おかえりだけで埋まってゆく
AB(なかほど)

二年振りに
帰ったときには
通夜はもう始まっとった

大往生や
ええ顔しとるやろ
せやな

いう声が ぽつぽつと
わしは
なんでか 
涙もでえへん
ここ何年も口きいたこと
あらへんかったし

従姉妹のケイちゃんが
台所の手伝いしとって

遠いとこから疲れたやろ

いうて
法事にいつも出されてた
すまし汁よそうてくれた

疲れたことあらへんけどな

いうて
すまし汁をすすった



あかん

なんでこないな汁の味で
涙でよんねん


あかんやろ
こら
あかんやろ


そのときはじめて
おじいの顔つき変わって

おかえりい

いうた気がした

  


自由詩 おかえりだけで埋まってゆく Copyright AB(なかほど) 2003-12-04 00:30:58
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