はぶさんは、いつも
ぺっぺっと唾を吐く
所構わずトイレになる
介助しようと抱きかかえれば
細い手足で、殴る、蹴る
そんなはぶさんの細枝のような体が
実は末期癌に蝕まれていな ....
またきたか 雪
せいぜい覚悟して降れ
消されるくせに
やっと生き残った枝をへし折り
修理した屋根を壊し
道をうめて無くし
叫び声さえ凍らせるなら
覚悟して私に降れ
美しい冬 ....
空のひとすじ
とぎれとぎれに
たましいたちの渡り
祝祭の予感が
はりつめて街に灯る
肌をかさねる
こいびとは柑橘の香り
湿り気を母音に換え
いくつも降らせ
打ち上げて
土く ....
なんてことない不在の言葉に
愛しさを汚されたその時は
無情の荒野にうずもれて
枯れ草毟ってやり過ごそう
なんてことない不定の言葉に
審美眼を汚されたその時は
悲観の海をたゆたって
船 ....
穏やかな音楽が聞こえる
創造の逢い引き
あなたは梅の香り
土曜の通勤電車
吊革にいにしえの歌をぶら下げる
待ちわびる歌が揺れ
誰もが輪を外さない
子どもの在り方 ....
さみしいとか言ったらいけない
がんばるとか言わなきゃいけない
ひとのせいとかしたらダメだ
なあ、俺よ、この俺よ
ほんとうにそう思っていますか
澄んだ水色の空でした
ピンクとオレンジの色彩 ....
誰もが幸せであることを望み
それに見合うだけの不幸せを我が身に背負う
故に生きることは辛く
苦しい
※
ふと目覚めれば凜として未明の寒さ厳しく
曖昧では済まされないこと ....
こと葉って 薄いもんだ だれか言う
だって 葉っぱだもの と答えるだれか
葉っぱをどんなにつみあげても
きっと だれもほめてくれないよ
ぱっと吹かれて無くなっちまう
そんなかげの薄いやつ ....
いつかうみに流れつく
地下水を求める根のよう
暗闇の先に
冷たい潤いを求めても
指先、未完成のまま
そらに手を伸ばす枝
遠いひかりをからめて(雲に内緒で)
無性に全部、欠けてしまったら
....
この爪を折っても
しぶとく生えてくる
この爪を折っても
歳を取れば 記憶は遥か彼方
この爪に火を点せば
僅かながら この灯りで
道に迷うこともないと口にすれば
痩せ我慢だと隣人は ....
詩は素
素敵と言わせたくて
素っ気ない素振りで
言葉をまさぐる
詩は素
素直じゃないから
素知らぬ素振りで
言葉をこねくる
詩は素
素顔に辿り着けない ....
111218
背
後
霊
を
信じるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーー ....
蜜を垂らしたグレンチェックの太股に群がるメタルボディの虫たちは「Ψ」の甲殻に暗い愛を孕んで、野蛮な大顎にまだ温みのあるバニラの薫る【Eggnog】を零したモザイク画の尖塔を咥え、スミレ色の格子のある柄 ....
家から徒歩1分のところに高台になった駐車場がある
高台と言ってもほんのわずかだ
しかし私にとってはその“ほんのわずか”が重要で
冬の夜の帰り道、
そこへ立ち寄ることが多い
息が白いな
....
世界は しらじらしい
夢の中すら 雪がふりはじめたから
道は 白く はばまれて 遠い
雪にかわったり 曇天に変わったりする幻を
さて いくつ超えようか
カーブごとに
ド ....
世界は まあたらしい
雪がふりはじめたから
道は 白い雪に はばまれて 遠い
雪にかわったり 青空に変わったりする町の名を
さて いくつ超えようか
カーブごとに 青の空の ....
ふるさとは好きだけど
ふるさとにはないものがここにはあるの
感じたくて触れたくてしょうがないものがたくさんありすぎて
そして消える時には
好きな人たち好きなものたち好きなすべてに囲まれていたい ....
辛いという思いは
すぐに増加する
だから辛いと感じたら
すぐに目を閉じて
気がつかないふりをする
そうしているうちに
新しいちっちゃな嬉しいことが起こる
そし ....
【有無】
恋人の有無気にしないお年頃 好きだから好き 好きだけど好き
【墓】
墓穴を自分のぶんも掘っておく いつでも誰か呪えるように
【丈】
身の丈に合わないギャグをしたために オレ ....
朝まだき
西へ急ぐ下弦の月をくぐりぬけ
君のふるさとはあちらにあるんだよ と 飛行機が教えてくれる
冷たい水は無言で涙を隠してくれた
優しいひかり やがてみちみちて ひろがる
テーマ1 台風15号
地上を泳いでいるこんな日は、淡水魚の渓流での苦労がよくわかるというものだ。
尚も傘は無効なのに、{ルビ長刀=なぎなた}の如く構える人が圧倒多数なのは、濡れを厭う ....
ゆく指に かけられた
白い泣き霧
すねを 親から離した
裸足が 蹴り 蹴り歩く
ツノから逃げて おいでなさい
こんこんとわいて おゆきなさい
通い寄り落ち ほこらの辻道
古い ....
お昼に家に帰ると
小さな声で
ただいまを言った
黒いスカートの
ペタペタの
遠くで
おかえりの声する
廊下は冷たく
長く
知らない絵のある
知らない声の
おかえりは
うらの ....
綿毛がひかりになる夢を見た
世界があったかくて平和だった
綿毛とひかりの
愛でも歌っているのかなあ
永遠かあ
空がこわいくらいの青だった
蛇行する広い河川の横を
木々の黄葉が連なってい ....
空前絶後のはにかみ屋
距離感間違え馬鹿のふり
自分に厳しく飴で鞭
手折っても手折っても茂る煩悩
笑顔の旋毛が禿げだした
思い留まるたび迷子
....
あなたのひと肌に触れて
撥ねる
涙
私はきっと今 雨のような顔をしているでしょう
笑うのは難しい
誰が側にいても
部屋の明かりを灯す一瞬で
自分がどんな人間なのか分かってしまう
....
マーマレードの空瓶に挿した
残り物のクレソンに
小さな蕾がついたと
わざわざ見せにくる君
これから何年経っても
君の世界に吹く風は
遊歩道のささやかな花を香らせ
名も知らぬ草を撫 ....
空の下には何もない
空なんてものも何もない
水が腐ったのが
カラカラに渇いたような匂いがした
そういうイメージがした
それは訓練の賜物だろう
やっとここまで来れたのだ
名づけられることの ....
転がり
笑いにおよぐ手は
あなたの汀(みぎわ)に触れただろうか
いつしか愛は 大きく迂回する
あなたの的は
わたしたちの的であり
なのに欲しがるわたしの瞳はもろく
瑞々しい
....
1月 {ルビ梵天=ブラフマー}は金剛乗に還る
すると涸れ沢の畔に半裸を露わし
年若の尼が五弦の琵琶に弦を張る
きつうきつうに張るのだから
絹の撚が奏でるほどに
押えの指の血に染まる
2月 ....
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