すべてのおすすめ
ラジオをつけると
聞いたことのある曲が流れていて
愛とか希望とか自由とか
そういったことを叫んでいた
壁に掛けてある絵は
何の絵であるのか解らなかった
右下の隅に小さな文字で
ユリネ ....
右の瞼を落として閉じた世界を観る
正方形に区切られた場所で
時折触れる温かさに怯え
地球儀にバラバラの心を溶かした
過去
....
遠い宇宙の彼方から
地上に穏やかに落ちてくる夜なべ
静かに皆は眠りについて
昼の喧騒を冷ましている
艶やかな青紫の中で
輝く笑顔を自分の胸の中で探してみる
孤 ....
2年前
中年夫婦で営んでいた
ふっくら美味しいパン屋さん
大洪水で流された
跡地には
独り身の{ルビ若旦那=わかだんな}が一人で開いた
手打ちの美味しい{ルビ蕎麦=そば}屋 ....
替えたばかりの青青としたイグサの香り
一人を実感する
白いクロス
天井に薄黒い星の模様
今日から毎夜一つ星を眺めて眠る
星に願いを
明日も良い日でありますように
一人の夜は静 ....
落ち葉の季節
葉を踏みしめるさくさくと
乾いた音が心の中に響き渡る
高い空
空虚な気持ちが広がる
どんどん全てが遠くなる
心の中でただ乾いた音だけが響く
残るは虚しさのみ
広い広い真っ白な世界
何処までも広く広がっている
ぽつり一人取り残された私
何もない
何ひとつない
声を限りに叫んでも
誰の返事も帰ってこない
こだますら戻らない
ひと ....
さくらがみたいのと
おまえは呟く
けれども
おまえの為に
こんな時期に
桜は咲いてくれないのです
ようちえんにいきたいの
とおまえは呟く
しかし幼稚園は日曜日に ....
緑濃い{ルビ山陰=やまかげ}から
ひらりと紋白蝶がさまよひ出た
断崖の下は海の群青
湧き上がるすでに夏とはいへぬ
冷ややかな風を器用に避けつつ
蝶は陸に沿つて舞ひはじめる
波打ち際には
....
今日も仲良くけんかする
何の変哲もない
親父と母ちゃん
日々
腹を抱えて笑ったり
頭に{ルビ角=つの}を立ててしまったり
からかいあったり
愉快な職場の仲間達
両親や ....
遠ざかる二段ロケットの軌道
静寂に浮かぶ銀のカプセル
どちらが動いているのか、は
もはや問題ではない
ただ、離れてゆく
{引用=
(お腹空いたかい、ラナ
(大丈夫、ピザを持ってき ....
街灯に照らされると
夜道に私の影が伸びた
どこまで歩いても
影は私についてくる
( どんな時も、ひとりじゃないよ )
立ち止まる 私をみつめ
黙った姿で影は{ルビ云 ....
眠れない夜を
いくつも乗り越えてきた
思い出と傷を抱えて
何度も足元をすくわれなかがら
それでも乗り越えてきた
救われることなんか
ちゃんと願えないくせに
夜明けが来ることに
涙が ....
いくつかの橋が
思い出せないでいる
名前を覚えなかった川の
こちらとあちらを
思い出せないかたちで
きっといまもつないでいる
完全なものが美しいと
君は言うけれど
不完全なものは
....
高速道路の横で
光ネオンに包まれうたた寝している
行き交う車をかすりながら
ゆっくりと歩き出す
飛び立つ鶴の群
湖には立ち止まるほど遠くにじむ
髑髏のパ ....
酔っ払い
どこまでも寂しくなる夜
赤くほてった顔でふらふら歩き
電信柱に額をあてて寄りかかる
辿り着いた
バス停のベンチにへたりこみ
夢に見る
愛しき君 ....
しとどに雨が降る
大粒の雨が
ブリキ屋根に穴をうがつ勢ひで
降り募る
降つて 降つて
怨みを晴らさうと
降りまくる
中に侘び暮す人のうらみを
....
{ルビ石仏=せきぶつ}のこけむした肌が
しゃんわりと日に照らされて
青く反射している真昼すぎ
山山は遠く波打って青白くかすんでいる
地際にひとり
うっすらと真っすぐに立つからだ
ポシェット ....
このアパートに住み着いている猫の話では
世界はすでに終わってしまったらしい
猫は目を細めて悲しそうにしているが
世界がいつ始まったのかまでは教えてくれなかった
仕方がないさ、と猫は言う
....
なんで 君の大きな手が好きだったのか
なんで あんな夜中に二人で江ノ島で語り明かしたのか
なんで 仕事であんなに張り合ったのか
なんで 君の乗っていた車が好きだったのか
なんで ....
この海の向こう側には
何が待っているのだろう
波間から見える向こう側
あそこには何があるのだろう
この空の向こう側には
何が待っているのだろう
雲間から見える向こう側
あそこには何が ....
見渡せば、{ルビ紅=あか}のパノラマ
岩肌の背を辿り
風紋の営みに耳を澄ませば
褐色の陰影、陽炎の揺らぎ
彷徨えば、蒼のカルデラ
火照った靴を脱ぎ
静寂の層流に{ルビ踝=くるぶし}を垂 ....
来る日も来る日も
欲しいだけの陽は降り注ぎ
水の恵みも充分受けてはゐたが
代はり映えのしない日々に
嫌気がさして
葉叢のなかの一枚が
ある日 ひらりと裏返つた
―決して気紛れでは ....
Ⅰ
小さな日だまり きらきらと
光のカーテン揺れている
小さな日だまり ゆらゆらと
そこだけ光の輪ができた
誰にも内緒教えない
あれは妖精の輪なんだよ
妖精たちが踊っている ....
わたしのくびれを
無数の星砂がくぐりぬけ
今か今かと
あの人からの着信を待つ
動脈に溜まり過ぎた
星砂で
浮腫んだ下半身は辛いから
壁際でくるり
倒立でもしてみる
静脈を辿る星砂の勢 ....
桜の咲くころ とあなたは言う
今年の桜は一人
花の一部になりたかった
春の容赦ない風に吹かれて
花の中に愚かに
その醜悪な姿を晒す
散るたびに香る
夜の吐息のような
....
1 追憶の街
(そこを曲がると目的地だ。
(たくさんのヒヤシンスの花が僕たちを見ている。
(そう、あの青い塔のある丘まで競争だ。
(君の長い髪がそよかぜにのって
(春を歌っている ....
日を浴びて
自分に水をやるように
やがて枯れたら口を閉じ
はるまで言葉を休めるように
{引用=山里に出会ふ少女はひたすらに
坂下り行き{ルビ畠=はた}のトマト赤し}
D展に出す絵のモチーフを探して
山地を旅していた
山里の道を歩いていくと
籠一杯のトマト ....
私は
花びらが一枚足りないの
みんなは五枚なんだ
でもね
一
ずっと前、
私は小さな種でした
ほんとに小さくて、軽くて、やわらかかった
あの土と、この風が私を育て ....
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