子自由詩10*06-6-27
夏の場所- 塔野夏子自由詩21*06-6-13
存在しない鏡- 塔野夏子自由詩12*06-6-3
遠い声- 塔野夏子自由詩15*06-5-7
余_黒- 塔野夏子自由詩13*06-4-19
春のオブジェ- 塔野夏子自由詩14*06-4-3
水栽培- 塔野夏子自由詩11*06-3-25
SLEEP- 塔野夏子自由詩9*06-3-11
途切れ目_に- 塔野夏子自由詩10*06-3-5

Home 次へ
1 2 
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する