硝子を失くした窓の列を
鳥と花と草木が通る
ここは痛みを知らぬ胸
ただまなざしに焼かれるところ
道から湧く音 光まじる音
重なりを解いてはつなぐ音
....
暑くもなく 寒くもない
昼と夕の変わり目に見る太陽は
ぼうやり として
霞み懸かった空の川を
漂うように 浮かんでおりました
このように 繊細な秋の日には ....
きゆうううううううがががががが
せまいせまい毛布の中で
かたまった感情を
溶かせ・とかせ
すれちがうことも
無心でおいかけるのも
からだがなければ
この下肢、裸足
つめたい
....
都会に住みはじめ一番変わったのは
靴が汚れなくなったこと
母に駅まで長靴持ってきてと頼んだのは
実家に帰った際の笑い話しとなったし
でこぼこ道に足をとられることもなくなった
色とりどりに ....
木琴が鳴る
放つことなく
受けとめるまま
木琴は鳴る 木琴は鳴る
明けてゆく夜
蒼つなぐ蒼
明ける色の手
見えない手
隅に集まる
光の渦
紙に染み込み
....
恋の壊れる音を
はじめて
私は聞いた
恋は
すがるしかなかったのだ
制度に
あるいは約束に
あなたを
愛しむ理由がないように
あなたを憎しむ
理由もなくて
強 ....
水のなかに
水と同じ言葉が落ち
跡は皆
光にくちずさまれている
降る水のにおいが
道を流れる
砂に埋もれる火を映し
鏡は旧い水を横切る
知らずに光を呼吸しな ....
踊る阿呆見る阿呆つれて飛んでゆけ
雨くわえ曇すててゆく鳥の群れ
風ふいて燃えないゴミの笛ひびく
人のこと言えない自分ふくれゆく
言えぬまま言おう ....
風から来る音
歩むもののまわり
色を結うひとり
こだま かこみ
うしろのこだま
触れることなく
浮くかたち
雨が起伏を均し
地の光は消える
ひとつがひとつ ....
めまいがするほどに単純な設問の数々
「はい」か「いいえ」のいずれかで答えよと記されていた
簡単な筆記試験だからと
人事部のひとはわたしを残し出て行った
小一時間もあれば出来るよね
何だかなあ ....
しずかに激しく
ひとたちが群れては
やさしいことばをかけて
やさしいことばにすくわれる
ああ、きみの手ぇ、あったかいねぇ
網の目たちがあくしゅを、している
みえないものをわたし ....
図書館の本は
公務員みたいに黙って
読まれる、という役目を
少し怠そうに待っている
田舎の図書館は
どうも品揃えが悪くて
本にも覇気が無い
手に取ってみても
抵抗はしないけれど ....
ピアノのあしは楽器を支えているのか
それとも音楽を支えているのか
ギターをかき鳴らす仕草は
そのあしに似て、共鳴する独り言
マイクを持って空を指したとき
ひとはただのマイクスタンドでしか ....
水に降る水
白を摘みとり
蒼を咲かせ
水に降る水
空から空へ
伝うまなざし
水に降る水
水に降る水
子の胸に
しっかりと抱かれた鏡から
にじみゆく色
ほどけ散 ....
無音が無音をわたる波
青空よりも遠い青空
どこへもたどりつかない坂を
息つぎだけがのぼりゆく日
雨は生まれ 雨は消え
雨は雨を巡っては消え
坂を駆ける髪と背に
翼の苗 ....
白い柔肌にそっと触れるや否や
とつぜん狂った発条みたいな
青白い器官が左右の外耳道から飛びだして
先ずは目玉をふたつ、
声もなくポロンと落とし
詩人である若い女の頭部はみごと分解した
....
わたしは、あなたが思うよりも深く、沈んで、いる。
それは深海のようであり、深遠のようでもある。
あなたはあなたが嫌いで、いつも誰かを、装って、いる。
あな ....
雪虫の柱と
煙の柱が宙に交わり
何が居るのかわからぬ卵が
草と木の根に降りそそぐ
ひとつの岩の上に生まれ
岩を呑みこみ育ちゆく樹
卵の音を浴びている
卵の光を浴びてい ....
そこに ここに
くちびるを置き
すぎゆくものの湿り気を視る
まぶしく消える音を視る
水に映らぬ双つの影
水辺を雨へ雨へと歩む
雨のまことは隠されている
現われても消え ....
これは光ですか
はい そうです
誰も読まない
本のような光です
あれは光ですか
はい そうです
誰も訪れない
店のような光です
あれも光ですか
はい そう ....
雨は去り
野は息を継ぎ
有限を照らす
まぶしさをやめず
かけらは香る
満ちた川を
鳥は離れる
雨を追い抜く雨のほうまで
文字は幾つかつづいてゆく
声や羽が ....
おもいは目線のさきにあり
よそう前に 両手あわせます
名前も住所もしらずに ここにきたこと
目線のさきは しろいしろーい もちもちのふんわり
とどきすぎる、炊けるにおい
今夜 いっぱいぶ ....
両の指を痛い位絡めて
錆びたフェンス越しに友を見ていた
立ち入り禁止区域
思い切り高く遠くへ放った
僕達の鞄
一瞥して走り行く
君の ズザザと力強い
足元の埃
駆け上が ....
夕暮れと同じ色をした
雀の群れを乱しては進む
道標を飾る白い花
いつの世も悲しい子らはいる
わずか数秒のねむりのつらなり
分かるはずもないくりかえしのわけ
ねむりのまま ....
――外国産と思しき、
ずいぶんと安っぽっちい杉板の木枠に
金槌で小ちゃな無数の鋲を打ち込み、
皺なく「ぴぃーん」と
白い亜麻布を張った
自分で拵えた七百号の白いキャンバスへ
左官が使うみた ....
土色の声が
緑を曲がり
今は失い川を流れる
明るすぎて
からになる鏡に
満ちてゆく寒さ
地に残りつづける
光の矢のしるし
ただ置き去る音のほうを向く
....
菱がたの声が地に灯り
空にも海にも届きながら
誰も呼ばずにまたたいていた
夜の鳥
飛べないのだと
想いたい鳥
水をざくりと斬る光
動かない縦の水紋
熟れた灯 ....
指は
君の小さな生き物だった
どこか
遠い異国の調べみたいに
時おり
弾むように歌ってた
君が僕の指を食む
君が
少し子供にかえる
遠いね、
とだ ....
働くってことは
否応無く押し付けられた役柄を演じること
食品会社に勤めれば
賞味期限の記されたシールを貼りかえる日々
罪の意識など三日で消えてしまう
コールセンターに勤めれば
クレ ....
水でも風でもあるものの声
川の流れの先へと映り
海鳥の狩りに溶けこんでゆく
夕暮れも鉄もざわめいている
うすくのびた
草と道の汗
姿のない揺れと声
野の錆が鳴 ....
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