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電話が鳴る
漆黒の闇の中から
それは誰でもない
誰かからの沈黙の暗号
受話器の向う側へ
言葉の無い声を弄る
焦げ臭い私の指先
電話が鳴る
跪いた気怠さの上に
凶器に ....
ことばにならないこと
ことばにするから
やさしい
かたちをもたないもの
かたちにするから
たのしい
なんでもあるようで
なんにもないせかいと
なんにもないようで
なんでも ....
雨雲に覆われた街を
切り取る車窓を眺めれば
まるで僕らは
ネガの中を走っているよう
降り出しそうで
{ルビ堪=こら}えるあの空には
あとどれだけの
時間があるのだろう
始まれば ....
光と影の悪戯な満ち引きに操られるように
僕の足は急いだり止まったり
そして派手に曲がった{ルビ歪=いびつ}な足跡が
僕のたましい
美しい汚れと汚れた美しさの
どちらにも触れながら首を ....
窓際で
君の寝息を背中に聴きながら
どう仕様も無く渇いた空を
見つめていた
形にならない雲と
伏せ目がちな太陽と
遠く飛ぶ鳥がすっかりと
吸い込まれてしまうまで
いつか ....
そこはまるで
ひとつの街であり
ひとつの物語でした
私はもう誰も居ない
公園のブランコに
キーコキーコ
と揺れていて
さようならの練習ばかりを
しています
あなたには ....
いいとか
わるいとか
みんないろいろ
いうけどさ
きみとぼくは
ただの
はなれていられないだけの
かんけい
またいっしょに
はしゃいでうたおう
....
暖かな夕焼けを背負って
私は昨日を歩いている
土手の草陰に置き去りのボールと
空に絡まる電線
川の水は流れているようにも
流れていないようにも見える
背中を温める夕焼けが
実 ....
僕らはさみしい子供だから
間違いだらけの夜更けの中で
雨の音を聴いている
最近雨が好きになったのだと
君は言う
明日も雨が降ればいいねと
僕は言う
壊れたテレビを何度でも
....
鍵盤の音を確かめるように
ひとつずつボタンを外していく
育ちすぎた夕暮れが息苦しそうに
僕らの仕草に耳を傾けている
一秒がいつでも一秒ではないように
僕らもまた危ういバランスの中で奏 ....
はるのおなかが
ぷっくりふくらんでいるのは
ぼくがそのなかで
ぐうぐうねむっているから
だけど
はるのおなかは
とってもひろい
だからみんなで
ねむりにくる
たくさん ....
無数の花びらたちが帯のように
川の両端を縁取りながら流れている
私は冷たい雨にかじかんだ手のひらで
傘を握り橋の上からそれを見ていた
けれど川にも街にも花びらにも色は無い
ふと見れば ....
木の枝が重ならずに生きていくことを
描き言葉と伝え言葉が生まれる
それぞれの心の在処を
まるでひとり言でも呟くように静かに
少し楽しげに君は教えてくれる
大きな木の根元に寝転んで
....
かたこと かたこと
僕の心臓が
どれだけ綺麗に
リズムを刻んでも
かたこと かたこと
僕の時間が
いつでも綺麗に
並んでいる訳じゃない
空は鈍い曇りだし
降るはずの雨は降らな ....
くるぶしの水位で哀しみが満ちているので
じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ
とっても歩きづらい
どうせなら肩くらいまで浸かっちゃえたら
のんびり平泳ぎでいくのにな
君は鳥が好きですか
僕はどちらでもないです
桜が咲くと嬉しいですか
僕は土手で寝転びます
今日は何か音楽を聴きましたか
僕は鈴木茂を二回かけました
夕ご飯は美味しかったですか
....
みどりいろのタネから
ぼくはうまれた
うまれたときから
ぼくにはポケットがあって
そこにはぜんぶが
つまっていたけれど
たいようにこがされたり
あめにしみこまれたり
ほしに ....
うまれるまえに
だれだったかなんて
どうでもいいよ
うまれかわって
どうなるかなんて
しらなくてもいいよ
まっすぐまよわず
あるけなくても
きちんとじかんを
つみあげられ ....
いつの間にか夜が短くなった
それに合わせるように私はとても無口になった
いつもの裏通りには
見当違いな質問ばかりが飛び交い
静電気を帯びた優しさが充満している
声を紡ぐ旋律が見つから ....
御成門の交差点の向こうで
東京タワーは
暖かな孤独を灯している
硬い道の上を
ゆっくりと進みながら僕は
目の前に無いもののことばかりを
考えている
なかなか目覚められない
夢の ....
二月をはじめたばかりの空に私は宿る
人見知りの日差しはまだどこかぎこちない
手放した温もりを眺める視線と
手放された痛みを撫でる記憶
風は中途半端に冷たい
人気のない歩道橋の上の ....
沖の青が濃くなる辺りで
ポカリと浮かんだ独り言が
夜更けの時計を探している
月は夢と同位置で微笑みながら
人知れず密かな指切りを交わす
波のない水面に映る
過去と{ルビ瞬間=いま} ....
闇はなめらかなビロードの手触りで
斜めに笑う君の口元にも似ている
僕のストレートな熱が君を抉るなら
声はもうぬかるみの土深くに沈めよう
突然に吠え立てる夜更けの野犬
滑稽に鳴り響く改 ....
パンをちぎる
その手で私は
鶴をおる
鶴をおる
その手で私は
猫をなでる
猫をなでる
その手で私は
ページをめくる
ページをめくる
その手で私は
小銭をかぞえる
....
今夜の空に2つの月が浮かんでいる
どちらもまあるく太った月だ
その色もその形もまるでそっくりおんなじなのに
照らすあかりは全然違う
右の月は煌々と
くっきり僕ら ....
短く鳴く鳥たちが
午前八時の校庭で遊ぶ
焦げ茶の葉の大木も寝惚け気味の柳も
滑り台の隣でそれを眺めている
薄い墨を何度も引いたような空は
まるで暮れかけているようにも見えて
私はそ ....
ずいぶん遠くまで歩いて
きみのクツはまるで
最初と違うカタチのようにみえる
たくさん土の上を転がって
きみの服はすっかり
元の色を失ったようにみえる
何度も傘が破れて ....
まいにちは
ふしぎなくらい
いじわるで
かなしいことや
つらいこと
いっぱい
いっぱい
どこからか
せっせと
あつめて
くるけれど
....
涼しくも親密な風が肌に纏う
山手通りを僕は行く
この時点でどの地点
この視点でどの次元
知りたがらない疑問符たちが
流れては逝く目黒川を横目に
僕は歩く
季節に気づかない ....
橋は斜めに延びている
狭い歩道には影も落ちない
月も雲もいない
何人かの顔がよぎる
数秒の会話が流れる
いくつかの名前が着いて来る
どれもが此処にはいない
昨日に在る ....
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