細川ふみえの
オッパイが
あんなに魅力的だった季節は
とっくの昔に
過ぎてしまって
土曜の深夜のテレビ東京は
すっかり色褪せてしまった
オッパイは
若いうちに
見せなさい
....
あんたには
ゴミにしか見えへんのやろが
ワシには
一つ一つ
思い出があんねん
それを捨てろっちゅうんか
そんな殺生なこと
よう言うわ
ワシには
もう思い出しかないねん
これがすべて ....
お部屋の外の漆黒に
銀のスプーン揃ってる
少女は絵本を抱きながら
ちっとも読まずに泣いている
今夜はきのうと違う宵
だけども少女の時計では
背丈の伸びに判をして
こころの伸びには封を ....
夜に浮かぶ幻想群
いつも夜の湾岸線を走る度に思うのだ
川崎と木更津を結ぶアクアラインも然りだが
陸上の建造物よりも海上の光のなかに浮かびあがった巨大建造物は
何故か深く心を打つ
....
へたくそに鳴く
鳥を朝にみつける
へたくそでも
ぎぎぎ ぎぎぎと
さけぶよ 寒風にむかって
首をすくめる
私もみたよ 同じ方向を
風の中に
風しかみつけられない
お前 ....
マットレスの上ででんぐり返しを繰り返している
僕の番はまだ来ないよ、手の甲を掻いている
四角い部屋櫛を通すように手で梳く
マンホールの凹みに水がまだ溜まっていた
三階からそれを覗いている女 ....
あなたは
とても綺麗に微笑みながら
水のような滑らかさで話をつなぐ
わたしは
そんなあなたに見惚れながら
あなたの綻びを探してしまう
あなたは
笑っていないほうの目でわたしの ....
別れ話
蜜のかおる若々しい花を燃やしている少年の手は
今からはじまる喪失の時から汚れはじめる
ありもしない空を鳥が飛ぶから
銃声はなるのだ
何故と問いかけてはいけないと
い ....
余った春巻を
翌日甘辛い出汁で
サッと煮て
溶き玉子でとじて
熱々ご飯にのせて
最後に
三つ葉かなんかを
散らせば
これが
世界が終わるんじゃないかと
思うぐらい
美味でさ
娘と一緒にドラッグストアーに行って
「好きなものをひとつだけ買ってあげるよ」
と言ったら
「ホチキスが欲しい」と言う
「ホチキスならうちに二つもあるでしょ。
塗り絵の本とか色マジックのセ ....
少女。
それは木漏れ日の中で
つぶやく独白、
少年。
それは崖の上に立って
口づさむ旋律、
細い指と指を
触角のように絡めあって
紡いでゆく生糸
まるくやわらかな
....
金魚 金魚
可愛い 金魚
ビー玉たくさんお城のように
ご褒美貰っておおはしゃぎ
金魚 金魚
可愛い 金魚
お手々もあんよもなくてね
お口つかって生きてるの
ほらね ほらね お上手お ....
121103
もし、この世に時間がなかったら光もないよねと
繰り返される明る過ぎる大画面の殺風景な現実
そろそろ方形のディスプレイにも飽きたね
もう造 ....
りんごをむいた
よっつに切った
ひとつは おとうさん
ひとつは おかあさん
ひとつは おとうと
ひとつは わたし
ペットのハムスターは
りんごの皮をむしゃむしゃ
だいじに
....
埋立地から旧市街地へと
続く大通りの歩道
差し込む光に
かつて名前はあった
気の弱い人たちが
背中だけの会話
背中だけの時間
の中でうずくまり、
息継ぎし、
そし ....
にゃんこ磨いて春の祝日
喪服はだけている月明かり
【すりおろした林檎】
ねこをかんぶくろにいれて ポンと蹴っていいような
汗と毒と 荒い呼吸の みすぼらしい私が すっかり蒸発しました
ぬけがらの私の みぞおちを
糖蜜が ....
ぼくはそれがあると生きているし
それがないとほとんど息をしない、つまり死んでいる
ぼくとはいったい誰でしょうか
それはね スカイブルーが支配してるおそらに浮いている、
ちいさくておならみたいな ....
きみを思うと
僕は張り裂けそうだ
聞いておくれよ
僕がどんなにきみを思っているか
きみを思うと
僕の前は膨らんで膨らんで
今にも爆発しそうなんだ
撫でておくれよ
40過ぎの
多くの人 ....
土の時から切り倒された木が
障子の枠になり
冷たさと暑さをさえぎる
みあげていた空は
どこにしまいこまれたのだろう
根もなく 葉もなく
マストのように 飛行機のように
航海が ....
キミはいつもいつも”どうしてかしら?”っていうよね
ウチの”どうしてかしら?”は、疑問文ではなくてよ
それがわかっていただけないのは、どうしてかしら、ねぇ?
いつか空が大笑いして
わたしを吸い取ってくれるといいね
しわくちゃになった空の歯の隙間に
挟まって
カクカクとゆれるわたしの両足
15時の道ばたには
もう子供もいないから
突 ....
霜焼けの妻の手から離婚届
耳をすますと
遠くで 風が吠えている
近くで 何かきしんでいる
屋根
つらら
わたくしの骨
あおい湖の底に
沈んでいる蝋のような少女に
今夜も会いに行く
半透明の
永遠の
生 ....
つぶされたくて蚊飛んでくる
赤いウミウシの模様であった
デパートの包装紙
それで母はちゃっちゃかと洋服の型紙を作る
かつて何かを包んだものの匂いがしていた
ヒトガタに切った人形が
夢のなかでトモダチになるように
....
プラスチックのじょうぎをカタカタいわせながら
後ろから走ってきたから
こうちゃんだとすぐにわかったけど
ふりむかないでそのまま歩いた
そしたらドーンと背中に勢いよくぶつかってきた
「どーん」 ....
北海道にいったら鈴蘭に会っておいでなさい
寒い寒い大地から葉をのばして
日なたにも日陰にも茎をのばし
鈴のように5、6こ
並んで総状の花をつけた
それは、風車のような晩春の香よ
北海道 ....
おまえ
仮面ライダーを名乗ってるけど
よく見たら目のとこ
メッシュになってるから
大体誰だかわかりそうじゃんか
えっ?
ライダーじゃない?
ヲイダーだ?
わらかしよんな
....
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