雨の日 −窓際にて−
あやさめ
雑音らしい特徴を失ってとめどもなく流れていく
居心地の悪さだけを蹴飛ばしたら
あの風船は中身が抜けていくまで空に降り続ける
そんな雨の中で ボールだけ見えなくなる
てんでばらばらの行き先を目指して歩く人たちの
傘の模様とその回転と角度が同じなので
小さく笑ってみて角砂糖をばら撒く今日も
眺めだけはたった数メートル上でよかったのだから
あの だけが僕の目の前で踊るその嬉しさと哀しさ
それはきっと他の人には見えなかったし
誰の言葉としても伝えられなかった
彼と彼女はそれぞれ違う建物の屋上を見上げて
何事もなかった昨日を勝手に振り返り
そうやってこの縦長の空は作られていった
──とある人が語り継いだ
誰もが を知らないことはどこにでもある事象
そんな気違いじみた風景を許容してしまう大ホールを抱え
ただ黙々と歩くだけの祭りが今年もやってくるだろう
向こうに見える山々の向こうがまた山だという幻想
その冬の冷たさはそのまま雨に打たれた泣き声と叫び
そんな昔のことはもう忘れていいと思う……のだが
その風景というのは記憶だけのものだから
僕は を名付けられないこの息苦しさを捨てて
今日も地上三階のコーヒーショップで昼の時間を迎える
どこを見上げても白から黒への移行の一日
雑音が全ての言葉を流してしまうそんな歩道で
衝突することもなく方々に流れていくのは 水ではなく
はもう誰にも届かないような昨日の空気のようで
明日もそのまま街に溶けていくように見えるだけ