暗がりを廻すまばたきについて
本をひらけば忘れてしまう
脆くまばゆい粉について
うたうことは覆うこと
それでもけして埋まることのない
ひとりとひとりのはざまについて
宙 ....
若気のいたりを老いても続ける
サラサラと嘲りながら
指の隙間から
零れ落ちていったのは
砂で出来ているのを
忘れかけていた
いくつもの季節と朝焼け
パタパタと蔑みながら
手のひらから
飛び立っていったのは
....
多くが 寂しい
それとも
それについて 迷っているのは
予期しない 悲しさなのか
こごえるような 朝を迎える
北海道の
町外れの ホテルで
朝焼けだけが 美しい
コ ....
小さなほころび
どこへゆくのか
頬ふくらませ
どこへゆくのか
果実の耳を
匂わせすぎて
帰るころには
涙あふれて
雨の朝ふいに
何をしているの と問わ ....
道路の一方に並ぶ
木々の下を歩く
ゆっくり歩くほど
雑音の中から 笑う声に似た音が響く
聞いたことがあるようでなつかしい
ふんわりした空気が流れていくけど錯覚だと思う
現実と頭の中 ....
こうして書いていくことだけ
特に 思うことはない
寂しさを紛らわしたいだけ
そう思っていた
そう思うことだけ
過去の自分をうち消していく
得られるものは 何もない
無機質な職 ....
四年京都に住んで
今でもよかったと思うのは
はる を覚えたことだ
生まれ在所に戻ってからも言っている
開けてはる居てはる植えてはるえづいてはる起きてはる
噛んではる切ってはる ....
骨壷抱きしめ寝落ちるまで酒飲んで泣いている
「ねえ、これは骨?」
チキンナゲットを食べ慣れているお前達に
フライドチキンを与えたら
飢えたライオンの子供のようにそれを貪りながら
何かを思い出したように下の娘が訊く
「そうだよ。 ....
若い頃の苦労が役に立っていない
ギャロップ ギャロップ
地表は斜めのフォックストロット
朝陽にふくらむ窓や壁
影の行方を振り向きもせず
半分の虹
速い夜
河岸はふたつ
遠い橋
冬のさな ....
嗚呼朱く赤く紅く
秋に明け暮れ飽くことなし
移ろうものこそ美しい
去りゆくからこそ愛おしい
不変の美は仮庵から
渡り鳥のように飛び去るのだ
文字の檻に閉じ込めるなら
ソレハヒトツ ....
平凡な沿線のこの街に
夕暮れが密度を増してゆく一刻
零れ落ちそうに客をのせて電車がレールを軋ませ
商店街は夕餉の想いに満たされて
帰ってくるあるいは帰ってこない主人を待つ願いも時間が経 ....
噛み砕く氷砂糖や宵の闇
雨にとけて流され残ったのは、ちぃっちゃい欠片
ウチがウチであるための、ちぃっちゃいちぃっちゃいウチ
たぶん、もう傘はいらん と思う
ひとの一生懸命に対して
意味不明のことをしたら
されたほうは傷つくだけ
ひとの一生懸命をただじっと
深く冷たく温かく
見つめておればよかったのだ
ひとの一生 ....
描くことができない白
書くことができない白
語ることができない白
ただ観ることしか許されない白
白と呼ばれることすら拒絶する
月の光の指先
月の光の吐息
....
冬は重なり
遠のいていった
蒼は銀になり白になり
やがて見えなくなり
聴こえなくなり
さらに見えなくなった
映った力が生きていて
刷毛のように支配した
塗り ....
川辺の泥に倒れたまま
扉はひとりうたっている
烈しい生きものの光が
近づいてくる
夜を焚くむらさき
自らを混ぜるむらさき
羽の切れはしを
こぼすむらさき
....
きっと今
歩くことが できるのだろう
たった今来た 電車は 乗るはずだった 電車だった
何度も人の横顔を乗り継いではやってきた
この街から出て行くこと
無理のない 女に走っていれ ....
それ以上は もう
あなたのおしごとではありません
ペパーミント
そうですね いまのわたしには
あの深みどり色の 喉を辛く焼く液体が
このうえなく大切なだけですから ....
小さな虹が
扉をたたいた
革の鋏 半月の窓
銀と白がすれちがう径
蛇の頭に
打ち下ろされる槌
爪のはざまの血
底へ向かう 斜面の途中
渦を吸い込み
渦 ....
兵士を探している
冬の砂を知らない
兵士を探している
時と共に変わる
陽と同じ色の
戦士を探している
戦士を探している
夢のなかの会話の
戦士を探している
背 ....
いろいろとさみしくてキリンでいる
銀紙のいたみが残っている
なにをつつんでいたのだろう
じょじょに
曲がりくねり ながら
朝になって夜になって
夜になって
夜になって
言葉はみじか ....
話すことに疲れてしまったから
いつもうなずくだけで済ましてしまう
何か言おうとするけど
最後はやっぱりだんまりだった
それでも聞くことはやめないようにしたかった
こんにちは 元気?
そ ....
雨にとけてしまいそうなウチ
それでも傘に入れてくれるん?
いっしょに流されてくれるん?
言葉なんて要らない
あんなにも人を動かす言葉なんて要らない
街のさびれた一角の
小さな自転車屋の店内で
カンカン音を立てながら工具で自転車を直す
あのおじさんの鋭い技術が欲しい
....
合わされない眼がある
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