学園都市線の高架下
灰色の橋脚に二羽の鳩が仲睦まじく
寄り添ってはキスをして
激しく身をよじってはまたキスをして
やがては重なり 羽ばたきながら
気の早い春が固い雪を緩め
茶色く水っぽ ....
歩くのはいつも なまの義足
寄木細工のじん帯をか細い骨で震わせながら
足裏に
肌合いのわるい
なじめなさを押しつけても
二つのものが 交互に役割を担うから
どこか
と呼ばれるcell(セ ....
十二月の夕暮れは突然やってきて
時間の無い坂道を上って行く
左手に灰色のニコライ堂が聳え
覆い被さりながら
聖橋の先には聖堂の黒い森
神田川もJRも跨ぐ聖橋
暗いトーンの夕暮れから
....
白魚にためらい傷がありました
スーツ着て会社に行かず凧あげる
君だけが友達でした藪椿
春淡し俺から会社辞めてやる
種芋になれずに腐り果てていく
ミシュランの調査員ぶり田螺 ....
ともだちのメールの カナリクタビレタが
カタクリ カンタービレに 読み間違えてしまうのは 三月のせい
この胸に 湖水が萌える
サーモンピンクと コーラルピンクのあいだに ひそむ
銀 ....
したい何かを数えていくほど
したい何かが見えなくなる
まるで
皮を剥ぐように
剥いで剥い ....
120229
ぐちゃぐちゃな画面をワイプするようにバスの轍が汚れた雪を掻き集めては押し広げて長靴の歩行者を呼び集めては轢き倒すスニー ....
チェーンステッチで
四つ葉のクローバーを
刺繍した
クリイム色のやわらかなフェルトに
ひとさし
ひとさし
鎖をつなぐ
祖母へ
眼鏡入れとして
プレゼントした
祖母は
....
真実の森を彷徨っていると公言しているが、その実 森の木が枯れているのか繁っているのか覚束無い足取りで、たくさんの人間に地図を提供している。
お前の地図は誰が書いたのか?己自身に問いか ....
二〇一二年の一雫が
左肩に落ちる
乾いた肩が ほら笑った
指で払った雫が
隣の肩にかかる
右肩の笑みが増す
隣の肩が羨ましげに
指をくわえる
余計でもない一雫が
転々と分 ....
太陽を食べながら
冬晴れの冷気を泳いで行く
空に笑いかけて
わたしは噴水のように歌っている
土地っ子のヒヨドリも
旅行者のツグミも
わたしとともに歌っている
白樺も我を失うほどだ
....
1
白く熱い道を
白いカッターシャツの高校生が
自転車でくる
7年ぶりに会った息子、きのうのこと
美しく花開いたのっぽのあの子
その道を今日も彷徨えば
また出逢った有り難さ
足 ....
白菜68円だったからさー
怒髪の女房に蹴り出されちゃって
憔悴とコンビニ弁当かこつ弟にも鍋いいじゃないと
思ったわけよ
一族のレプラみたいな私でも一応お姉ちゃんじゃん?
て呼ばれたこと一度も ....
忘れ去っていく言葉よりも
あなたのいのちの清さにふれて瞼が閉じる
いつまでも文字にならない
あなたの悲しげで透明な息づかい
反復するあなたの鼓動が
休もうとしている風を揺るがす
あ ....
かなしい夢をみて
目覚めた朝は
ああ、夢でよかったと思う
けれど
かなしいことが
なくなった訳ではなくて
心の引き出しを開けたら
別のかなしいことが
そこにある
引き出しをちゃん ....
静かな 待合室に響く
早口で話す声
隣りにいる付き添いの人は
慣れているのか
相づちさえ打たない
脈絡もなく
しゃべり続ける婦人
耳を塞ぐ
イライラを通り越して
不安 ....
降り続く白い冬
いまはただ
うつむいた雪が
降り積もってゆく
脊髄が 錆びついてくるのを感じる
骨が膠着し 何も言わなくなると
ますます冬は
冷たくよそよそしくなる
寒さが喉で固ま ....
僕の目指す
ドラミングは
どっしりとしたリズム
それでいて
軽やかに転がっている
隙間に ぴたっ とはまった
かと思えば
メロディーの上で踊っている
ビートを刻 ....
容疑者の写真がニュースに流れている
月が北東に隠れようとしている
あれは北西なのかも知れない
月が容疑者のように
どちらの方角にも気配を撒いている
三日月ぐらいの形を見つ ....
不思議
深く眠りながら
果てしなく醒めている心地
見えない舟が 横たわる僕を乗せて
透きとおる彼方へと 漂ってゆくよ
夜は青く
あえかな香りが僕を包む
この流れのほとりには 何処まで ....
佐藤ひろ美26歳が
電車の中でたまたま隣に居合わせた後藤洋造56歳の服装を見て
心の中でせせら笑っている時に
僕は死んだ
山田達久43歳が
家賃の振り込みを忘れて焦って
....
ひとりで生きられる
生きられない
それとも、ひとりで生きざるを得ない
わたしってどれなんだろうね
※
無責任ってわけじゃないけど
ちょうど
満員電車のなかで誰かに寄り ....
君の素肌に触れた日は
忘れもしない 夕暮れの
君が十九の秋でした。
僕の心は君だけを
思ひ焦がれて
千々(ちぢ)となり
集めて鈍く燃えたのです。
誰にも言はず
誰にも知れず
....
過ぎ去ろうとしている
冬のしっぽが
白く きらめきながら
川面を流れていく午後
でも
私は
それをつかまえられない
パレットに出された錆びた金色を
時間の筆が
グラデーションを付 ....
*銀色夏生の「下心」のアンサー・ポエム
確信をもって行動したら
「そういうのは、ちょっと」と否定された
恋をしていたけど愛はなかった
貴方にも
後になって気づいたのだけど
否定されても ....
バックスペースで
だいじな文字から
消していく
逢いたいな
逢いたい
逢いた
逢い
逢
あ
跡形もなく
この世を去った
文字や
私のため息が
抜け殻の ....
やがて再び北風の中
道端のネコヤナギの蕾のように
やさしい春の指先が頬を撫でようと
いつか一つの曲がり角の先
私を包み、光へ導くような
誰もが期待する運命が待っていようと
もうこれ以上一つ ....
君がリリアン編んで
見上げた空は花と同じ色で
ぜんぶ、ぜんぶ春だった
ゆびさきで、光源をたどる
なくしたもののかたちは
思い出せないけれど
なくしたものから芽ぶいたのは
街でいちばん ....
樹木
山桃の実のぶつぶつの舌触り
葛のつる川土手の樹を緊縛す
炎天や犬の尿に樹木立つ
昼の樹の葉叢の奥の星の夜
窓を叩き梢が夜を連れてきた
....
38度の熱が出て、楽しみだった
僕の出版記念朗読会が、中止になった。
数々の再会の場面が夢になり・・・
僕は今、ふとんに足を入れて
ランプの灯を頼りに、この詩を綴っている ....
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