ウラジミール・ズレリンコフ
salco

はナホトカ生まれの十八歳
でどっか相当ずれている
小さい頃からずれている
多くの人とずれている
殆どみんなとずれている
仲間はずれで入れずにいる
ウラジミール・ズレリンコフ
は小学校で持たされた
ひきだし隅の虫めがねを持ち
ずれを探して歩き出す
私道市道に県道国道畦道山道
人の歩くところはどんなとこでも
ウラジミール・ズレリンコフ
はそうしてモスクワまで来た二十六歳
服はボロボロ、目は真っ赤
だから首都いちばんのデパートで
いちばん大きな虫めがねを買い
ずれを探して歩くのだ
公園病院公営住宅、広場に市場、駅役場
公をためするところはどこにでも
ウラジミール・ズレリンコフ
はそうして黒海まで出た四十歳
肌はボロボロ、目が見えない
モスクワで買った虫めがねを杖に
ずれを探して歩いている
喜び悲しみ憤り、あこがれ寂しさ愛の夢
誰もが抱いてずれ行くものを
ウラジミール・ズレリンコフ
はさまよう影のようで、もう何歳?
体はボロボロ、すれて曇った虫めがね
ずれを容れない人々の中を今日も
人とのずれを容れられずに今日も
たった一人でずっと行く
誰もがずれているのを見ないまま
ウラジミール・ズレリンコフ
はバナナの皮で滑りつづける
陽炎のよう
はトマトの唄を歌いつづける
流民のよう
はりんごの中を尋ねつづける
蟻んこのよう


自由詩 ウラジミール・ズレリンコフ Copyright salco 2011-12-08 22:49:41
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