花を負う花が雀になり
鴉にやさしくついばまれている
音は聞かれる間もなく火となって
水だけを求めて落ちてゆく
別の音が別の音を得て空に生まれ
二羽の鳥の背の上から
川に沈 ....
わたしはよく
一度にたくさんのことをやりすぎるので
なんもかんも中途はんぱになってしまいます
なにせ不器用なものですから
今日も
はみがきをしながら
テレビをみて
ラジオをきき
時報を ....
分かれた空がさらに分かれ
水のなかの葉をすぎてゆく
音は動き 季節は動く
ほどけては鳴る遠い金
映るすべてに傾く空を
青はころがり
かがやいてゆく
陽は落ち ....
白 灰 午後 虹
放られたままに響く冬
窓に映る野を馳せる
手のなかの声 粒の声
まわる色 重なる色
水に濡れた小さな神話の
終わりとはじまり
陽から降りつづ ....
川の水と
海の水が
からだのなかで
縞模様に重なり
相容れるようでいて
相容れることのない
ふたつの双葉になってゆく
ゆらめく二枚の絵の前に立ち
ゆらめく水から来 ....
ふたつの瞳
ひとつの鍵盤
さざ波のように混じる音
静かに言葉を連れてゆく音
通り過ぎる会話と
通り過ぎる雨に冷やされ
白くつづく午後の道
人の声は昇り 人の声は去る
....
カタコンブ片
地下墓地の奥に見つかった
女体がひとつ
乾き切ったほむらの形相で
蕩けた口の大きさで
己の生死を問うている
造物主に
世紀を越える時
女もこどもも兵士も一様 ....
たくさんの雀が
それぞれの空を持ち
わたしの内をはばたいている
淡い羽が 喉を昇り
外に出て 腕に乗り
別の色の 空へ帰る
繰り返す
今ま ....
おふろに一緒にはいってくれるきみへ
にくにくしいねといったときに
なぐらないでくれないか
わたしはこんなにほねほねしいのに
といったときに
胸のふくらみをつつくのをやめてくれないか
と ....
雑音の雲の子守歌
雪を蹴り 光る
雪を蹴り 光る
凍ることのない遠い音
夜には優しい二本の手首
朝には見えない起伏を照らす
起伏のひとつであるわたし
片方の目 ....
街に新しい色が来て
赤はみんないなくなる
空の鳥は銀になり
小さな家を埋めたので
原の鳥はただ一度だけ
冬へ昇る階段になり
原を行き来する足跡に
雲と羽を散らしながら
空の鳥 ....
そんなひまがあったら
窓を開けて月に吠えます
そんなひまがあったら
空をつかみ鳥になります
そんなひまがあったら
雲をちぎり雨を描きます
そ ....
水に浮かんだ子のまわりに
鳥のように大きな若葉が
一枚 一枚と落ちてくる
子は枝を噛む風を見つめる
見ぬふりをする空を見つめる
黒い衣 黒い犬
黒い土の上に ....
一回でいいから
ビー玉をとかしてみたい
るりいろの
そらいろの
あのビー玉
やら
このビー玉
なんかを
そしたらきっと
きれいなかたまりができるよ
あのひとの
涙のレプリカにでも ....
わたしはいつも
あの枝のよこをとおるよ
山下さんちとみどりちゃんちの間の
何さんちかわからないおうちの枝
ほんとうはとおりたくないけど
通学路だからしょうがないや
近道してタマの前をと ....
がんじがらめのぼくは
今日もきみに会いにゆけない
なんてったってがんじがらめだからね
ゆけるはずがないのさ
最初はかなしばりかとも思ったんだけどね
ちがったみたい
かなしばりってどんなもの ....
たくさんの旗
白黒の街
ベランダの雨
白黒の街
空を撲つ音
白黒の街
窓に映る陽
白黒の街
通りは祭
白黒の街
みんなを連れて
白黒の街
消えてなくなる
白黒の街
....
朝もやのなかで
あなたの顔をみています
あなたが入れてくださった
オレンジペコーのお茶をのみながら
庭の
ねこやなぎをみているふりをして
横目で
あなたの顔をみています
雪が
ふって ....
き ん い ろ の 睫 を濡らす 天使のうたう歌は
い ろ に はあらわすことができない
ち い さ な 器から漏れる 闇も光も
溢れて溢れるまま か ら っ ぽ になるまで
....
真っ白な画用紙の
その真ん中に
僕は
しま
と書いた
画用紙の海で遭難した船乗りが
泳ぎ疲れないように
ある日、画用紙の海で遭難した僕は
後悔することになる
....
ひとりひとりの背に棲むものが
夜更けに互いを呼びあっている
見えないものの通り道に立ち
腕をひろげ 聴いている
夜の光の下 揺るぎないもの
幾つもの影のなか
ひとりきりのもの
....
わ みみい ぷぷりんさ
みしなら もそで ぱる はふりもっこ
みんさら もへなへきから みんそうと?
もりさ みりみり なぐじゃりよ
むっとほいまな りゅんないで なぐじゃりん?
な ....
病院でリハビリの担当医がもっと歩かないと駄目だという
せめて一日四〇分は連続して歩けという
テストの結果あなたは潜在体力に比べ現実体力が劣るから
このままでいくとあと十年で歩けなくなりますよ
....
感じない掌の上に
鳴かない鳥が
人のように瞼を閉じる
冷たい雨の降る
コンクリートの上で
静かに眠りにつく
戯れるように
温度を残して ....
よるのみちかけるはだしでわけもなくかなしみのこえひびいていたとて
子の刻の夜はいっそう暗かろう紫色に月がほほえむ
くつしたのなぜかかかと破れたりだから今日は会えません
じっくりと愛してくれるわけ ....
いらっしゃい
なんにしましょ
あいびきにく
ください
あのひとと
あいびきしたいので
あいびきにくで
あいびきハンバーグを
つくるゆえ
おともだちに
ばかにされても
....
つんつるてんのお着物を
どうか着せてくださいな
やまいもなんかすってないで
どうか着せてくださいな
ゆめはもうきえたけど
あなたはまだいらっしゃるので
つんつるてんのお着物を
どうか ....
小さいうさぎ小屋には
にんじんのはし
と
きゃべつのしん
と
まるごとのりんごが
あったよ
まるごとのりんごはよくうれて
とてもおいしそうだったよ
まるごとのりんごには
つめたい ....
涙ひとつぶん
あなたに
私の叫びは届かない
いつもの私でないと
気づいていながら
あなたは
何があったかさえ
涙ひとつぶん
わからない
雨が降ってばかりの午後の終わりになって
雨が止んでばかりであること、感づいた
数億粒の喪失、愕然として足を止めた
ずぶ濡れのアスファルト踏みしめるゴムタイヤ
が群れ行き
音 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189