中学のとき
吉岡ペペロ
中学のとき
それが休日の過ごしかたのような気がして
よく一人で映画館に行った
暗い映画ばかりを選んで観ていた
いまでも思い出すのが
神田川とミ・アモーレの鐘という映画だ
神田川では精神に異常をきたした若い女が
羽のついた鳥の生肉を座り込んで食べていた
ミ・アモーレの鐘では
知的障害者の妹を兄が孕ませていた
そんな暗い理不尽に
あの頃ぼくも人生を蹂躙されていた
電話をかけては泣いていた
電話はいつもコレクトコールでかけていた
ぼくはだまってしまって泣いていた
だから返事ぐらいしかできなかった
中学のとき
それが休日の過ごしかたのような気がして
よく一人で映画館に行った
暗い映画ばかりを選んで観ていた