死んだふりばかりうまくなって
世渡り上手になれなくて
からっぽの冷蔵庫みたいな心をもって
誰も愛すことができない僕は
たまに必要とされることが
たまごを割る時みたいにうれしい
『{ルビ業=GO}』という言葉が日本語にあるという。
私がある民族紛争地域に派兵された際、最初に降り立ったベースキャンプでたまたま仲良くなった通信兵で日系二世のケンジに教わった。
「『業』 ....
わたしは眠る
何処に

毎夜訪れる生贄の儀式
わたしは焼かれて
再生させられているのかもしれない
夢を往復するために
いや
目覚めこそ幻覚
わたしは起きている感触 ....
朝早くから祖父が死んだ
葬式の準備に追われながら
仏壇の前に寝かされた
小さく硬く冷たくなった
祖父の姿が目に入る
子供の頃
遊び疲れて歩くのを嫌がったおれを
毎日のようにおぶっ ....
鏡の中に

鏡の中に、ともに映った
妻の姿と僕
にっこり微笑んで
買い物のため
二人で訪れた,スーパー

明日は。その後は
君と僕
きっと幸せだろうね
三十二年一緒だ
君には少 ....
 すごく。
 暑い。
 図書館にでも行こう。
 で、外に出た。
「あーはやくエアコン欲しいなあ」
 おれの家には。
 扇風機しかなかった。
 貧乏なので。
 まあ仕方がない。
  ....
稲光のする夜空
降り出した雨の中
いつものように娘を迎えに行く

遮断された自動車の中
音楽さえ流せば雷鳴はかき消されて
稲光もストロボに堕ちる
はずなのに一閃されるたびに心が騒つく
 ....
おれはくるしみたい
おれはおまえでくるしみたい
たとえば八月の朝
池をながめるベンチのよこで
たとえば熱い夜道
家までつづく短い坂のうえで
たとえばオクラを
並べた皿のマヨネーズの横で
 ....
転職したいと考える。
あまりにも、職場のにんげんどもが、くだらないから。
もういやだ。と思う。
だけど、もちろん、冷静にもなる。
サラリーマンなんて、だれでも、どこでも、似たようなものだ。 ....
日曜びだから
空をとべるような気になって
ベッドの上で
シーツを掴んでいる

ピアノは弾けないから
頭蓋のふちに立って
波立つ脳の海を
両手ですくっている

そろそろ
時間を積み ....
焦げついた喉の奥に最も暗い夜がある

野犬逹が吠える
それは肺のもっと奥の方

何処か雲で霞みがかる月

歌いだせば
全ては煙のように這いで

誰の耳に入ることもない
それは誰に ....
無頼ぶる俺の性根照らしてごらん白熱灯
どんなにまばゆく暴いてもなにひとつしゃべってやらない

何も変わらないはずの俺たちの裸眼が
夜毎違うものを見せるのだからもう視力など信じるに足らない

 ....
熱帯のスコールが街に降り注いでいる
落ち窪んだぼくに 傘を差してはいても溜まりゆく雨
視界は不慮への屈伏から 夜露を湛えて滲む
爪先から徐々に激しく積み上がる感傷の血潮が
僕に夢を見せるの ....
こいつらがロックなんて言葉口にしたらぼくは間違いなく殺意を覚える
と思った矢先
そいつらは画面の中で
オフホワイトをバックに
しけた顔して不快極まりない口調で「ロック」とはを語り出す

ソ ....
ミンミンと鳴くこともなく
たまたま出会ったセミは
コンクリートの駐車場に
ただ しがみついていた
生きているのか死んでいるのか
さわったら ジ っと鳴いた
逃げることもしないので
ひどく ....
 朝、目覚めると家中クモの巣だらけ、湯気が立っているものもあれば
冷気を発しているものもある。つまり、部屋の中は煙が立ち込めていて、
まともに息も吸えやしない。気が狂いそうだ。おまけに、クモの巣の ....
「このまま
 デブネタを続けられるということは
 結局のところ
 あたしに
 未来はないってことでしょう
 
 右を向いても
 左を見ても
 デブには生きづらい
 ことばかりじゃあり ....
忘れては夏の水底のぞきこみまばたく広さまばたく遠さ



無音から無音に至る無音には尽きた灯の色ただ打ち寄せる



激しくも涼しき雨を走り抜け糸ぬぎ捨てる ....
巨漢6キロ!
ファーミックスの毛玉が
あたしの横には
いつも
横たわっている

ウトウトから
目覚め クセになって
確認するしるしぐざで
カレも目を覚ます

ナァ
(なに?)
 ....
男は94ページを読み終えると、時計を目にした。

7時23分。

昨晩から雨が続いている。
グリーンの縁の窓から臨む景色は、霧がかっている。
溜め息をついてはみたものの、こんな休暇も悪くは ....
畳の上
四角い日時計うごいてる今は朱色の長四角

藺草くさい
桃とぶどうと線香とまわり灯篭お盆の浴衣

渦巻の
蚊取り線香の灰落ちて焦げ付いた跡ほじくって

8畳の
カーペッ ....
{引用=



きみに咲く色を今日も決められず温い水に絵具を流した


六時から弾けた部屋の真ん中でわたしもラジオも終わりを待ってる


利き手から最短距離で触ろうとしているきみ ....
あなたから這い出た僕は小さな僕を水面に見ている
ああ僕は碧いのだ
艶やかに湿る僕は赤い目をしている
景色を映すそれが涙のようだ
潤んだ世界のほかを僕は最期まで知ることはないだろう

今から飛び降りる世 ....
これからは 君の 世界に あわせる
例え 占いの 結果が 悪くったって

私は 更に 
   皿の うえに
   沙羅を 重ねてゆく

★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・° ....
64分音符にのせてジョイントをつくってるあなた、赤いマールボロの箱をさかさむけにして、フィルムは大切だから取っとくのよねと言っているあいだに、鏡にカッターで細ーいせんを引く彼女、彼女昔ながらの .... 何も思いうかべることのない
壁の中で
風をしたためている 気がする
恐らく そうなのだと

風の中でページをめくり
立ち止まり 彩りを
見つめているとき
草の色の 内側に

呼吸を ....
今日も山手線に乗られては、知らない人と肩を合わせて心を揺りうごかさている。窓の向こうは今日も暑くなりそうだった。鉄の線路の向こうには埼玉県のような、千葉県のような山々があって、薄い群青色の面をしていて .... 青春前期に
熱に浮かされたように訪ねた仏たち
結局今まで
その眼差しの中を
彷徨っていただけのようだ

時を経て向き合い
あれから様々なことがあったと
あの時何か得たような気がしたけれ ....

聞こえた 
え 
聞こえました?
天啓

夜ポートランドの丘の上
越えて走れスーパーカブ
時速二五マイル
パンパンパンと
マフラー破裂する
流星が
昇りながら脱線して
エ ....
悪かったのは俺のほうだ

毎週、同じ時間いつもの場所に

アナタは必ず来てくれたのに


アナタの気持ちも考えず

他のヒトと遊びに出かけたこともあった

アナタの想いも考えず
 ....
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