すべてのおすすめ
あらいぐまは
ひとりぼっちで北をめざしていました
背中のリュックサックには
リンゴがふたつと
はんぶん食べかけのバナナ
角砂糖が三個
角砂糖は四個ありましたが
波打ち際で洗ったら ....
いまからおれは
ナスのことを話す
乳白色のレジ袋の中
群れをなすナス
おれはナスに仇なす者
包丁の鈍い光
ナスのヘタ切り離す
輪切り
乱切り
半月切り
水にさらす
もはや ....
おさなごも仔犬も猫もみな眠る
夜明けまえのしずけさのなか
辞書にのっていないことばで
この世界に祝福をあたえる
冷蔵庫の扉をひらくと
星のない夜の焚火みたいに
ささやかな光がキッチンに ....
こないだ
代官山のこじゃれた居酒屋で
イギリスの旅行記を出版したっていう
色白の女の子と飲んでてん
最初の四杯は生ビールで
五杯目からはホッピー
女の子の腕が
透きとおるみたいに ....
五月の地表を離陸したこいのぼりたちは
太陽から吹いてくる風を上手い具合に活かして
素晴らしいスピードで重力圏を離脱した
それはこいのぼりたちにとって
反乱であり革命であった
こいのぼ ....
朝の
アスファルトの冷たさの上に
巣から落ちた小鳥が震えている
拾い上げて
掌の中で
戸惑う様を見つめる
鳥が
一羽の鳥が
号泣しながら
地平線の向こうに飛んでゆく
....
無からすべてが始まったというのは真っ赤な嘘で
始まりなんてそもそもなかったのだろう
すべては元々そこにあったに違いない
ただそれではあまりにもだらしがなく
物語の語り手としては都合が悪いので
....
にんじんの形をした雲が
夕焼け空をロケットのように吹っ飛んでいく
月面では青ざめたウサギどもが
手の届かないにんじんに地団太を踏んでいる
揺れる
揺れる
揺れる
振動が足元から背 ....
どうでもいいような昔のことを
おおげさに懐かしがったり
にぎやかに笑いあったりしながら
おれたちは川べりの細い道を
ただぶらぶらと歩いていた
真冬の太陽は
弱々しいけれどやさしく
そして ....
テレビの中では
若手のお笑い芸人どもが
必死になって目立とうとして
大げさなリアクションを
次から次へと連発している
生放送なんだし
いっそのこと
そこで死んだりなんかしたら
もの ....
昨日の夜はカレーを作って
玉ねぎをとてもたくさんみじん切りにしたから
左手が玉ねぎくさいんだ
この玉ねぎくさい左手で
きみの頬にやさしく触れてみたい
この玉ねぎくさい左手で
きみの ....
阿部薫のように生きなければ、
阿部薫のような表現はできないのだろうか。
阿部薫のサックスのような詩を書くには、
阿部薫のように生きなければならないのだろうか。
ぼくはたぶん、阿部薫のよ ....
戦争反対!
戦争反対!
そうやって
叫びながら
やりたい
そう
やっぱ
酒呑みながら
やりたい
何もかも脱ぎ捨てて
ヤバイかも揺れてて
行進する
否
更新する
今
戦争に ....
#01
だれかが しんでしまった日を
なぜ 命日 というのでしょうか
きのうは だれかの命日で
たぶん きょうも だれかの命日で
そして あしたもまた だれかの命日です
....
ポチが走ってくる
ポチが尻尾を振りながら走ってくる
ポチが全速力で尻尾を振りながら走ってくる
ポチがよだれを垂らしながら全速力で尻尾を振りながら走ってくる
ポチが乳母車を弾き飛 ....
銀のスプーンから
舌の上に
滑るように
ダイブ
一瞬で
体温と同じになって
溶ける
その瞬間
犬の濡れた鼻が
ふくらはぎに触れて
目が覚めた
今夜は
遠くまで飛べる
そんな予 ....
ブギウギゆうたら
笠置シズ子しか思い浮かばへん
なにはなくとも 買い物ブギ
アレが白眉や サイコーや
ホンマもんのブギやらブギウギやらいうのは
なんやよう知らんけど
アメリカの黒人の人らが ....
プラネタリウムの暗闇に
目が慣れるまでの
ほんのわずかな時間
きみのからだの
いちばん柔らかなところに
そっと指を這わせてみたい
こっちを見るな北極星
少しだけ目を閉じていろ
....
午後6時
とある郊外の
マンション群の外れにある
ハンバーガーショップ
窓際の席に座って
冷めたフライドポテトをかじりながら
手をつないで信号待ちしている
小さな兄弟の後姿を眺めていた
....
あたらしい神様が来るまでは
原価計算や伝票処理をするふりして
午前中の時間をつぶして
昼休みに会社の近所のコンビニに行ったら
あたらしい神様が
少年ジャンプを立ち読みしてた
午後になっ ....
明日の朝まだ日が昇る前に
わたしのアパートまで
迎えに来てください
最新型のスポーツカーで
あの角をゆっくりと曲がって
わたしのアパートの前で
静かにエンジンを切ったら
わたしは小さなバ ....
<上面>
SevenStars
<左側面> <正面> <右側面>
SevenStars ....
ワックスで固めたヘアスタイル
オマエのイカシた頭の周りで
馬と鹿がデッドヒートしてるよ
見えてないのはオマエだけ
今のところ馬が2馬身のリード
加速して加速してどんどん加速して
そのうち馬 ....
アイツは昔
とにかく馬鹿だったんだ
バナナが大好きで
いつでもどこでも
バナナを齧ってた
食べた後のバナナの皮は
大事に持って帰るんだ
で
そうやって集めたバナナの皮を
クロゼットに ....
終わりの時には
しっかりと眼を開けていたい
そこに見えるすべてを
記憶に焼き付けて行きたいから
おとといの午後
娘と二人で近所のスーパーに行って
お菓子売り場でかれこれ30分近く
ハ ....
コップ一杯の冷たい水
そんなささやかな願いさえ
叶わないまま
死んでいくこどもがいる星
きっと百万年前も今も
あんまり変わってないんだよ
この星は
せめて
冷たい雨が降って
その唇に ....
「缶ビール飲みながら
つけっぱなしの深夜番組を
BGM代わりに読む
免疫学入門」
「ねぇ読んで
読んでほしいの
あなたに
免疫学入門」
「病院のベッドで
吐いて ....
浅い眠りから目覚めると
滑走路で
ビデオデッキは燃えていて
ビデオテープの挿入口から
火炎放射器みたいに炎を噴き出している
燃えるビデオデッキ
燃え上がるビデオデッキ
こんなにカッコいい ....
捨てられて歩く午後
日陰のない歩道には
誰かが乗り捨てた自転車が
撃ち殺された牡鹿のように
無残に横たわっていて
捨てられたおれと
捨てられた自転車を結ぶ
透明な線の上を
巧みに跨いで ....
アンタが好きだ
沈丁花の匂いの帰り道で
キャラメルの空き箱拾って
情けない顔して帰ってくる
アンタが好きだ
ウルフカットの茶色い毛先
退屈そうに指先で玩ぶ
アンタが好きだ
色エンピツい ....
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