皮を脱ぐと、
彼女の触手は濡れている。
「…見ないで。」
そう俯く彼女の目は、
もう既に触眼で、
照明を落とした部屋の中、
仄蒼く、
ふたつ灯っている。
....
1
もう、
ふりかえらないのだ
髪をゆらしていった風は
束ねることはせず
つまさきは
後ろに広がる汀を
走れない世界にいて
こころだけがいつまでも
波になりたがっている
....
Ser immortal es baladi;
menos el hombre, todas las criaturas lo son, pues ignoran la muerte;
lo ....
照り焼きテロ焼きミディアムレアで死体満開満漢全席。
隣人人参みじん切り!混ぜれば解らぬハンニバル・ハンバーグ。
締め鯖みそ漬け塩焼きムニエル ....
パンストよ、私はお前を尊敬する
あの強欲無知無恥で愚かで愚鈍な私の母親のよく育った体を
お前の小さな体が包み込む姿を見て
私はため息を一つする
パンストよ、私はお前を羨む
色気が溢れ出し ....
そこはダメ
とか言いながら
崩れていく豆腐
ダメなとこだから
いいんじゃん
角から崩れていけばいい
そして跡形もなくなって
おいしい白和えになって
ポイントなんていらない。
ポイントなんて、いらねぇよ、初夏。
ポイントなんて どうでもよくない? よくなくなくなくなくセイ イェーッ!
、、、嘘です!
ポイント欲しいです!
ポイント入れ ....
・
初夏の山は
いいにおいをしたものを
たくさん体の中に詰めて
まるで女のように圧倒的な姿で
眼の前に立ちはだかってくる
たまに野良仕事をしている百姓が
山に見惚れていることがあるが
....
木々によるさまざな動議が
夜の土に投げ出されている
光源を追い抜く影の群れが
道を軋ませ ころがってゆく
空は三つの重なりから成り
そのどれもが朝から遠く
空は
自由 ....
吹きぬける冷たい風の空高く
ひかりの鼓動は
静かにそそぐ
雪解けをあつめて川は哭いている
生まれたばかりのわたしの春に
ひとひらの可憐な花は弓使い
瞳砕けて曇りをうるむ ....
ミッキーマウスが好きだっていうから、とりあえずネズミさんの格好をしてみたんだよ。
でも、これじゃぁ ミッキーマウスじゃなくて、”ねずみ男”じゃないかい?
うん。知ってる。
君が大泉洋を好 ....
曇を知らずに
ついばむかたち
花のかたち
あこがれ
うしろめたさ
午後の砂の輪
置き去られた目の幾つかが
むずがゆくからだにひらいても
窓を見つめることがで ....
光なく音もたてずにうねりゆく野火の描く蛇さまよういのち
はねのける受け入れるだけが生でなく争うことは戦いでなく
足跡も足音も絶え他を焼かず自らを焼く火を歩みゆく ....
曲がり角ごとに鳥はいて
夜を夜をとまたたいている
青紫の窓がふたつ
甘い手管にひらかれてゆく
うすぐもり
なりひびき
皆なにかを
抱きしめるかたち
昇るもの ....
赤い夕日が広がって
誰かの背中が燃えている
ゆっくりとオレンジ
急ぎ人が赤々と
今日の日よ さようなら
夕食の炎と共に
醜い私達 燃えてしまえ
赤い夕日が広がって
誰か ....
街角でポストが見張っている
僕は急いで携帯を隠す
桜の葉が、ぬるい風にざわめく
雨!
雨の予感だ
宛名のインクが溶けぬよう
ビニールのファイルに挟み込む
ビルディングに巻かれ ....
鳥の声
若葉の陰
見えている
見えている
まるい晴れ間
地をすぎる羽
曇のかたち
飛び去る声
灰に引かれた
緑の線
唱がひとつ
はじまるしるし
....
暗がりのなか 痛みを見つめる
舐めとるように
呑みこむように
ひとつの静寂と
ふたつの静寂を
片目は聴く
雨が近づいてくる
羽をひろげ阻む
丘に棲むけだもの
....
ねえ、ねえ、ねえ、
ねえってば
こんな感じに甘えたのは
あなただけ
生きることの大切さと
初夏の清清しさを教えてくれた
忘れられない優しい笑顔
こねこのように
ベッドの ....
風が、やんだ
鳥の声を探して
下草に濡れたのは
迷い込んだ足と
慰めの小さな青い花
遠ざかっていた場所へ
私を誘う手は
湿っていて
それでいて
優しいから
触れたところから ....
両手の指のひとつひとつに
小さくやわらかな輪が回り
手を振ると鳴り
息を吹くと鳴る
午後の雲を聴いていると
輪も静かに聴いている
降る言葉に触れ
少し揺れる
握 ....
本を読む人の眼は
例外なく真っ黒い色をしている
それはもちろん
眼が活字のインキを吸収してしまうからである
本を読みすぎて
白眼まで真っ黒になってしまった人が
こちらを向い ....
雨が降り
音は昇り
遠く高く
曇のかたわらで鳴っている
かがやきと時間の洞のなか
青い文字に生まれる子
ゆうるりとひらき
外へ外へ歩み去る
離れた硝子と硝子 ....
淡く
夢にいた人は水彩でした
*
(あ、)
こめかみとシーツの間に
かすかに染み入り、そこから
まぶたに明けてゆく一筋の朝の滲みに、すっと
打 ....
片目ばかりが傾く夕べに
しあわせの少ない膝を抱き
花はつぼみのうたをうたう
午後にひたいをしたたるものは
すべて血のように感じられる
その熱さゆえ その太さゆえ
....
どこまでも続く桜並木の先に在るものを
確かめたくて
あなたと手をつなぎ歩く
親子ほどにも見られそうで
控え目なあなたの腕を
胸元にまで引き寄せ
歳の差なんてね
桜は潔く散るから美 ....
接ぎ木を重ねて枯れた樹が
庭の入り口をふさいでいる
小さな寄生木の花が咲き
風は粉と名前を運び
誰もいない街に撒いてゆく
山に残る最後の雪に
ひとりはぐれた鶴がいて ....
骨のような柱が燃えている
燃え尽き くずおれるまで
ただ波のなかに立っている
流れ着くものが燃えている
山の影が土を覆い
波だけが明るく揺れている
昨日の足跡が残ってい ....
私は元来
無口な男でありまして
うっかり、思慮深く思われがちですが
それは、本心を秘めている
というより、むしろ
現すタイミングを計れない
どうにも不器用な人間なのです
何か言わ ....
星の雲と砂
夜の水かさ
わたしが生まれた理由より
さらに遠くへ
離れゆくもの
サーカス 移動動物園
肉から物から聞こえはじめる
わたしではないわたしのかたち
ぬかるみの ....
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