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濃い青の空に
白い雲の城砦がいくつも立ち
なかぞらを埋めつくす蝉時雨
他のどの季節にもない濃密さで
夏は君臨する

けれどその夏の中に
巨きな空洞がある
夏のあらゆる濃密さが
そこで ....
亡びたもののあかるさが満ちる夏の庭
もう誰も時刻を読むことのない白い日時計
茂みに囲まれた小さな池

茂みをざわめかせていた風がやむと
あちこちの陰にひそんでいた気配たちが
(それが何の気 ....
君が「孤独」と名づけた場所
そのさらに奥に
小さな部屋がある

くすんだ象牙色の壁紙
いくつかの黒ずんだ木の棚
そこには本 小函 硝子壜
円い置時計 何処かの土産といった風情の
人形や ....
灰青色のかなしみが
時計の針にまつわるので
空気が気怠さを増してゆく部屋で

六月の似合うそのひとを
あなた という二人称に委ねないために
窓外に滲むあじさいを
しずかにただ眺めていた
 ....
そして私は迷い込む
静かな五月の夜
輪郭を失くした処に

複流し
伏流する時の中で
淡くオーヴァーラップするのは
私の意識と
君の意識か

(私とは)
(君とは)
谺のように出 ....
僕は夜明けをあまり知らない
けれど夕暮れならたくさん知っている

薔薇いろから菫いろへとグラデーションする夕暮れ
金色の雲が炎えかがやく夕暮れ
さざ波のような雲が空を湖面にする夕暮れ
不吉 ....
(チューリップが 咲いたよ)

君は少しずつ
透きとおって消えていった
虹色の血液をめぐらせる
心臓と血管だけは
しばらく其処に残っていたが
やがてそれらも
透きとおって消えてしまった ....
白くつめたい指が摘んだ菫の花束
破綻をつづけるイノセンス
誰にもわからない時を刻む時計
虹色に震えながら遊離してゆく旋律
救いの無いシナリオ
かすかに聴こえる古いオルゴール
のようなノスタ ....
そしてまた世界は
からっぽに明るくなる
このいたずらな明るさの中では
何かを見分けることなど出来やしない

事象たちが書き割りのように
意識に貼り付く
歩きたい道を見いだすことも困難なの ....
かなしい夏 ?


夏の首すじが
眩しい

何もすることのない午後

空気さえ発光している

しなやかな夏のゆびさきが
飽きもせずあやとりしてる

夏はあの木立のてっぺんあた ....
心ゆくまで涼もう
誰も居ない そして
自分も居ない処で
そのはじまりからすでに
鋭く亡びに縁取られているのが夏で
青空と陽射しがどれほどあかるくても
そのあかるささえ不穏なのが夏で

蝉が鳴き騒いでも
祭の喧噪が渦巻いても
濃密な静寂が深々と ....
青ざめた喜劇役者が
陽気に痙攣している
何を間違えたのか
この照明はやけに明るすぎる

恐ろしい青空に
巨大な広告塔たちがそそり立ち
だだっ広い国道を車たちが
獣のように流れてゆく
 ....
断崖のふちに
ぽつんと一つ置かれた白いベッドで
僕は目ざめた
僕の上には
途轍もなく青く明るい空だけが
広がっていた

僕はベッドの上に坐ったまま
何も考えられずにいた
すると
空 ....
それは 破綻だった 小さな部屋で
はじまっていた 壁が不必要に白すぎて
かといって 何を置けば あるいは ただひとつの
窓に 何色のカーテンをかければ その白が
中和されるのか わからなかった ....
たもつさんの塔野夏子さんおすすめリスト(15)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
夏の空洞- 塔野夏子自由詩12*23-8-15
夏の庭にて- 塔野夏子自由詩15*23-8-7
小さな部屋にて- 塔野夏子自由詩11*23-7-29
あじさい- 塔野夏子自由詩12*23-7-5
Overlap- 塔野夏子自由詩6*23-6-11
夕暮れ見本帖- 塔野夏子自由詩5*20-1-13
春の窓辺で- 塔野夏子自由詩7*08-4-5
処方箋- 塔野夏子自由詩12*07-3-11
九月の黙示- 塔野夏子自由詩17*05-9-13
かなしい夏- 塔野夏子自由詩20*05-7-31
夕涼み- 塔野夏子自由詩8*05-7-23
夏について- 塔野夏子自由詩26*05-5-23
劇_場- 塔野夏子自由詩5*05-3-21
- 塔野夏子自由詩5*05-3-19
カーテン- 塔野夏子自由詩8*05-2-25

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