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失われた街が視界のなかを流れる。
忘れられた廃屋に寄り添う墓標の上で、
目覚めた透明な空が、
真昼の星座をたずさえて、
立ち上がる高踏な鳥瞰図に、赤い海辺をうち揚げる。
繰り返し、磨きあ ....
うたたねをして目覚めると
一瞬 {ルビ黄金色=こがねいろ}のかぶと虫が
木目の卓上を這っていった
数日前
夕食を共にした友と
かぶと虫の話をしていた
「 かぶと虫を探さなく ....
しゃわーで汗を洗い流していたら
いつのまに{ルビ踝=くるぶし}が{ルビ痒=かゆ}かった
ぽちんと赤いふくらみに
指先あてて、掻く爪先も
痒みの{ルビ芯=しん}には届かない
見 ....
数日前の夜
ホームページの日記で、
遠い空の下にいる友が恋人と別れ、
自らを罪人として、責めていた。
( 自らの死を越えて
( 生きる明日への道を見据えていた
( 彼女の瞳は光を宿し ....
空が白み始める
でも空は分厚いグレーの雲一面で覆われ
滝の様に激しい雨を降らせている
地面を叩きつける雨音
軒先から滴がぼとぼとと落ちる音
それに混ざって何処か ....
パンに トマト ぬるぜ
カタルーニャ式 だぜ これ
オリーブオイル かける よ
バージン エクストラ です よ
たまご も 焼いちゃう
べーこん イベリコ豚 だよ
....
夕立にぬれた雫で
木々が深く息をしている
夏
この道を歩いていたら
貴方の事を想っている
貴方に名を教えた花は
今年もまた咲いている
言葉を募らせた秋も
歩み寄 ....
きみと別れて
きみと別れて
街の風景はモノクロになった
一日も忘れることが出来なかった
男はそれでも涙は流せない
自分なんていないほうがいい
そう思った
....
自転車から転げ落ちた
右の頬の痣と 切れた唇
またそんなに酔っ払ってさ
殴りあう暇があったら
海を見な
切れた唇に
寄せる さざなみ
笑い声は
痛いこともあって
七色 ....
そうやって嗤ってくださゐな
そうやって叫んでくださゐな
私が此處から動かぬやうに
白ゐ光に捕らわれ
赤ゐ血を流せばよゐのでせう
でも殘念
私を切り裂ゐたとて
黒ゐ黏液が一粒零 ....
空を眺めてると
涙が出そう
って君は嘘をつく
ときどき
そういう意味のない嘘が
心地よくてしかたがない
今日も
暑い一日
蜩は
まだ鳴かない
相変わらず僕は間が悪く
グラウンド ....
夜になると風が出て
{ルビ毬栗=いがぐり}は落ちてゐた
次々と
加速されて
硬く冷たい実が
ぱらぱらといふよりは
すぽすぽと黒土にはまりこむやうに
降つてゐた
流 ....
今日の夕日は
今にも落ちそうな
線香花火のよう
ポッテリふくふく
ジラジラ燃えて
せみしぐれ
ピタリと止まる
どこかで指揮者が合図した
庭の緑がそっと揺れ
ああ暑さも少し楽に ....
放課後には、
音楽室から聴こえる
ソプラノが
一日の中で一番
しっくりはまる少女、何処か夕暮れに似た、
朝には
誰にも触れられていない、
まだチョークの匂いすらしない教室でひとり
....
ある雪の降る寒い夜
教会の前に小さな赤子が捨てられていた
あまりの寒さに弱っているのか
泣きもせずただ震えている
そこへふわりと死神の少年が舞い下りてきた
寒そうに震える赤子をじっと見つめて ....
なぜだろう
わたしは眠っている
世界はこんなに美しいのに
なぜだろう
わたしは怒っている
こころはとても暖かいのに
なぜだろう
わたしは歌っている
ひとり ....
ただ激しいだけの
夏の日差しにひからび
立ち尽くす老木が
通り雨に打たれて
季節の終わりの
重苦しい空に投げだす
涙をのせた
手のひら
(それはわたしじゃない、わたしじゃない)
....
長い間
{ルビ棚=たな}に放りこまれたままの
うす汚れたきりんのぬいぐるみ
{ルビ行方=ゆくえ}知らずの持ち主に
忘れられていようとも
ぬいぐるみのきりちゃんはいつも
放置され ....
優しい木漏れ日
静かな潮騒
あなたを包んだ
愛の世界
悲しい思い出
貧しい生活
あなたを信じた
愛の世界
苦しくて楽しくて可笑しくて
美しい美しい
愛の日々
愛の日々
....
ピアニストの繊細な指だ
白い鍵盤をすべってゆく
まるで水鳥の夢見る羽ばたきにも似た
あるいは
まだ見ぬ色彩を生み出す画家の
狂おしいまでにあざやかな指先
{ルビ天地=あめつち}を踊る風の曲 ....
一滴の私は
無数に砕けて
無数の私
の
意識
もう
瑣末なことは
見えない
見たくない
ことば
ことばにまぎれ
あなたが見ているのは
ことば
私ではない
無数の針を ....
タブノキとマテバシイの葉っぱはよく似てる
折るとパリパリちぎれるほうがタブノキ
ぐんにゃり往生際が悪いのがマテバシイ
ヤマモモとホルトノキの葉っぱもよく似てる
トンボの羽みたいに葉脈が細か ....
あ
味のしない
味のしないチューインガム
味のしない味のしないチューインガム
味のしない味のしない味のしないチューインガム
味のしない味のしない味のしない味のしないチューインガム
味の ....
五山の文字の
ゆえんなど知りません
それでも私は
わずかに香る炎が尽き
夜が少し涼しくなるのを
ただ待っているのです
まだきっとどこかで生きているだろう
あなたを見送っているのです
....
夜が深くなった頃
静かな優しすぎる時間
窓の外では月が おやすみを呟いて
それでも声は透明で音すら存在しない
昨日見た夢の断片も もう忘れてしまった
読みかけの本を開いて
いつか千切れ ....
高速道路を猛スピードで駆け抜ける
僕の残像
世界が回るのに意味なんか無かった
心に響け言葉
僕だけ君との感情壊してよ
何かんか眠いよ泣きたいよ
消える消 ....
私はスッと退きました
嬉しいような
恥ずかしいような
変な気持ちが身体中に広がりました
夢月も壁から唇を話すと
ゴハンを落としながら言いました
「紅香って
もしかして俺に惚 ....
幼い少女の顔は蒼白で呼吸も浅い
傍らには少女の父親と母親が涙を堪え
白い小さな手を握りしめていた
少女は朧げな目で天井を見上げていた
そこには黒髪、黒装束、黒い翼の少年が
宙に浮いて少女 ....
空虚な腹部で
命と鳴いている
今日は夏だ
われんばかりの空だ
あぁ、こぼれてゆく
大地の精霊を
宿す
からだは
青空のもとで響く
首すじに光る雫を
ハンカチーフにすっと吸わせる ....
きれいに消し去って欲しい
あなたの腕で
わたし自身では消せなかった
こころのなかに棲みついたもの
胸騒ぎのようなもの
きっと消せる あなたなら
その腕でわたしを抱き上げて
森の奥深く連れ ....
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