高原に吹く風が
レーザービームみたいに
追憶に照射され
旅の終わりに描きかけた
一枚が完成する
白樺は動物の皮革のようだ
誰かの故郷が傷ついている
歌手が風邪をひけないのと
おなじく ....
朝露が縁どる窓
うるおう昨晩の夢
きっかけは眠ったこと
あなたの肌に近づけたこと
白桃の海、
ゼリーの河
いっそ沈んでしまおう
べたべたに絡むくせっ毛
あなたの肩に擦り寄せて
....
去年
義母が急逝した
晩年
持病で苦しんでいて
会えば
病気の苦しさばかりで
死にたいけど死ねないのよね、と言われると
そんなこと言わないでと
答えながら
鬱屈した気持ちになった ....
透明な雨が子午線の上に降って
俺は乾いた水を飲んだ
"当地"は雨が降っていた
全ては光り輝いていた
テレビはテレビ的対象を追い・・・
ネットはネット的 ....
あなたは
僕の影を見つけてくれた
重なる痛みは
愛おしくて
切なくて
優しくて
この気持ちも
明日には
はぐれてしまうん ....
流れていく方向を見失って
濁り始めた水と空気
「仕方がない」のお題目の下で
済し崩しにされる許容限度
時間をかけて築き上げた壁を
やすやすとすり抜けて
目の前に現れる他人
....
年の終わりの最後の日
赤褐色の大地に立ち
遠く約束された地に行くことを阻む
北の山の連峰をのぞむ
彼の地の地平線を目指していたはずだが
あまりにも遠方にあることに気づき
今立ち竦んでい ....
年が改まり 今日から新年なんだ
モソモソと布団から這いずり出して 袢纏を引っ掛け
いつものように 新聞をポストに取りに行ったら
電話帳みたいな ぶっとい紙が捻じ込まれていた
こんなもん、 ....
窓硝子から流れ込む 午後の陽光に
植木鉢の スパティフィラムが
静かに 溺れていく
凍えた足首を燃やす 電気ストーブ
郵便ポストに忘れられた 年賀状
西向きの食器棚から 背伸びして外を見 ....
一年の仕事を終えて
家に帰った年の瀬の夜
テレビで久しぶりに
「ガソリン値下げ」のニュースを見て
はじめて(嬉しい)と思う自分に少し驚く
僕の顔に似た赤ちゃんを
今夜も ....
紫色に染まった指では帰れない
道草をした通学道路 道沿いにある桑の実
よその家の前にある 小さな紫の甘い実
小学一年の私達は つぶつぶをぱくりと楽しんで
親にばれないように 反対側にある川 ....
あけましておめでとうございます。 たま
オロチ
箸は一本でいいと言う。
ふたりの子は箸を一本ずつ持った。
狐の権太はうどん屋に化けて
村の二本松の辻に店を出してい ....
空から降ってくるものたちは
悲しみをたずさえてそっとやってくる
それはアリューシャン列島の凍った針葉樹を融かし
地に降り立つとそれぞれに色を変えて南下してくるのだ
柱時計をぼんと鳴らし ....
あなたは親戚やお母さんといると
やわらかい顔になる
とろんとした夢見がちな笑顔になる
オレの出る幕などなくなるくらい
でもたぶんそれは
オレが親戚やお母さんに溶け込んでい ....
何もない所に
一つのドアと
見知らぬ場所へ昇ってゆく
階段があった
昔見た夢で
ドアの向こうの階段に
どう抗っても行けない所で
ぱっと目が覚めたが
僕はこれまでの生の歩みで ....
職場で調子が出なかった日
凹んだまま布団に包まり、さっさと寝た。
目が覚めて、妻が見ていた
朝のニュースは
{ルビ白鳥=スワン}の舞を
世を去った母に捧げる浅田真央
場内 ....
【配】
遊園地デート中でもうわの空 別れた人の心配ばかり
【万】
5万円貸した相手が雲隠れ捜索費用5万を越えた
【溝】
どうやって埋まらない溝埋めようか試行錯誤で終わる人生
【 ....
色派にへとへと尻垂れお婆
老年病み易く岳父逝き難し
中年売り難く整理され易し
死んだならリバティー
オバサンいいツラの皮
オジサン千金のみ値
友あり遠方より「来る選挙は公明 ....
めちゃくちゃ元気でびっくりした
オレンジぴかぴかお母さん
やさしい木みたいに笑ってくれた
オレンジぴかぴかお母さん
きれいな顔したおっさんみたいや
きょうあたしな
....
森が本だと想像してみる、
一頁一頁が緑の葉っぱで出来ていると。
陽の差し込む部屋でそれを開いている
まるで十四歳の気分で
カサカサした木の皮の表紙をめくると
光の透ける葉脈から文字が浮か ....
師走、大手町に佇む
結論を先に述べれば
大手町は冬が似合う
春は似合わない背広を着た集団がおしゃべりをしながら行き来し
秋には忙しそうに眉間に皺を寄せた人々たちが行き交う
夏はいけない
....
111230
誰でもすぐ書けますと
エッセイ教室のお誘い電話が鳴り響く時に
夾竹桃の花弁がほろりと落ちて
足下に赤い輪郭を記す
ほろりと落ちる度 ....
仮面ライダーになりたかった
あのときぼくはまだ
仮面ライダーじゃなかったから
そのことばかり考えていた
三日月は満月になりたかった
ひとはみなしあわせになりたかった
....
もう光のないオヤジにも多少の楽しみはある
甘い哀しみを楽しむのですね
センチメントなオヤジはかなり気持ち悪いが
そっとしてあげてほしいのだなあ
イケメンはずるい
福山 ....
紫の細い糸を
辛抱強く手繰っていったら
あなたに
たどり着けるのでしょうか
このたくさんの
結び目は何?
慎重に解かないと
このまま切れてしまうかもしれない
イヤな ....
砕かれたうす赤い冬薔薇が
華奢な少年の頸すじに散る
銀色の沈黙を張りつめる空に
黒く慄える梢が罅を入れてゆく
たとえば
主審の吹くホイッスル
スタジアムは
興奮のるつぼ
たとえば
ラジオの玉音放送は
長い長い
嘘の終わりだ
春が来て
木々の小枝に
新たな希望 ....
貴女の舌をください
と頼んだ
清々しい朝の匂いのする舌だった
僕は衣類を脱ぎ捨て
土中のもぐらになって暮らしはじめた
い 一笑一若(いっしょう いちじゅく)
一味(ひとあじ)ちがうよ 来年年女
ろ ロバのバン よべどさけべど のろまなバン屋
は 馬簾菊 バテレン来襲のごと 過ぎし夏
に 仁王 ....
世界の果てには物語が待っていると思っていた
幼い誤解そのままに生きてきた
物語は僕自身だと知らずに
沢山の街を通ってきたし
最後の列車にものった
季節が変わるのを ....
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