昨夜は職場の女たちが集まって慰労会をした。
一年ぶりだった。
家計のためにパートタイムで働く女が、自分の楽しみのために一人家を空けるのは、それがたとえ数時間のことであっても容易なことではない ....
布をひらき 布を折り
隙間を残し さらに布を折り
ひとつの色に定まらぬ陽は
ひとつのうたをくちずさむ
暗がりの宙に浮かぶ音
変わりつづける一瞬を
意味とは異なる姿の方へ ....
ぴょぴょがあふれたら、
もうきせつです。
ばすけっとにつめこんで、
のはらにでおでかけしましょう。
みんなまっていますよ。
さあはやくじゅんびをして、
....
お月さん
震えていなさる
今宵の風はあんまりじゃ
空が空っぽになってござる
塵ひとつ とんと見当たらぬ
裸で ぽつんと
一人でいなさる
地上に降りて来れたら ....
中国人の女の子が
俺をじっと見ている
秋晴の真っ青な空の下
バスは
俺たちを乗せて
ゆっくり坂道を登ってゆく
母親が
女の子の目線をおって
俺と
目を合わせ 微笑む
....
かわいた中洲は
鳥に埋もれ
流れはただ
飛沫の跡を運んでいる
望まれぬものが橋をすぎ
影は明るくひろくなり
音や色に梳かれては落ち
にじむように流れを濃くする
....
この町が余りに寂しそうなので
一人遊びする 例えば
跳ね橋の上でドリアンが食べたい
皆に嫌われているので
誰も居ない明け方食べたい
橋のあっち側に好きな人がいるから
....
さくらがみたいのと
おまえは呟く
けれども
おまえの為に
こんな時期に
桜は咲いてくれないのです
ようちえんにいきたいの
とおまえは呟く
しかし幼稚園は日曜日に ....
誰もいないようでいない家から
窓が飛び去ったあとの暗がりに
にこやかな家族を
はめこむ陽がある
何度か夢を見た夜は
朝が辛い
真直ぐに誰かに差し向かえば
その夜が怖い
諦めずドアを叩けば
誰か出てきてくれるのだろうか
何の音もないドアを開けても
ただ
見慣れた私の町に続く
新し ....
どんなに難しい本を読んでいたとしても
喜怒哀楽
たった4文字に人のこころは捕われて
(それってほんとだよ
いつになったら大人になれるのかな
つまらないことに腹を立て
投げつけたことばの痛み ....
父去りて夏去りて今日ほどく紐
熱を捨て陽は降り急ぐ石の丘
涼やかな花には寄らぬ鳥と虫
触れるほど水はすばやく風深く
誰ぞ置く錆びし{ルビ ....
あらかた片づいてしまって
のどが渇く
コンビニの廃墟の前で
自販機ばかりが新しい
削る自分に
どこか遠くから
別の何かを削る音が降り
崩れそうに震え重なる
....
酒呑んで見よ!なだらかに腹の出る
真面目すぎ優しさのない体重計
「わたしにはあなたしかいない」馬鹿が見る
自分から自分を取れば残る馬鹿
....
菩提樹の上で交わるけだものの系譜の果てに立ち尽くす我
吼えるものただ自らに背くもの震えるけもの響くけだもの
膨れては刃のごとく雪を斬る寒さ忘るるための憎しみ
....
あれは大阪長居の安アパートに転がり込んできた僕みたいに
公園の木の上で啼いているのを 当時、純朴だった妻がみつけ
憐憫の情が働いたのかどうか
拾ってきた、傷だらけの尻尾のちぎれた子猫だった
....
残光に霞んだ視覚が荒い砂粒に吹き払われる
芥の幻が、埋没した歴史に今も残る「カタチ。
伽羅色に侵食された古代の町が 彼方に浮かぶ
鮮やかな猩々緋の空と砂のミラージュ
陽の沈まぬうちに 亜麻 ....
あなたの「ごめん」は
伝わってるのに
言い争って
拗ねているから
肩に置かれた手さえ
払いのけてしまう
嫌いになんか
なれないくせに
抱きしめられるのを
拒んでしまう
本当に
....
そらにもよ
でっかいそらが まつんだと
まんずだまって みあげてみれ
そっだらここちが するもんだでよ
ふしぎなもんさな
なしてかな
はらっぱはよ うみのすみっこなんだと
うなば ....
めざめては指に生まれし水かきで午後の終わりを泳ぎゆくひと
ゆきずりの他人の家の軒下に丸く在るもの季を唱うもの
届かない遠い川原に届かない指の軌跡の光あおいで
....
光が光をまとうとき
ひかりかげり かげひかり
静かに昇る
譜をめくる指
文字の見えない
明るさの紙に
ひとつをひとつに書きつけて
降りつもる音を見つめている
....
空あおぎ覗き込まれる月夜かな
くりかえし夜を描き足す爪の蒼
水に浮く石を踏む道帰り道
目の生えた指が私になじみゆく
耳だけが曇と ....
僕は犬です、わんわん
しがない犬です
一度主人を失いました
僕はもう仔犬ではなかったから
僕は犬です、わんわん
しがない犬です
先日野良の一員になり
金属に怯えるようになりました
....
君が
君が夕暮れならいいのに
ゆるやかに
侵食される
雲の隙間ならいいのに
そうして
一瞬朱に変わり
再び閉ざされる
僕は夜
君は夕暮れ
夜は待つ
夕暮れがゆく
....
にゃんにゃこりんの にゃんにゃこにゃ〜
にゃんにゃこりんの にゃんにゃこにゃ〜
どこからか鈴の音と 日向が窓辺に
秋祭りだろうか 風にあんずの匂いを乗せて
午後三時 コタロがお ....
グラデーションは必ずしも美しくない
そう教えてくれたのは
確固たる信念でもなんでもなく
ただの空虚だった
ああまた日が暮れてゆく
そのじわりとした色が僕に響いて
それはすなわち僕の ....
絡みつく蛇たちの螺旋の夜
巧みに縺れあう虚無と/いのち
淫らな匂いのする、耀う肌の粘りに
虹色の鱗は冴ゆる星の瞬きを映す
やがて消失する碧暗い空にむかって
聳える漆黒の怪奇な木々は
だらし ....
呼んでいる
呼んでいる
濃紺の夜長に虫の音響き
深くこころの闇夜のなかで
銀の鈴をしゃん、と鳴らして
呼んでいる
待っている
待っている
金木犀の匂いが止み
あたりに静け ....
ジェットコースターに乗って
鋭角の下り坂を転げ落ちるように
とろけたチーズを素早く伸ばして千切り
ピザを片手に口説きつづける野郎
テーブルの上の赤いキャンドル
♪〜ダバラ/バラ 〜シャバ ....
児玉あゆみさんって、知ってる方も多いんじゃないだろうか。ポエトリーリーディングではかなり有名で、ベンズで優勝とか、詩のボクシング関東大会で優勝(だったかな)とか。NHKの番組「真剣十代しゃべり場スペシ ....
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