両親の法事にも出ず/確定申告
何ができる/何もできない
電車は相変わらず/余震の陰に沈んでいる。
空は青空/心は鈍色
地震は嫌いだ/自信家はもっと嫌いだ
安全が第1/完全が第1
落ち着かな ....
かり かりらん からん
鉦の響きが行列を先導する
満ちていく途中の
なまめいて誇らしげな月の下
馬の背には選ばれた幼子
金襴にくるまれて
視線を集める戸惑いを隠せず ....
111010
花電車がやってくる日に
チョー簡潔な祝いのお品
チョコレートのパイを焼く
暖かいうちに運ぶんだ
横断歩道の先にある
プラットフォームには人 ....
満月のせいで
胸元に口づけしたい
それから背中に手をまわして
背筋をなぞりたい
たくさん言いたい
たくさん抱きしめられたい
その数年分の星の数だけ
だいだい色の満月
あたたかさ ....
1997年東京都港区
写真の題名はただそれだけだった
あの頃東京に住んでいた
写真に切り取られた街
あの頃の自分の
横顔や肩を幻視していた
清純だったけれど
....
おやすみ、あなたの黒髪にまだ青い葉をからませ
おやすみ、蔦は赤く、赤く血の色のよう
あなたの血のように赤く 私の血のように赤い
蔦を体に這わせ 木の葉の雨の降りしきるなか
そっと夢みる ....
酸素のない入り江
海水で満たされた視界
手足のついたサカナは駆け上がる
また呼吸をする為に
また"にんげん"に為るために
『無駄な事を』と嗤うあいつに向かって ....
あいたい
ゆきあいの空に
あさひのまえに 家を出た
やけに 赤い 朝日だった
ゆきあいの空は
季節が ゆきあう空だという
北に向けて クルマをはしらせれば そのうち ....
君がつくってくれた朝食の
おかゆを食べ終え
茶碗の運ばれた、広い食卓に
何とはなしに手を置けば
木目に残る余熱は
一つのぬくもりのように
指から皮膚へ
皮膚から体内へ ....
ある画家の内面を映し出した
目の前のキャンバスには
ふたりの男が描かれ
荷車を曳く者と
荷車に乗る者と
ふたり共、哀しく頬がこけている
その画家は
「生」という題を ....
外は悲雨だから
いいんだよ、いいんだよ
ぼろぼろ泣いて、いいんだよ
話しかけないでください
静かに
ハサミの音を聞いていたいのです
質問しないでください
今は
答えたくないのです
話しかけないでください
ただ
髪を切りに来ただけ ....
いつもの時間の
いつものバスに乗って
いつもの席の
いつもの窓に
いつもの体制で 頬杖付けば
いつもの眩しい日差しが入ってくる
いつものように 目を細め
いつもの 陽の当たらない反対 ....
きのうあなたの夢を見たんだ
あなたはぼくに冷たかった
ぼくは遠い心でそれを憎んだ
秋の虫が星のように鳴いている
小さな命に割り込んでゆく術を
きょうも眠りにつくまえ見 ....
雨が静かに降っている。
この悲しみを流せるか
悲しみすべて流せるか
雨がしとしと降っている。
この嘆きを流せるか
嘆きをすべて流せるか
雨がひたひた降っている
この苦しみを流せる ....
室内楽
感銘という
陳腐な言葉で飾り立てられた
フリルとボウのブラウス姿の種馬が行く
題字ばかり大きい
ささやかな詩集を片手に
トム・ジョード役ばりの
理知的気品を醸し出す歩幅を以 ....
旅ってなんだろう
帰るところあっての旅なんだろうけど
住んだこと無いはずなのに
慣れ親しんだ気がしてならない場所へと帰ってゆく
そんな旅路もあるような気がする
※
....
古い摩天楼の傾斜した屋根から
飛び降りようとした時
屋根の上に
傷ついて飛べなくなった
白い鳥を見つけた
微風のように柔らかい羽毛が
ところどころ血に染まっている
しだいに弱ってゆく ....
秋のひとひら
白紙の日記に舞い落ちる
滲みた文字が
やけに霞んで飛ばされそう
移ろいゆく季節にあって
留めておきたい
ひとつの場所
君は覚えているだろうか
僕が挟んだ栞の
あの日
秋がやってきて ....
希望の楡の大樹の根元
絶望の日溜まりの中で
君は何を想い
溜息を吐いているのだ
柔らかな秋の陽射しの中
ゴツゴツとした大樹の根元にしゃがみ込み
君は何を想い
溜息を吐いているのだ
....
路駐した車に戻りながらひとを探していた
心当たりは遠くで
そう
ほのぼのと淡くずっと一緒に
ずっと一緒にいたかった
秋であるのに春の夜のようだ
ほのぼのとした淡 ....
とある学校のとある教室に美少女転校生がやってくる。
ただ転校生がやってくるというだけでも一大事なのに、しかもその転校生が美少女とあって、クラスは転校生の話題で持ちきり。
とくに思春期の男子生徒 ....
冷たい雨粒が
傘をノックする
居留守をつかう僕を
執拗にノックし続ける
開けてはいけない
部屋を覗かせてはいけない
開けたら最後
あいつはズカズカと
上がり込んできて
胸 ....
骨ばった指が刻むリズムに
新しい何かが湧き上がる
一つずつ組み立てられた細胞
その隅々に貴方が浸透していく
疲れた顔も
満足げな顔も
近くで見ていた
どんなことが起こった ....
生まれながらにリスクを負った
大江健三郎の息子・光君は
日々お婆ちゃんの看病をする
お母さんの誕生カードに
(つらいかた)と書いた
(つらいかた)とは何だろう?
老いたお婆 ....
{画像=111007205854.jpg}
青
画用紙に青いインクを零したら
晴れやかな空になった
青いフェルトに涙を零したら
透明の染みになった
道端の石ころにも成れな ....
みんな偉大だしカスなんだ
みんなありがとうだしうっとうしいんだ
みんな立派だし取るに足らないんだ
母は偉大だとか
子供に対して生まれてきてくれてありがとうだとか
そん ....
ヨーイ ドン
校長先生のピストルで
みんな死んでしまった
スタートしたのはぼくだけ
急にグラウンドが広くなったみたい
走っても走っても
ゴールのテープが見えない
しかたがないので
....
世界一のスナッチャーは
二三〇kgのバーベルを挙げた
もう眼球は飛び出す寸前で
ようやく視神経の束に支えられている感じ
体じゅうの筋肉は石より硬直して
針でも刺せば破裂しそうな感じ
ベルト ....
生きていれば、時折
苦い薬を飲むような一日がある
目の前を覆う{ルビ靄=もや}のような
掴みどころの無い敵が
心の鏡に映っている
靄の向こうのまっさらな
日々の舞台は、 ....
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