川の向こうに
痛みが待っている
少女の姿をして
けだものの背にもたれて
得られないもののように笑い
届かないもののように立ち
詩わないもののように腕をからめる
....
全ての人に大切な愛だって
手に入らないこともあるじゃない
適当に感動して一日を潰した私
何もないのに無理やり泣いて
声が枯れたら
また日が暮れた
同じように過ぎていく時は
数 ....
緑に呑まれた家のかたわら
雨が次々と壁につかまる
二匹のけものの哭き声が出会い
遠くからさらに遠くへと
逃れるように午後を越えてゆく
空を影の卵が流れる
涸れか ....
干乾びたのだろうか 私は静かに干乾びていくのだろうか
風の強い静かな午後 ほら、耳の裏側で
ガラスの器 丸く並ぶ石粒 揺れる水
指を離す ゆびをはなす 知っているのに・・・
鳴る音は飛沫 ....
光
清い、白の
まだ濡れている
瑞々しい、ナイフ
フォークの曲線
その後の先端
グラス
の中の水
に落とした氷
純潔、純潔、純潔、衝突
高音 ....
わたしは
命ではないものの声を聴く
わたしをここに
わたしをここに置いてゆけ と
横倒しになったわたしの心
たったひとつの言葉に浮かび
たったひとつの言葉に沈む
横倒しの ....
燃える樹の前のからだと花束
つづくことのない美しさ
よく磨かれた場所
磨かれない場所
異なる響きがありつづける場所
空のまだらが午後になり
かかげた手のひらに ....
流木が燃えている
岸のかたちに沿い
浮かぶように燃えている
遠い夜のかまきり
終わらない光を狩り
たたずむひとつの魂を照らす
たどりつけない梢の火が
月の左 ....
明けて、色彩が始まり
かつて刻んだ果実の朝の瞬間に
黄緑色の芳香と共にかつてたちこめた笑い声が
初々しい果実として、生まれ変わっているのを感じるから
わたしは齧る
あ
ずっ ....
かがやく小さな雲の群れが
夜の白をすぎてゆく
河口に 入江に
小さな舟がひしめきあい
薄いむらさきのなかで揺れている
雨を照らす手のひら
雨に照らされる手のひら
....
ひび割れた岩の目が
波に降る花を見つめている
鳥の翼の生えた草を
銀の署名とともにつかむ手
燃えつきることなく火のなかにある
明かりの下で器をかたむけ
草を焼いた粉を見つめ ....
買い物袋から
オレンジが転がったのは単なる偶然で
私の爪の端っこに
香りが甘くなついたのも単なる偶然で
果実が転がり出さぬよう
そろりと立ち上がった頭上に
飛行機雲を見つけ ....
母は時折話して聞かせてくれた
その 夏の日のことを
まるで 昔話を物語るように
淡々と淡々と
話して聞かせてくれた
どこへ行った帰りだったかしら
小さな弟を連れて
畑の中の一 ....
誰かの問いかけ
境界の色
すぐ左隣でことこと言う子
まなじりの端で増えてゆく影
流木を拾い集めるものの影
みんなみんな遠去かる
幻のように居なくなる ....
雨が止み
もの皆かがやき
手のひらが痛む
ゆらめくいのち
その名とともに
世界となるもの
ふたつの惑星が
三番めの惑星に落とす影
午後と夜の間の ....
力をふるうもの
草に狂うもの
ふたたび来る雨に吼えるもの
一片の永遠に触れ
燃えあがるもの
背中に降りる手を感じ
泣きながら目覚め
羽の失いことを知り
ふたたびね ....
指先なんか不器用でいい
鍵盤が求めるものは
迷いを持たない、その
指先の重み
ねぇ、
清らかな雨の注ぎに
いつまでも耳を傾けていたいの、
私
おはよ ....
空をゆく流氷が
原に立つ子の瞳に映る
旧い川が運ぶ黒い土
小さな光の波
いつの日か原に
何本も土の柱が立ち
やがて次々と倒れ
原を埋めていった
原はうね ....
音の空から斜めは降る
親しげな空ほど
高みへ去る
列は青く
青は遠い
朝の月や朝の星
鳥や雲に重なったまま
水底の火を見つめている
けしてけして澄むことのない
濁 ....
数えきれないほど多くの
手首のかたちをした炎が
夜の空をまわりつづける
見える夜 見えない夜を
讃えつづける
原を越える雨
石の絵文字に咲く花
森をまとった遺跡の ....
僕の「はじめまして」と「さようなら」は
イコールになっただろうか
なんだか「さようなら」ばかり思い出す
僕は1年前
君に出逢った
君のことが好きになった
心から ....
俺の瞳はガラス玉
もう感情がないんだよ
あなたを失ってから
辛い時
いつもあなたをたよっていた
悲しい時
いつもあなたがいてくれた
それが
もういな ....
闇が降りてくる
大きく静かな
ひとつのまばたきが
ゆっくりと夜を動かしてゆく
音もなく仕方なく触れあうものたちが
手のひらで互いの目をふさぎあう間も
夜の蒼の流れは止まず
ほ ....
ふりふりふり っと
どれすの すそを
ゆらして
まるい
ぼうるの なか
きのせい かなー
うわめづかい
きのない ふりして
さそってる かなー
そとは
....
紫陽花を見て
死のうとしていた
そんな時
僕は君に会った
君は悲しみをしっていて
苦しみも知っていて
僕と同じだった
月日は流れて
紫陽花を思い ....
白い部屋の
白いベット
窓から飛ぶ鳥が見える
俺も本当は
翔びたかった
翔べただろうが
翔べなかったのが事実
もしもお前がいっしょなら
きっと翔 ....
まず、最初に言っておくけどね。
冷凍室から取り出したばかりのアイスキャンディーを
すぐに舐めてはいけないよ ホワイト
表面を白く覆う 霜という物が消えてから
静かに舌で突っついてさ 甘 ....
ぬるい雨に圧され紫陽花の青い首が舗道へ垂れています
私は待っています
触れてくれるでしょう、荒れたアスファルトの
えぐれたままの古傷に溜まる暗い水に、柔らかく
あまりに ....
貝殻を気取る私は
捕獲されるのを警戒する
辺りが静かになった頃
深い深い、おそらく他人には不快と思われる
夜の底にて
ようやく貝は口を開く
ポロポロと子守歌
誰にも与えら ....
ああやっと見つけたお前はそんなところにいろ
ドアを開けたり閉めたりして
出たり入ったりしろ
振りほどいた手は振りほどきっぱなし
アクセルを踏んでブレーキ
両手でつかめるものは ....
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