僕の死の時
yamadahifumi
佐藤ひろ美26歳が
電車の中でたまたま隣に居合わせた後藤洋造56歳の服装を見て
心の中でせせら笑っている時に
僕は死んだ
山田達久43歳が
家賃の振り込みを忘れて焦って
管理会社に電話をかけている時に
僕は死んだ
加藤久雄三十六歳が
自分のミスを隠すために代わりに自分の部下の
中田正治二十一歳の小さなミスを拡大して怒鳴っている時に
僕は死んだ
吉田時子三十五歳が
メイクのノリが悪くなってきたと
自分の老いを実感し始めた時に
僕は死んだ
カルト団が都内でガスを散布して回って
二人ほどが先んじて呼吸困難に陥っている時に
僕は死んだ
右翼がプラカードを掲げて
愛国の必要と政治家の醜さについて語っている時
僕は死んだ
死刑囚達が指折り
自分の死までの日数を勘定している時
僕は死んだ
吉本康隆三十九歳が
自分の部下の女と寝たいと思って
バー「サトー」で熱心に口説いている時
僕は死んだ
安元金子二十九歳が
早く処女を失わないとマズイと
SNSサイトを漁っている時
僕は死んだ
高橋竜二二十九歳が
人を殺した後焦って
証拠品を残したまま窓から逃げ出した時
僕は死んだ
そういう時に
僕は死んだ