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120222
すべての動物は静物園からやって来たのだと二人の男が決めつけた
男は一人いれば充分なのだから
一人は男のふりした紛い物であ ....
何をためらっているの
細胞が覚えているでしょう
心が脈打つ度に感じないの
いのちを抱きたいのでしょう
肌が泣くほどに抱き合えばいいよ
後付けの科学は興味深いけれど
あなたはあなたをもっと
....
全身麻酔の胸がメスで開かれ
肋間がスペーサーで広げられる
心臓に手が差し入れられる
教授クラスの執刀の下に
横たわるのは天皇であれ
一人の小さな老人の体だ
陛下も年を取った
平成になって ....
あなたの闘い続けた十三年に深い敬意を覚えます
妻と愛児を殺されるという
私には計り知れないほどの
かなしみと
ぜつぼうと
うらみと
にくしみの中で
司法という巨大な組織とも闘い続け
....
世界が美しい花のように開く時
人々は皆沈黙している
言葉がそれを讃え 音楽がそれを表す時
人の耳と目は沈黙している
君は
空が降ってきたかのように
目と耳を塞ぎ ....
超音速で舞い降りたガルーダの
尻尾の先にくっついたまま
世間を見てきた烏天狗の出来損ない
それが自分の姿で
嘴はもちろん黄色かった
そのまま部屋の中に入る
無音
嘴と眼をカッと見開く ....
うつくしい人の手はうつくしい形をしていて
やさしい人の声はやさしい響きで伝わって
かなしい人の瞳はかなしい色を浮かべ
さみしい人の吐息はさみしいあたたかさでした
冬の貧弱な太陽光だって ....
食パンのみみが
初めて出会う言葉は
まだ星空が出ている時間から
働き始めるパン屋のおじさんの
「上出来だ」の嬉しい言葉だろう
スライスされる前は
全身が みみなので
工房の全ての音が ....
昭和5年の夏、関西のとある町にて
縁側に横たわり昼寝する
少年が目覚めた頃、母親は
まっ赤に濡れた{ルビ西瓜=すいか}を
お盆に乗せて、持ってきた
庭に立つ一輪の{ルビ向日葵= ....
心の中に 好きな人がたくさんいるというのは
とても幸せなことだと思うのです
誰かを好きだと思うと
ぽっ ぽっ と
花が咲く
誰かを愛しいと思うと
ぽっ ぽっ と
明りが灯る
....
赤い糸切れて結んで春隣
鬼やらいリップクリーム貸したげる
早春や秘めた想いをチョコに載せ
まぶた閉じ2月の睫毛恋してる
菜の花忌司馬遼読んだことがない
春遠し十円ハ ....
顔見知りの男が死んだ
いつも何かにイラついていて
斜に構える自らの姿に酔いしれていた
そんな一人の男が死んだ
※
よくある話しだけど
おんなが二人いた
別れた奥さ ....
120218
博物館に向かう途中
遠くに動物園が見えると聞き
そのつもりで左方向を眺めたが
生憎、整備工事が行われていて
遠目が利かない
そ ....
自分の人生を愛おしんで
ここまでつき合ってくれた
セーターの青ミックスの色を
両の腕に抱きしめる
コープのお店に並んでいた
赤ミックスも緑ミックスも
好きだったな
モールのセーター
....
時計のない国で
のんびりと暮らしています
時計はなくとも
時間はあるわけで
朝、昼、夜と
まこと
大雑把な時間の感覚ではありますけれど
いちまばたきが
およそ一秒
....
物言わぬ駝鳥の目
遙か目の先には地平線がある筈なのだが、
駝鳥は相変わらず地面を見つめせつせと虫を啄む。
せつせせつせと虫を啄む
危険を感じたとき駝鳥は首を長くして遙か遠方を睨む。 ....
オーケストラの調律の基本となるのは
オーボエの出す440HzのAの音程
オーボエは音程の不安定な楽器であるのに
ただ音程が聴き取りやすいために
その任を担わされる
しかしコンサートマ ....
{引用=テーマ/SF(サージカル・フィクション)}
こないだのGO
雪国まいたけのGO(*)は
思慮を醸した声音が好ましかった
がついこの間出ていたGOは
顔面が何か不自然で
目元が ....
こんな朝に
カラスのカの字もありゃしない
太陽はふやけた面の木偶の坊だ
白い国道の上
黒いおまえは完全に死んでいる
暗がりのおまえは
いつも何かを舐めていた
おまえが前を横切る時には ....
私は霊だ 唐突だが気づく
年を重ねて老いてなるわけでもなく
生まれつき 霊だ
霊と肉体の合体で
動かしているのは心
じゃあ 私って誰?
肉体を授かり 名前を授かった
その負う この世 ....
生きるのは痛い
北風の切っ先
酷暑のサンドペーパー
でもこたえるのはむしろ 肉体よりも 心
人々は 視線の剣を結びあいながら
肩を怒らせて 通りを行き交う
道端の植え込み 鳥たちは 素 ....
歩くのに疲れて
たどりついたところに
バスの停留場があった
時刻表に記された時間は
呆れるほどのまばらさだった
古めかしく
ところどころ錆びに侵食されて
そもそもちゃんと
機能して ....
呆然として
60年が過ぎた
そのあとの
60年
赤ん坊は生まれず
人口が減少しても
私はいない
唯
冬の部屋は
寒い
小さな湯のみに
あふれるほど
膨れた
中国茶を
啜 ....
瑠璃色のオトマトペしりませんか
むかし たいせつなひとが くちうつしでくれた
飴玉のような オトマトペでした
今朝
あの甘さを
思い出しました
怖い夢をみて
めがさめて
そして ....
明日は 今日よりも軽やかに
と我々は{ルビ希=のぞ}んで
今日は 昨日よりは{ルビ厳=おごそ}かに
と我々は慎む
平穏になればなるほど
勝手にもがいて 考えこんで 苦しが ....
頭痛
倦怠が成層圏から降ってきた
うっすらと頭痛呑み込むパスタかな
氷床の軋む音する頭痛かな
頭痛飛び地球を巡り海に墜つ
雨
生まれ ....
ある夜の夢の中で
誰かの拳が
木のドアをノックする
乾いた音が部屋に響く
テーブルの向かいに座った
瞳の澄んだその人は
(私はいつも共にいる・・・)
と言ってすぅっと、 ....
雪景色
木にはつぼみの
綿帽子
取るに足らない枯木に
カシミア混の古いコートを着せて
目抜き通りのほとりで
タクシーを拾おうとしていた
通り過ぎていくのは
回送の名札を得意気につけた
ハイブリッドな北風ばかり
....
人さし指を 探しています
誰かを指さして
不幸を笑う人さし指ではなくて
指と指の先を
そっと合わせれば
心のバッテリーが静かに充電されていくような
そんな
人さし指を探しています
....
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