見えない舟
塔野夏子

不思議
深く眠りながら
果てしなく醒めている心地
見えない舟が 横たわる僕を乗せて
透きとおる彼方へと 漂ってゆくよ

夜は青く
あえかな香りが僕を包む
この流れのほとりには 何処までも
菫の花が咲いているんだね

もう誰の声も聞こえないよ
ただ僕にひそやかに触れてゆくのは
月の囁き 海王星の吐息

僕に刻まれ
いつしか僕の一部となった傷たちさえも
ゆっくりと溶け出してゆくようさ

なつかしく還りながら
はるばると旅立ってゆく心地
見えない舟は 横たわる僕を乗せて
透きとおる彼方へと 漂ってゆくよ





自由詩 見えない舟 Copyright 塔野夏子 2012-02-27 19:47:01
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