すべてのおすすめ
夜、駐車場で、コアントロー、コアントロー、と男が呟いていた。絞めつくような夜気に当てられたのだろうか、もしくは酒気か、三方を囲むビルディングは夜の店であったから酒に呑まれた人間であっても珍しくはなか ....
点は、よく見れば丸であった。角度を変え見ても丸は丸だったから、実は球に違いなかった。この詐欺師め。
完全な球体がありまして、その内側は継ぎ目も傷もない鏡張りであります。もちろん光がありません ....
黒というよりかは藍色の夜空を羽虫が通過した。深夜のコンビニエンスストアー。壁面ガラスには黒い点が、わさわさしている。ため息をつきながら、私はキンチョールの煙をその点々に振りかけていく、そうして落ちて ....
河川をまたぎ、田んぼを抜くように鉄塔の並ぶ、その先には落陽。送電線に断ち切られた風、その名残がマリンスノーのように降り積もる。
十五で姉やは嫁に行き。橋げたに腰かけ、口ずさむ童謡の一節の続く歌詞 ....
ぽこぽこ。と気泡が浮いていく雨の日の窓拭き。はいつまでも終わらない雑巾がけに苛々して爪先で突いたガラス。に途端現れた大きな目玉に窓拭きは睨まれ。窒息。するかわりに、するする。と咽元につっかえた釣り糸 ....
カーテンレールを外れた布が
窓枠で首を吊っている
身動きもしない
六畳に寝かされた
汗ばんだシーツの皺
墜落した蚊
赤い斑点
タールに濡れた壁
照り返し象牙色
のなかに陰 ....