藍色の正装は纏われず
あなたは花に囲まれて眠りました
花の緑と衣服の藍とが
白い骨に残りました
頭蓋の金具は一緒に埋めました
生きるものが
その奇妙な構図をどうしても露呈しながら
日 ....
ミカは小さな青虫を一匹飼っている
ママがスーパーで買ったキャベツに
それはついていた
ママにお願いして
捨てずに飼うことにした
きれいなアゲハ蝶の幼虫かも知れない と
ミカは思った
....
独立記念日の夜
祝いの祭
星明りの夜空に光の花が舞い散る
願いを集め 放ち
大輪の夢を咲かせる
けたたましい空の鼓動となって
瞬時に消え去る はかなさに
―― 祖国という明日をもとめ ....
見えるものは分解し
聞こえるものは融解し
感じるものは一体となる
世界はバラバラに崩壊する!
それは俺が張り裂けるのと同じこと
堪えがたきこの苦痛!!
忌わしいこの世!!
俺の核 ....
細い指を絡めて
愛を囁いた
湖畔に佇む
雨に濡れた木々には
震える小鳥が鳴いている
遠くまで流れていく雲
君は花畑の中で
太陽の匂いのするそよ風が
帽子を飛ばせば
愛が笑う
ク ....
誰かを好きになるってことは
いつか
その誰かを
嫌いになるっていうこと
誰かに好かれるってことは
その誰かに
いつか嫌われるっていうこと
わかっていたはずなのに
光を切り裂いたカーテンの色は青く
寝癖はやっかい、目が腫れぼったい
母親が漕ぐ自転車の後ろにしがみつく派手なズボンの幼稚園児が
男の子なのか女の子なのか判別できない
それを何気なく追い越してみ ....
カワイー
の
長音符をつまんで
口に運ぶ
ツルルン
の
艶っぽい弾力に
歯を立てる
ジュワン
の
甘酸っぱい歓声が
舌を震わす
オイシイ。
の
ふくよかな句点を
唇をすぼめて
吹き飛ばす
....
この暖かな光の歓びは
どこから来るのか
胸は甘やかな感覚に包まれ
御魂が天上の舞を踊る
美しき一面の花のなか
幼女が喜びのステップを踏む
私の探し求めていた
この憩いの ....
考える 考える
君のことを考える
君について考える
油断していた
....
こずえとこずえをむすんだ線で空を区切ってください
右側にあるのが悪い雲
左側にあるのが良い雲です
どちらにも雲がなかったら
そこが天国です
自然には矛盾がない
人の心が矛盾を作り出している
三回忌法要で坊さんが話された
訓話の言葉を噛み締める
語る言葉が圧倒的に足りない僕は
何を書き残そうとしているのだろうか
語る ....
苦しい
痛い
怖い
生きることが
世界は悪しき者達の為の住処
肉体の苦しみ
臓腑を灼く耐えがたい苦痛
精神の苦しみ
魂が傷つき損ない
悲鳴をあげる
「助けて」
助けを求め ....
しもた屋の二階の窓から眺める世間は
霧雨にすべてが濡れている。
少し前囁かれた
ちょっと起きておくれよ
という女の声に 後ろ髪引かれ
そのまま昼まで 居付いたが
この雨で世間に戻 ....
白紙の畑がひろがっている
一本道をゆく
と、ポツンと
巨大なショッピングセンターがある
集合住宅のコンクリート塊が墓標のように、山塊のように建っている
そんな
....
だだっ広い雨上がりの空に
僕にはない言葉がさ迷う
地上の、揺れの、草の、言葉
湿気、温度、雲の距離
僕の言葉は枯渇して
君の言葉を吸い上げる
地球、亀、象、
天文学的な、 ....
黒猫のクロが
私の知らない間に
死んでいた
母さんは猫が死ぬ度に泣くの
昔部屋にみんなを集めて
約束をしたことがあった
....
「1」 レンズ豆を詰めたズッキーニと天使の海老オレンジのサヴァイヨンソース
夕焼けた空に細かい雲は高くあり、
なびく風は、コンフィチュールのようではなく微かに甘い。
仄かに柑橘がかった色あい ....
それは忽然と現れた。
スパニッシュブルーの空を突き刺してそびえ建つ、
研ぎ澄まされた円錐形のオブジェ。
傾斜角75度の強い意志が天を貫いている。
指し示す先はどこまでも高く
その先端から曖昧 ....
いと愛しき我が恋人よ
瑞々しき性の若葉よ!
駆けぬける涼風の美よ!
夏の日の花園よ!
立ちて
窺いて
待つ
心落ち着かぬ幸福…
日ねもす
夜もすがら
私は君を待ち焦がれる
....
話せば判る
夫婦喧嘩した際、父が母に言い放ったような
パパとママ、どちらが好きなの
そんな母の発した答えようもない問いかけに弟と私
布団のなか、ひたすら息を潜めるばかりで
話せば ....
数人の人が
現れて退き
出会った白髪の老人
何か言い残して
消えたが
印象に残って
束の間の老人よ
また来ておくれ
自分だけがまちがっていることを
信じてはいても
わたしには疑念などなかった
ただ父は
大抵開けぐちが分からなかったので
最後にはいつも口をつかっていた
色のぬけ落ちた昇降口で
晴れた ....
昔々(むかしむか〜し)は無関心
徐々徐々にに親しくなって
今は友と呼べる奴
昔々いつも傍らに蹲(うずくま)り
たまには気になるときがあるが
それはいつでも憂鬱さとともに
昔々は青と ....
朝の訪れるたび
切り離されたからだを思う
昨日との交信が途絶えて
寄る辺ない
なまぬるい風に
輪郭を確かめる
季節がしみこんでくるのと
季節に染み出していくのが似ている ....
六月の風
どこかにする
子どもの遊び声
落ちてくる手にあまる垂直な陽射しは、
すべての影を限りなく縮小し 見放し
あるがままの姿を投影してくれない
公園の木陰に一人ぽつねん
ベンチの女が ....
彼女は彼を愛していたし、
彼もまた彼女を愛していた。
傍目から見れば完璧な二人だったけれど
どちらも鋭く光る牙を
その身に隠し持っていたから
二人の恋はいつも死闘になった。
顔を逢わせ ....
7日に蛭木の浜に下りていき
ヨガをする。
足の爪先から、踵まで、ゆくりと着地する。
干潮を合図に背中を反らせ、アーチを模る。
オヒルギとメヒルギが
音をひらいて絡み合い
嘆いて赤土を溶 ....
青
車は停まり
人は進む
車は停まって
足は歩いて
手はそよいで
目は泳いで
思考は羽根をつける
時計を読み流して
ショーウィンドーを見過ごして
雑踏の中で溺れかけ ....
泣く女
泣く女は階段の下で
セーターを編んでいる
赤い毛糸と緑の毛糸で
哀れな女
シンデレラは靴の片方をなくした
シンデレラは靴の片方を探している
シンデレラは義足の片足 ....
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