葉ずれから
名前のしらない時間を思い出した
さて、君はだれなんだろう
隙間からみえる
青い流れは遠い
俺の 眠れない夜は いつまで続く
闇よりも暗い 闇かもしれないぜ
夜は 融けない氷のような壁
俺が ぬくもりを感じるのはいつだ
逃げていく 闇の中を
駆け抜ける 僅かな光を探 ....
お前に花を贈っておいた
花屋にまかせたから
どんな花が行くか分からないぜ
ここんとこ
お前に世話になりっぱなしだったから
なんとなく贈ってみたくなった
お前の好きな ....
ぐおん
と唸りをあげて
自動販売機が震え出す夏
電車のゆれる空間で
ヘッドフォンの君を見る
ひどく 暑い
冷房が壊れているとか何とか
聞き取りにくい声でアナウンスしていた
ような気 ....
ことばは
たましいを
つれてゆくよ
ひとつの
ぶんに
おもいを
はせて
ひとつの
ぶんに
きょうを
のせる
ひとつの
ぶんの
なかにも
ぼくは
いきて ....
音へと変わる木の影の道
風がそのまま過ぎ去る道
やわらかく目をふせ
空あおぐ道
遠さと遠さの間は濡れて
縦の緑は震えている
北の星と朝焼けは消え
光はかすかにたどり ....
ほんじつ
ちかりょこうへ
ごどうこうさせて
いただきます
ガイドです
よろしく
おねがいいたします
みなさまと
おもいでに
なるような
りょこうに
したいと
おもっておりま ....
どうしたらいいのかよくわからない
ので
眠れるように激しく
どうか
お願いします
はりねずみをなでなでしてくれる
奇特なひとはいませんか
手のひらが血だらけになるかもしれないけど
....
優しい女ではなく
デキル女でもなく
格好いい女でもなく
綺麗な女でもなく
わたしは
かわいい女になりたい
手が届きそうな低い空を
逆光に輝く雲が流れる
私は何か恐ろしかった
歩く犬の眼が不吉だった
堤防の道を愛想笑いで
私は歩いていたと思う
濁った ....
実家に帰った妻から電話があった
私はその時一人で部屋にいた
お互いの今日の無事を確認した後
私は巨人が広島に負けていると告げた
長距離電話
他に話すこともあるだろうに妻は
清原の調子はどう ....
荒れ地に生まれたひとつの風と
荒れ野に生まれた多くの風とが
ひとつの海を奪い合っていた
金の光が
銀に変わるまでの永い間に
水は風に混じり
小さなものたちは生まれた
....
鏡に残る真昼の熱が
道のにおいを解いてゆく
光と光がつくる爪痕
左目から空を切りひらく
午後の川の上をゆく
鳥のかたちをした銀河
流れのない流れの色を
照らすものなく ....
耳たぶが
熱い
空調装置にたしなめられた
浅いシーツのような室内の夜には
昼間に溜め入れた太陽の
滴りそうに赤い耳たぶ一滴で
ベッドが太陽の海になってしまうのを
防ぐ ....
深緑の
深くなる光を
鉄筋コンクリートの箱の中から
眺めています
時計の針は
ここを刻むと
それ以上は動かなくなるのです
取り残されるように
私と空間は
どこか
こころ ....
うだる夏の露出
汗の雫の滑り落ちる谷間は
作り物めいた輝きを放つ。
しかしながら その脚を見よ
なんと正直なのだろう
いつの日にも変わらない
スカートの奥の密かな暗がり
そのチラリズ ....
うたた寝から覚めると
下校時刻のチャイム
開け放った窓から
笹の葉が
通りの向こうを
はしゃぎながら遠ざかる
金銀砂子
はるか頭上を
セスナが横切った
ような気がして
空を ....
何もかも失い・・・
いろんなものが僕に突き刺さる。
痛いのか・・・悲しいのか・・・?
わからない。
ただ・・・僕の体は傷だらけ
こうりの矢が刺さっている。
冷たく・・・体が冷えていく。
....
ぼくは龍と二週間ほど同居したことがある
猫のフクちゃんが何かひらひらした
長さ30cmくらいの紐とじゃれて遊んでいた
それが龍だった
あまりに哀れに干からびていたんで
風呂場で水をかけた ....
葉の雨 音の雨 風の雨
低く蒼い夜の連なり
月にいちばん近い星
吸い込まれるようにかがやいている
ついさっきまではっきりしていた
よろこびをふちどる線たちが
おぼろ ....
世界は細さだった
世界は火の粉だった
隙間から見える声にあふれる
限りなく「はず」の少ない湖だった
飛び交う光の波の下に荒地があり
ぶつかりあう音のむこうに矢があった
世 ....
街路樹の木漏れ日の
軽い暗号から、単なる錯乱への
変質
街路樹の木漏れ日の
軽い暗号から、単なる錯乱への
変質
の
染み込まない
土瀝青
指の隙間から覗く ....
アスファルトは
つよい
ひざしで
じりじり
あっつくなって
ぼくらの
おとすかげに
とろり
とけて
いどうする
かちん、と
かたまって
どこにもいけない
あめのひ ....
格子の影が降りてきて
まわりつづけるものたちは
みな止まっているかのように見える
ひたひたと
姿のないものの足音が
午後の後を尾けている
空と地の端
....
呑もうとしても呑めない
コップのなかの氷
それは
自分の指の影だった
音が止まってしまったのに
映画はまだつづいていて
あたりを見わたすと
席に ....
下方を流れる
動けないアスファルトを
凝視している
夏の衣服の軽率な体で、出来うる限り
常に重力のことを忘れず
下方を流れる、動けないアスファルトを
凝視している
歩く私 ....
草原の秘密基地
今はもう影だけで
虫取り網を振り下ろす
残像が目に焼きついた
夕暮れの蝉時雨を
いつまでもそこで聞いていたっけ
通りすがりの車窓から指差した
この草原は僕なん ....
そばを
とおると
あぶないよ
いま
からだじゅうの
ネジがとれそうなんだ
おっと
ほらほら
そんなこと
いいだした
いまでさえ
ぽろり からり
おとしそうに
....
女は
胎内に新しい生命を宿したら
「母親」になるというのに
男は
新しい生命が誕生してから
「父親」になる権利を得る
のだろうか
それは
目の前に細く頼りない道が一本
....
心も体も逆立って
どうしても眠れない
汗だくになりながら
何度も何度も寝返りを打ち
記憶を掻き毟る
流れる血の色は
見たこともない
どす黒い色で
こんな満月の夜にきっとわたしは
....
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