ためいきをつきたいところだが
煙草の煙を吐く
自嘲したいところだが
天井を仰いでみる
大きな家蜘蛛が
照明の近く動かずにいる
どこからか
中空に浮かぶ腕があらわれて
書き記すだろう ....
食べれば食べるほど、
百年の酔いも冷める、
ような気がする今日の肴、
とても美味しいはずなのに、
箸が止まってしまうのは、
きっと、僕だけじゃない筈だ。
きっと、僕だけじゃない筈だ。
幽かに残された血の色が、
うっすらと赤く滲んだ )))
香ばしく焼けた肉の塊りを
荒々しく丸ごと無造作に載せ、
じゃが芋と人参のグラッセで飾った
輝く、銀のオーバルトレー
猥(みだ)り ....
しがらみに追いつかれた
雨上がりの宵の口
ゆらゆらと裏通りを歩けば
アーケードの端にかかる立待月
前のめりのふりをして
探していたのは出口
つらつらと磨いた逃げ足で
袋小路に駆け込ん ....
理性・抑制・常識とか教義とか正義とか悪とかという枠は社会にとっては必要なものだが個人の感性の拡大にとっては邪魔以外の何者でもない。それも仕方のないことだろうとは思う。個人の感性の無制限な拡大は ....
手首をすぎる風の先に
向かい合う双つの枯れ木があり
雨に雨を降らせている
夜が増すごとに
熱は辺をゆく
遠くも近くも ただ打ち寄せる
朝の裾が笑い
見えな ....
はふり はふりと
絶え間なく吐き出される
うすく くもった溜め息で
部屋の中のこまごまとした輪郭は
ほとんどなくなってしまった
あいまいにぼやけた世界は
色々なこと を
許してくれそうで ....
小さな緑の段差を踏む
声は低く
応えられないままにすぎる
切り落とされた枝から
離れない虫
おまえは
おまえがどこへゆくか
知っているか
火の前に途絶え ....
砂に埋もれ
沈みそうに生きて
手の届く範囲の幸せを
ただただ全うする
あたりまえに生きることが
どうして
美しくないと
思っていたのだろう
みんなの中に居るか
「だれ ....
秋田で、秋田の詩集を2冊いただきました。
その内の一つは秋田県現代詩人賞や『詩と思想』新人賞の候補に挙がったこともある田口映さんが編集の「北の詩手紙」です。
「北の詩手紙」は、下は19歳か ....
しめった風が頬をなでるのをやめ、
埃のような雲霧が二人の呼吸を失わせていく
白くかすんだ記憶の中で
街灯だけは飴玉のように赤く潤んでいたが
私はそこにいるはずなのか
そうでな ....
きのうを飾る
わたしの言葉の裏がわで
だれかの爪が
あしたを研ぎます
輝こうとする意思は
ばらばらに統一された
石として
きらきら、と
眠るのです
....
双子が
互いを呼ぶ
枯れ野
道ではなくなる道
枯れ野 枯れ野
追いすがり 追いすがり
とりこぼし
曇を燃す火
こぼれ こぼれ
大きく傾き
野に落ちる曇
....
「愛あるいは天使のような」
どこまでも続くかのように広がる
白樺の森を抜けて 僕は行くよ
アナスタシア 揺り椅子で眠る
君の失った右足の膝下に
赤い 赤い 靴を置いた
は ....
影が動きに遅れてゆく
遅れては遅れては重なりつづけ
ひとつの歩みのたびに咲き
ひとつの歩みのたびにたなびく
海の終わりからはじまる砂漠で
影と涙は会話していた
....
先日の夜、だったかな。
それとも朝、だったか。
誰も食わねえ北海道みやげのわかさいもをバリボリやりながらテレビをみてたら、
すき屋のCMをやってた。有名な牛丼のチェーン店だ。
そこで俺は信 ....
ざらついた
明るさのない
明るい日
写真に
死者に
塗る色もない
そのままの日
岩と涙
価値あるものから伝わらぬ価値
あなたの漂着
あなたの波間
蟻と ....
雪はつもり
せわしなく落ち
寄生木と寄生木と寄生木の森
冬が虹を捨てに来る森
枝と鉱 黒と緑
はざまにはざまにそそがれるもの
響くうちは
水でいられる
....
灯台は
海をさがしている
それゆえずっと
船にすくいの
手をのべる
灯台は
自らの眼を
ながらく持たない
おのれを見つめるものたちの
ことばの向こうを
....
音の闇があり
むらさきがあり
白い泡を染め
闇を抜ける
夜の会話が屋根を歩き
窓から入り
まばたきに驚き
再び出てゆく
夜に咲く花と脇道
小さく手を振る気 ....
公園で蝉の骸を踏む乾いた音に
夏の日差しが醒めていきます
夏は生まれゆく季節ではなくて
燃え尽きていく黄昏だから
皮膚の下を流れるもののような色で
手の届かない場所へ
沈んでいくのです ....
紺碧の輝きを放つ
カラスアゲハの翅が
百合の花のつよい匂いに紛れて
大きくひらくのを見た
静止した夏の庭。
そこに私がいる
分岐の先に、
意識が流れてゆくのも――
移ろう涼しげ ....
土壁に
埋もれかけたものの目を見る
目はひとつ
緑に笑む
魂を摑まれている
銀の髪を見ている
無を動くたび
どこからか声がする
蜘蛛の巣の風
....
国道を南下すると
海がひらける
それは
わかっているつもりだった
潮の香りがしている
目を細めて見つめている
+
波打ち際で
砂をかく
砂をかくと
掘り起こされてしまう
....
音の陰の音たち
ゆうるりと振り向く
何もない場所に
署名はかがやく
落ちそうな首を片手で支え
どうにか眠り
どうにか覚める
音を見るたび さらに傾く
....
なつの朝に
くりかえしくりかえし
泣きながら、うまれる
声と声と声が
遠くの地球
むこうにしろいくも
横ばいに漂う
わたしたち
くりかえし生まれて
体操して
朝の匂い
....
鎖骨の
においが
こぼれ落ちたら、
さかなのゆめに朝がくる
ことば未満の愛を交わして、
ゆっくりとたしかめる
てあしの記憶
水の
においの
シーツを背中に
....
ときの
残り火を
消すように
ゆっくり
無言は敷き詰められます
夜の鏡を
おそれた時代が
あったはずですね、
なにも語らない目も
十分に言葉であ ....
そっと
腰を下ろし
いつものひとりに戻るとき
うるおいじみた
乾きがあふれ
ぼくは
あわてて
目をとじた
思い出はいつも
胸に痛い
握れるものの少なさが
はっ ....
午後からは雨がやんだ
小鳥のさえずりを聴き
その翼を懐かしく思う
雨上がりの空に架かる
あの虹の向こう側には
僕の両親が住んでいる
会いに行く途中の道で
水たまりで溺れる魚が ....
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