もう何年も入ったことのない
家のすぐ近くにある店が
一ヶ月前に閉店していたことを知った
ようやく雪もとけ 作業がはじまったらしく
母は一月に亡くなった父の墓を見てきた
....
ぼくが常々思う事
くるい始めた世の中と
のぞんでもない現実が
ゆるせなくなるその前に
めんどくさいけど強くなれ
ぼくが嫌だと思う事
くるっちまった世の中に
のぞみなんて一つもない ....
午後の空中へ
午後の空中へ
雨に逆らうようにして
ハナミズキとして昇華し続ける春は
公園が夕刻になっても未だ軽く漂う、
薄い、甘い、影
春とは分離するように
俯き始め ....
ボタンが取れて
心も取れた
はだけた世界に
乱れて飛んだ
あなたの思いは
月に溶けて
宙を舞う力なき手に
ただ一つ
霞だけでも掴めれば
わたしの思いも粉にして
あなた ....
地の水の円
宙の粒
暗くかがやく重なりの日
ひとりの涙が見つめる日
歩くたびに
すぎるたびに
ふと触れる厚い葉
空へ向かう音になる
こころもとなくにじむ ....
詩と技術ということを常に考えています。
というのは、私は詩を書くとき、技術的なことはぼんやりとしか考えていないから。
ぽっと浮かんだものを何も考えないで(言葉で表せるようなことは考えてない)書いて ....
なんと違うことだろう
二年間寝たきりの祖母が他界した
94年の生涯を自宅で眠るように閉じた
涙は流れなかった
葬儀はしめやかに営まれ
その後遺体は火葬場へ
焼かれる間に親族は
酒 ....
遅い春が さらに足踏みをして
私たちの日曜日は
台無しになってしまったけど
公園からの帰り道
陽当たりのいい住宅街の一角で
うっすらとつぼみの綻んだ
可憐な桜を見つけた
ブロ ....
叩く
ひとを叩く
大好きな彼女
君のこと好きだよ
と言わずに叩く
大切な母親
いつもありがとう
と言わずに叩く
可愛い我が子
よしよし
と言わずに叩く
....
?
あなたの煙草に火をつけると
一瞬
ちらちらと
睫毛が揺れる
そんな
どこにでもある光景のために
この部屋での喫煙を許すのだ
もしこの部屋にお香立さえなかったら
きっと ....
腕を組んで歩こう,あなたと
腕を組んで歩きたいのだ,あなたと
明日は,この体を銃弾が通り抜けるかもしれない
明日は,この体が四散するかもしれない
だが,今は,あなたと歩いている
この静けさが ....
肩の上のものたちは再び去った。世も肩も結局は自分を苦しめただけで何ももたらさなかった。目覚めは長くなったが、終わりはさらに近づいた。
雪が空にもどるのを見て泣いた。 ....
肩の上にまた幽霊が戻ってきた。昔と同じ重さと痛みが、どんどん自分を夜へと持っていく。まだ眠りは来ない。自分は在りつづける。あの何も無い所に近づくことなしに、自分に向かって歩むこと ....
肉が裂かれる予感がする。内蔵ではなく、表皮のすぐ下の肉がまっすぐに裂かれ、虹色の壁が刃に映る予感がする。薄暗い景色のなかに、さまざまな色だけが見え、どこからか来る強い光のために全体 ....
限りあるものに呼ばれ
窓をあけ また
窓をあけ
どこまでもつづく
不透明の向こうの
限りあるものに呼ばれ
暮れる色は
知らぬ色
誰かが色につけた名は
そのままその ....
さかさまの本には
さかさまがたくさん書かれていて
さかさまに読むのに適している
でも目はひとつしかないので
ときどきふたつになるときだけ読む
そのほうがもっとぐるぐるするから
....
犬のあとをついてゆく
時おり振り返っては笑う
犬のあとをついてゆく
コンクリートの空の地下道
下半身が猫のままの
犬のあとをついてゆく
土の道のできそこない
泥のよ ....
何もかもがずれてゆく
不幸ばかりがやってきては去る
だが自分はここに居なければならない
自分以外のもののためにここに存在しなければならない
いつかは離れていってし ....
何かを考えるだけの血が
脳まで登ってこない
ほっこりとした二重まぶたの少女の絵を
どうしても描けないでいる
日光のなかの
なかば乱れほどけた金色
灰紫の瞳は
別の時間のた ....
かわいいものは
みな食べられて
腹のなかでうたをうたう
とぅあららら ら
なんにも持たずにひとりのものは
なんにも持たずにひとりに生まれ
なんにも持たないうたをうた ....
かくしたの。
たまごかくして、
おいたの。
とんがり帽子に、
かくしたの。
帽子の中には、
にわとりさんがいて、
たまご暖めて、
いるの。 ....
時には詐欺師が人を欺くように
わたしはあなたを欺きたい
飲めぬ程に苦い毒薬であっても
この世に喩えようも無い甘美さを
死を迎える程耐え難い苦痛であっても
五臓六腑に熱い何かが駆け巡り
....
眩む手にあふるる翳り冬と春
けだものよ応えぬ瞳応える背
降り止まぬ目に見えぬ雨降りやまぬ
花と骨つながるいのち星ひとつ
....
「お土産は、何がいい?」と
聞かれたものですから
私、何とはなしに
「らっきょう」と答えたの
お父様とお母様が夕食後に奏でる
小気味良い音が好きなのです
ぽり ぽり ぽりり
....
花曇りの空に舞う胡蝶の
その透きとおった翅を
欲しいと思う
やわらかく笑う
ということを覚えたのは
いつの頃だったろう
新しいピンヒールが
足に馴染まなくて
ア ....
一度だけ夜を飛べない夜がある冷えた灯りのはばたきの道
降り来る火誰がおまえを責めようか燃えくずれつつ書きとめる日々
しあわせを感じたとたんしあわせは遠く ....
小さな鉄
朝のすそ野
光の迷う道
つづくこと
つづかないこと
ここに無い声
空の句読点から
降りはじめる手
水を読む 水を読む
さくりとふるえ
....
がっこうのりかしつにはウーパールーパーがいます
ちいさいときはすごくかわいかったけどいまはぜんぜんかわいくありません
{引用=
....
指から指へ
景はわたる
花をまわす
雨をまわす
雪に点る青い芽の
ほころびぬものだけがうたいはじめて
折れた枝 折れた風
泣き眠る陽に触れてゆく
ひとつ ....
みかん色 落ちたよ
夜はもうこんなに蒼だし
蒼はもうこんなに夜だよ
西に光って 鳥も帰るよ
冷える音 止まる音
ひとつずつあたたかく
めごい瞳に降り来るよ
ひとり ....
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