午後の川辺で
そらの珊瑚

過ぎ去ろうとしている
冬のしっぽが
白く きらめきながら
川面を流れていく午後
でも
私は
それをつかまえられない

パレットに出された錆びた金色を
時間の筆が
グラデーションを付けて
何もかもを
枯れ色に塗り始める

川の中央は
こんもりとススキが茂り
初老の紳士のような
水分を無くした銀髪を
ふわりと
その先で揺らし
若い雀を遊ばせている
ふと
「ヴェニスに死す」の
ラストシーンが浮かぶ
今この時も
私のヴェニスは海に沈み続けている

ほうら おいでよ
つかまえてごらん

ここは
世にも美しい
名も知らぬ午後の川辺
廃墟になる前に
男が
私に見せてくれたのだろうか



自由詩 午後の川辺で Copyright そらの珊瑚 2012-02-27 08:21:52
notebook Home 戻る