雨の日 −窓際にて−
あやさめ

雑音らしい特徴を失ってとめどもなく流れていく
居心地の悪さだけを蹴飛ばしたら
あの風船は中身が抜けていくまで空に降り続ける
そんな雨の中で ボールだけ見えなくなる

てんでばらばらの行き先を目指して歩く人たちの
傘の模様とその回転と角度が同じなので
小さく笑ってみて角砂糖をばら撒く今日も
眺めだけはたった数メートル上でよかったのだから

あの  だけが僕の目の前で踊るその嬉しさと哀しさ
それはきっと他の人には見えなかったし
誰の言葉としても伝えられなかった


彼と彼女はそれぞれ違う建物の屋上を見上げて
何事もなかった昨日を勝手に振り返り
そうやってこの縦長の空は作られていった
──とある人が語り継いだ

誰もが  を知らないことはどこにでもある事象
そんな気違いじみた風景を許容してしまう大ホールを抱え
ただ黙々と歩くだけの祭りが今年もやってくるだろう

向こうに見える山々の向こうがまた山だという幻想
その冬の冷たさはそのまま雨に打たれた泣き声と叫び
そんな昔のことはもう忘れていいと思う……のだが

その風景というのは記憶だけのものだから
僕は  を名付けられないこの息苦しさを捨てて
今日も地上三階のコーヒーショップで昼の時間を迎える

どこを見上げても白から黒への移行の一日
雑音が全ての言葉を流してしまうそんな歩道で
衝突することもなく方々に流れていくのは 水ではなく

  はもう誰にも届かないような昨日の空気のようで
明日もそのまま街に溶けていくように見えるだけ


自由詩 雨の日 −窓際にて− Copyright あやさめ 2004-01-12 23:38:45
notebook Home 戻る