お前の墓はたれ建てる
わしも一度は参りたや
たれにも知られぬ偉人あり
その名も男ジョン次郎
ふるさと捨てて母捨てて
砂また砂の大航海
夢も希望も質草に
さすら ....
1
7歳の女子Y、何者かに命じられ
人形を手作りすること決意
綿、晒の布、針糸鋏
どこから手に入れたものか
胴体、手脚四本、それぞれの大きさに
チクチク縫った
ひっくり返して綿を ....
ところで、すべての結末は
流れの中で見えるものか
流れの先のその先に
大きな海があるはずで
流れの先のその先に
大きな地球の表面が
それしか見えないものもいる
詰まらぬ未来が見エルモ ....
にわか雨が遠ざかったあとの 特別な においがして
草むらの開花のそぶりは どれもこれも霧の中
足にからむ露を 蹴散らしなから
花畑を駆けぬけると 遠い山は ぐっと近くなり
鬱蒼 ....
ポケットから
手帳を取り出す手が冷たい
ことばを整理する
その過程で
冷えてゆくものも温まるものもある
あられが窓をしきりにノックする
冬が訪ねてくる深夜
うまれてきたことに感謝し
....
小さなガラス壜の中は海
群青のさざなみでゆらめく
海をコレクションする女は
孤独であるけれども
絶望的に孤独ではなかった
本当の海まで
もはや歩いていくことは不可能
この部屋から出る ....
お互いの娘の墓に柿落葉
リストラをされたと言えず日向ぼこ
君の咳止まらないのが心配で
未成年けんちん汁で乾杯を
鴨川に八百万羽の都鳥
セーターをほどいたもので首くくる
....
何度決意しても
捨てられないものがある
過去に生きているわけじゃないけど
宝物のような思い出は。
そっとそっと
しまっておいて
温かいままでいたい
こんな寒い雨の夜に ....
「カリヨン」
乱太郎
さっきまでの淋しさは
何処に
さっきまでのうっとう ....
リリィ
あの娘は私のことをそう呼んだ
いつまでも友達よって
つぶらな瞳が笑ってた
毎朝
私の髪を象牙色の櫛で梳かし
樫の木の椅子に座らせてくれる
あの娘は私にいろんなお話をしてくれた
....
失った
後悔を
追いかける
俺は無常
無くなった
腹減った
飯を食う
俺は無常
虫が湧く
無視をする
虫になる
俺は無常
情熱に
蓋をする
莫迦になる
俺は無 ....
誰のために歌うの
季節はずれのうぐいす
カナリヤなんて知らない 見たこともない
チョウチョが飛んで行く お盆の朝
もうすぐ 彼岸花咲くね
川辺がきれい
狂い咲きのバラが 迎えてくれた日 ....
雨の降りはじめる 特別な においがして
猫のヒゲがゆれる
森の虫が 鳴いて その余韻の先で
おこめのたける匂いは
のりしろのにおい
やま と たに を
のりづけしようと ....
月曜日
突き刺す気嵐の中
若い女が ビールを振る舞う
突き刺す気嵐の中
マネキンの片手に数羽の鳥が止まる
火曜日
隕石が飛び交う真夜中
若い女が アイスを振る舞う
隕石を避けて生き ....
持ち前の笑顔とやらの裏にある疑心のやり場がまだ見当たらず
舞い込んだ平穏にさえ整合性 求めてしまうみだりなユーウツ
孤独だと自惚れるより幸福を受け入れるほうがよっぽど難儀
....
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太陽が液状化する
とろけながらも
雲の絹糸を伝い這うように向かう先は
飽きもせず西の空だが
絶望じゃない
繰り返しは絶望じゃない
私は ....
体重は二百キロを超え
母は
終日をベッドで寝暮らす
半身を起こすのは
朝昼晩の食事だけ
動こうと思えば動ける
膝を痛めて以来は這って行く
息を荒らげ汗を浮かべ
みしみしと座敷を圧し ....
青紫に霞む浅間山の遠望と
賑わう通りに開かれたテラスには
女がひとり食事している
背中でゆるやかにうねる髪に
藤色のつば広の日除け帽
白地に淡彩の花柄ワンピース
ひざ下の裾は四半円に垂れ
....
ぼくだけが四の段おちた
せんせいが心配した
とぼとぼと家に帰った
まえのひ四の段カードをなくしてしまった
だからお家で練習できなかった
つぎの日は九々のテストがなかった
....
ほんの気紛れだった
マンションの折込みチラシで
折紙しようなんて思ったのは
最寄駅徒歩7分を山折り
南角日当良好を谷折り
指紋の間にかすかに残る
あどけない感触を頼りに
無骨な指 ....
感覚を駆って
熱と湿度が飛び交って
ふたつの身体を高めていく
星間飛行の鈍色の船体が
故郷の水を恋しがって
恒星の配列をなぞるように
五感が跳ねて
目を閉じているのに ....
きみのペースに生きている
ゆるまったり急いたりして
かたちを自在に変えながら
音楽を奏でるいきもの
春の空をゆびで容易くひろげて
降りてきたきみなのでしょう
川辺の花に鼻をよせ
草にむし ....
街の中は喧噪に溢れているので
街の中からゆっくり街道沿いに歩き出す。
季節が素通りしている並木道に
まだ落ちてこない銀杏の葉が茂っている
銀杏の樹肌はゴツゴツしているが
何も物言わずに
....
折り紙
あなたは何を折りますか?
折り鶴
空へ飛ばしませんか?
紙を折れば線がつく
たとえば人生が一枚の紙であったなら
線の数を讃え合いましょう
紙を広げれば最初からやり直せる
....
空を朱に染め、
太陽が堕ちる
キミを失う世界で
僕は怯えている
絵空事の未来描いてた
瞳閉じたまま崖を行くような
愚かで自由な旅路
繋いだ手の熱があれば
何も怖くなかっ ....
神保町の古書店でみつけた
亀井勝一郎の本を開く
薄茶けた頁の紙を捲れば
文中の「純粋」の粋のところに穴が開き
前のページの「醜」という字が穴に重なり
「純醜」という言葉になった ....
温かく美味しいものを
冷たい皿に盛って出そう
今宵、光は妖精の夜
人間達は羽をもがれて苦しそう
神様は自分だけの草笛をぴいぴいと鳴らし
人間世界に"風" ....
目が覚めたらやっぱりおっちゃんやった おっちゃん
ひとりやったら泣いちゃう おっちゃん
そんなおっちゃん、やさしいしたってやー
なにかが 出てきそうだ
僕のおなかの あたりから
いつも 予感がある
それは身じろぐ 胎児にも似て
この意識の どこか内側の さらに内側にある
見えない子宮の中で もがきながら 訴えてい ....
ぴゅん ぴょぴょ ぴゅんぴゅん ぴょぴょ
美観地区の入り口の交差点が
信号がかわるたびにそう囀る
ぴゅん ぴょぴょ ぴゅんぴゅん ぴょぴょ
欠けたまま生きている
欠けてい ....
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