誕生がある
触れずとも知るかたちがある
ざわめきの道のかたわら
夜を照らす骨に集う


晴れの下の輪
飛びたとうとする硝子には
溝を泳ぐ矢印がある
従わぬ背のまたたき ....
同じフロアの同じ間取り
南西向きの小さなワンルーム
好きなひとの去ったベッドに横たわり
ひとりの男の死を想ってみる

駅前のスーパーで買い物を済ませ
近く有料になるとかのレジ袋をぶら下げ
 ....
うろこの陽すべてをすべて指し示す声がきこえる声がきこえる



かがやきよ窓くだき割るかがやきよかけらに混じる空を数えて



しるべは木しるべはまなこしるべは火かたち ....
空の名は
曇ることが ない

大雨だろうと
快晴だろうと
空は、空

不純なものの一切を
それとは知らずに
ながらく含み

おそらく とわに
静止をしたまま



 ....
お好きでしょう?
と、高みから言い下ろす、雨の
密かな祈りは
花と花の陰へ、葉と葉の陰へ
しと、しと、黙られてゆく。


紫陽花から立つ水の匂い。
後戻りできない蝸牛の渦巻 ....
傍にいてもとってくれぬ夜に、
わたしの赤いあやとりが、ゆるり、たわむ。
想像の余地を失った惑星の軌道みたいに明確に、
ゆるり、
たわむ、
床に、


指の、
床にうず ....
数多(あまた)の田は
既に水が張られ
夜ともなれば蛙が鳴き、
やがて狂おしいほどの肌の火照り、

野鯉を釣った後の
烈しい血の騒ぎも抑えがたく
儀式は、六月のうちに
さも義人を装って
 ....
幾度も夜に月を着なおし
言葉を交わす別れも無く
樹と曇と星の重なり
灯火ではない明かりへ歩む


海辺の突堤に
子が腰かけ何かをつぶやく
聞き取れないまま
子の姿はか ....
{引用=ただいま}
毎年の
「ただいま」
が年々ぎこちなくなってゆくのを
自分で感じているのに


{引用=おかえりなさい}
あなたの
「おかえりなさい」
は年々なじんで
小川の ....
不自由は
ひとつの自由の答えだろうか

迷いと混ざり
散りゆくひかりを
なつかしく嗅ぎ
瞳をほそめる

夏の滲みの
あふれるかたわら
両手にかぜを伝わらせ



海 ....
あじさいは雨に
色をもらう
少しずつ少しずつ
となりの子とは違うように
淡く。パープル

ぬれてるからって
傘は差しださないで
雨がすきなのわたしたち
雨でわたしたちは
きせつを彩 ....
双つの花
遠い鏡の前の影
目を閉じ 何かを言いかける
双つなのか ひとつなのか


空の上の上の音
集まり来る曇を見る
道が交わるところで目を閉じ
窓のかたちの白い火を見 ....
枕木の間に蒔かれた砕石
それぞれの名前は知らない
久しぶりに訪れた東京のそれ
が、今日の、そしていつもの。

「思い出せない」ということを「忘れてしまう」と言うらしい
だから「知らないまま ....
まだらな午後の嗚咽を受け
震える水の膜の指
またどこかへ連れ去られ
またどこかに立ちつくす


ゆうるりと巡る音がある
出口を持たない入口がある
飾られすぎた光を燃して ....
ひかちゃんが
幸せになるか、不幸になるかわからないけど

きっと

自分にとっての幸せってなんだろう

って考えて
探求できる子にはなると思う。


って今日着た手紙には書いてあ ....
朝の頭は
子蜘蛛の巣だらけ
顔はいたずら描きだらけ
つるりと洗って家を出る


雨で合羽で自転車で
前しか見えない馬車馬の道
そばを小さな合羽の群れが
わいわい言ってつい ....
プール清掃の前 ヤゴ捕り大会があって
捕まったヤゴたちは巨大なペトリ皿に移される
ヤゴはそれぞれの教室に置かれ、トンボになるまで観察される

子どもたちが最初に目にしたのは、なんと共食いだった ....
雨と曇と雪のたましい
晴れ 無 晴れを生きては死ぬ
この痛みに痛み降れ
この痛みに痛み降れ


何も言わずに銀の語る朝
謂われなき火が窓に点る
誰も去ることを知らぬ ....
広い海原からたったひとしずくの真珠を拾い上げるような
そんな途方もない思いで、

今にも枯れ朽ちそうな薔薇を掻き抱き
わたしはこの道に佇む





どこへ行けばいいの?

  ....
あの日
びるのてっぺんは
どれだけ
さみしいひかりがみえたの

むてっぽうなことで
きみも
やっぱり そんを したのだろうか

そっとちかづこうとすると
花をちらすみたいに ....
楽器を操る人から
音楽が聞こえてくる
ジャンルを語る人から
うたが聞こえない
欲しいものはなにかの名前
なんかじゃない

   百科事典が世界を壊していく
   たとえば民族
    ....
火と火の違いもわからぬうちに
わたしたち とは語らぬように
言葉への畏れを絶やさぬように


入口にある目は
実の奥にある目
森をひとつ逆さまに呑む


水を見たら ....
左手をうしろにまわし
羽をこぼし
幸せをのがし
灯りを点ける
命のない明るさが
粉のように甲に降る


長い長い長い夢の
つづきをどこかへ置き忘れている
鉄の隙間に生え ....
酒のつまみに
キュウリを切る
塩で喰う
少しこしょうも振る

まな板からキュウリが
ひとかけら床に落ちる
キッチンマットの上で
転がったキュウリを
そっと拾い上げる

これをゴミ ....
けれども胸は 青く傾斜してゆく 怯える意識には
透明なふりをする思惟が 蔓草のようにからみつく
窓の外では 涙のように 果実の落下がとめどなく
そのさらに遠く 地平の丘の上では 二つの白い塔が
 ....
葉桜のむこうの
三つの波
つながれていたものは放たれて
水辺をめぐり 戻り来る
青に灰に
くりかえす


ひび割れ倒れる間際の硝子に
まだ名のないものが映っては
光 ....
シロツメグサで
首飾りと花束をつくり
ぼくたちは結婚した


わたしの秘密を
あなたにだけ教えてあげる
と花嫁は言った
唇よりも軟らかい
小さく閉じられた秘密があった
シロツメグサ ....
原のなかで
オジロワシと見つめあった
彼は言った







遠くから雨が近づいてくるとき
オジロワシを思い出す
彼が何を言ったのか
あるいは
何も言わな ....
時は飛び 分は飛び
秒はわずか手のひらにある
両肩と指を結ぶ三角
降るものたちを受けとめきれない
かがやきにあふれこぼれるかたち


響き少なに揺れる影
オンドマルトノ ....
似かよった街の
似かよった道の行きつくところに
友人の建てた家があるという


何年も何年も借りたままの
いろんなものを返しにゆく
川辺にはワニがいてこちらを見る
 ....
砂木さんのおすすめリスト(5644)
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