余 熱
そこは
しろい花が咲いていて
緑も若やいで うつくしい
空気は
いつまでも清澄であり
....
そのむこうには
休日がある
わたしたちのための
いったい何を休めばいいのだ
と男が言い
いったい何から開放されるの
と女が言う
お墓の土から生まれた蝉の幼虫が
羽化するの ....
部屋のしくみ
部屋の壁に
エレベーターがある
時々音をたてて
上がったり下がったりしてる
今日は僕の階で
ドアが開いた
まだ誰も乗ってなかった
....
今度またこういうことがあったら
言ったほうがいいのかな?
言わないほうがいいのかな?
と訊いたとき
君はとても嫌な表情を浮かべて
だけど即座にはっきりと
全部言って 必ず全部言って
....
いろいろ書こうと思うのだけれど
どうにもうまく繋がらなくて
言葉は千切れた
そこにはもしかしたら
小さな小さな
だんまりの世界なぞがあって
そこではもしかしたら
だーれもしゃべらない ....
陽炎、それは
記憶のゆがみ
デジャブのような交差点で
わたしが出逢った八月は
語る青い風になり
あなたを連れてきた
視界の輪郭線が溶け、崩れ落ちて
なみだのフィルター越しに
見 ....
アナタハ ダレデスカ
身寄りも帰る場所もなく来る日も河川敷を掘じくる佐久間少年ですか
地球の汚染大気に蝕まれ余命いくばくもないメイツ星人ですか
ふたりきり
河川敷の工場跡で
下水道に住む ....
夢を見ていました
それは鉄道の歌
乗客のざわめき
僕はひとりで
渦巻く雑音の中心で
サンドイッチを食べたのです
夢から覚めると
家のベット
約束の時 ....
080731
なんか単純なのだと
咲いたばかりの花が
赤色の理由を述べる
単純な色なのだと
信じる者は救われるが
足を掬われて
転ぶことも ....
笑顔
寝顔
泣き顔
怒り顔
ふくれっつら
むくれっつら
ションボリ顔‥
てきとうに並べたけど
みんなみんな私の顔
ぜんぶぜんぶ君の顔
いまのところ
おたがいに ....
ピンクのはあと
ピカピカはあと
ドキドキはあと
いろんなはあと。
あおいはあと
きいろいはあと
きみどりはあと
むらさきはあと
とっても すてき
でも
あい ....
080731
7月
おそらくそれは
無理でしょう
声にして言ってみる
ひとりごとのような声が漂って
少し狼狽える
神奈川県横浜市青 ....
てゆーか旅と言ったら死体を探す意味で
凪いだ東京湾の沈んでいるヘドロとか
晴海の奥の草地に放棄されている冷蔵庫の中身に十字架を切る
みたいな
永遠に浮かぶことのない人たちみたく
あ ....
{引用=月夜の{ルビ泡沫=うたかた}
ひらいた辞書に
針をおとす}
夜の端を
そっとめくると
月は
その裏側で
輪郭をにじませる
言の葉は
月影を背負い
蝉時雨の風と
果 ....
虹色の雲を見ている
水気の多い風が肌を撫ぜるから
夏の木陰で光のなかを見る
まぶしいほどの光量が影を真っ黒に染めている
冬の薄闇よりも一層黒いのに
その闇の黒さは目に見えるのに
水 ....
(1)
掛け声と干物の臭いに押し流されるようにして
昼下がりの賑やかさに身を委ねてみる
所狭しと商品の並んだ店先を覗けば
一見かと値踏みする手練の客あしらいに
思わず半歩後ろへ下がりつつ ....
音が耳に飛び込んできた
窓を開けただけですぐ
世界の動きがわかる
工事してビルを造る
飛行機の飛ぶ
車の徐行して走る
子供たちの笑う
烏の飛ぶ
自転車の走る
人々の話す
犬の吠 ....
暇つぶしに読んでいた夫の漫画本に
ヒミツが挟まっていた
それはちょうど主人公が
携帯電話のメールを確認している場面で
お札と同じくらいの紙切れだった
(本当のお札だったら良かったのにな)
....
扇風機が
静かに首を振っている
かきまぜている
ソファに座って本をひらいている
あなた
この作家は、
攪拌という言葉が好きみたい
と、本をパタンととじながら
あなたが
静かに ....
080730
レモンの月が
パチンと弾け
花火になった
弾けて
星も光る夏
鳳仙花の種を播く
どこの誰が播いたのか
パチンと弾ける鳳仙花 ....
モンゴルはウランバートルで
商用を済ませてホテルに戻る
この国の利権に群がる男たちは
みんな精力の強いイケズそうな面をしている
日本じゃいまどき見られない面だ
暗い喧騒が ....
風に吹かれ髪がひるがえる
ただ、風を受け入れる
きらめく波頭が目を奪う
ただ、光を受け入れる
潮騒と木々のざわめきが耳に届く
ただ、音を受け入れる
僕はいまここにいる
ただ、 ....
夢で見た
赤く透き通った海の中
銀色に光る魚
深みへ行くのを追いかけて
たどり着いたはカップの底
深茶色の積み荷の残骸
檸檬の種
皆何も言わずに
私を見てる ....
花の都
水の都
霧の都
東の都
東京を愛することと、孤独を愛するということは
同一である
という意見に賛同しない
猫を愛することと、孤独を愛するということは
同一である
という意 ....
特急の追い越しのため
列車の停車中に
駅の端では若い女の車掌が
さりげなくにこやかに
初老の車掌と交代していた
ちょうど明日を
告げようとする頃に
常夜灯の近くを飛び回る
一匹のコガネ ....
あれから2週間が経ったっていうのに
なぜいまも頭が膨れ上がってるのか
理由は自分でもわかっていて
そのうちのひとつは、トーキョー 打ち上げの席でもと子さんが話してた電車話が
私の旅路にふりかか ....
私あだ名ははロボ子さん
最近おなかおっきくなったよ
何が詰まっているのかな?
このところ足腰が痛いわ
新発売のオイルをさして
私はロボットだよね?
だけどさあ
このおなかに
夢が詰 ....
{引用=
オーデュボンの目が映した、まるで日食のように昼間を暗くするリョコウバトのその大群にも、最後の一羽にも、わたしはもう二度と会えない。
会えない。
減少する熱帯雨林の隅のほうで誰の記憶 ....
よく聞こえる。
とても聞こえる。
もっと聴いてたい‥
ずっとずっと
あなたのとなりで。
気づいたときには、わたしが
わたしという輪郭に 縫いしろを足して
日常から切りとられていた
景色はいつも、ひどく透明なので
ふりかえっても もう
戻るべき箇所を、確かめることができない ....
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