バスが終点に近づくと
乗客はわたしたち家族以外に
誰一人いなかった
息子が車内をみまわして
どうしてみんな座らないの、と
終点に着くまで
そんな不思議なことを
言い続けていた

 ....
一。

 トカゲの日には皮を被る。皮は前の晩から窓際に吊し風を通し、皺を伸ばしておく。ただの革ならまだしもこの皮は生きた皮なので、扱いにはいつも神経を使う。一度ヒト ....
オハヨウが
晴れやかに言えてますか

アリガトウが
滑らかに言えてますか

笑い方が
相変わらず下手ですね

奥歯が
痛いのかと思いました

コンニチワが
軽やかに言えて ....
水玉模様の細い首輪を嵌めた
羊みたいな純白の犬を従えて
リードを手に黒縁のレイバンが座る、
ゆらゆらと木漏れ日の蠢くベンチ

――お姉ちゃん、犬が好きか?

ああ、こいつビンゴっていう名 ....
 終わり

やがて
空が蒸発する

  僕は無機質になる


やがて
風が風化する

  僕の最後の灯し火を消す

終わりの時は
最初から始まっている

  僕は知らな ....
地球の地軸と同じ傾きで
ターンしよう

左手でインド洋を
撫でて

右手で北極熊を
持ち上げて

焼けた砂漠を裸足で歩くように
ステップしよう

左足で死海を
またいで
 ....
梢にお月さまがとまってる

お月さまだって
たまには
休みたいのよ
{引用=死ぬ気になれば何でもできる…

それは瀬戸際に立たされたことの無い人間の言葉}


新地に棲んでいた頃の母を良く知っているといって
狐目の男が自宅を訪れることがあった

その度 ....
裏切り者の
地平線は
沈む

沈んだ
地平線から
朝が現れる

目覚めた時から
裏切り者は
傾く

傾いた
日常茶飯に
安住の平野はない

転げ回っているのか
追 ....
堅い梢から
白い気泡がぷつぷつと生まれて
二月の空に立ちのぼる

それは
君の唇からもれる
小さな温度に似ていて
僕の尾ひれを
とくん、と春へかたむける

ふらりと現れて
はな先 ....
          090205




祐乗、光乗、宗乗、三作の三所物
カラマンダーのかけ声に
驚いた振りをすると
乾いた金明竹が笑いかけるので
知らない振りをして
姿勢を正す
 ....
冬は去っていった
私の行く道に
もうあの冷たさは無いだろう

そうだ
別れの言葉はそこには置いていかない
亡国に花束はいらない

あの果樹園も、植物園ももうそこには無い
南から吹く風 ....
なつかしい声がする
し、と、す、のあいだ
あなたが人差し指で押さえた
かすかなつぶやきのように


わたしの中で目覚める
し、と、す、のあいだ
声にならない言葉があふれて
あとからあ ....
不意に、もうひとり帰ってくる気がする


母は家にいて
私も家にいて
弟が帰ってきて
もうひとり弟が帰ってきて
それから父親が帰ってきて


机に張り付いて私は耳を澄ま ....
お茶を挽く

この歳になってそんなことばの意味を知る

四畳半にも満たない小さな部屋
気まぐれなエアコンの吐き出す乾いた暖気が
枕元に畳んだ洗いざらしのタオルへ靡く

恋人にしてあげて ....


恋にはあなたが必要だ
あなたは僕を和ませる
愛にはあなたがかかせない
あなたのために僕は苦しむ




あなたがいくつ歳を重ねようと
ぼくはあなたの若い歳しか覚えてい ....
ふたりで羊羹に入ろう
思い立って三軒目のコンビニで見つけた
消しゴムふたつぶんくらいの小さな羊羹を
にゅるっと皿の上に出す

安物でいいのかと聞くと
羊羹ならば構わないと言い
ゼリーでは ....
東から西へ
クリークのような商店街の上を
滑空する

コンビニの角を南に曲って
コソコソとパチンコ屋へ向かう
八百屋の若旦那を左目で見ながら

西から北へ
生易しい北風を切り裂く ....
机の上に東京タワーの置きものがある
上部のとがった部分を
指先でつまんで
ひょいと持ちあげ
底の部分を見ると鉛筆削りになっている
小学校のとき母に買ってもらったものだ

東京タワーは大き ....
冬雨吟

誰知凍蝶愁
誰解盲猫夢
夜雨両心寒
酔吟同苦痛


冬の雨に吟ず

誰が知る凍蝶の愁ひ
誰が解く盲猫の夢
夜雨 両心寒からん
酔吟 苦痛を同じうす


冬の雨 ....
わたしは川になりたい
草原をうるおし、森をいつくしみ
たくさんの魚が群れ泳ぐ
川になりたい
やがて大きな海にそそぐ川に

わたしは、はるか大地のおく
山の斜面にねむる池。夜ごと
星が  ....
姑獲鳥 (うぶめ)


抱いてください 父を知らない不憫な子ですが
抱いてくれたら あなたに幸運が訪れます
身体が重いのは あなたの力を試すため
息が冷たいのは あなたの情を試すため
 ....
 
詩の一行一行に
花を咲かせたような
あの桜並木を歩く

僕には
名前を持たない
姉がいた

姉は木の行間をくぐり
幹の陰に隠れたのかと思うと
花咲き乱れる
か細い枝に立って ....
ふゆの匂いがする

ほわり、
冬のお喋りをしよう

たくさんのきらきらするものが
眠たそうに待っているのは、きみの春
あの頃の小さな息吹が
ほわり、と手さぐりしながら
追いかけてくる ....
絡新婦 (じょろうぐも)


ちょっと小首をかしげながらの上目遣い
さりげなく腕を組みながらのEカップ
たっそれだけで男の口元と財布は
情けないくらい緩んでくれるの
でも本当に欲 ....
殺風景なガラス張りの待合室に覚える
独特な曖昧さを避けてみるのも一興と敢えて
乾いた風の吹き抜けるホームに佇んでみた

乗ろうとして乗らなかった準特急の走り去った先には
見覚えのある古い建物 ....
にゃーン

零下15度の夜中に捨てられた猫

図書館員に拾われ
図書館で育てられた一匹の雄猫

にゃーン

鳴いているだけなのに

苛立ってばかりいた男の人が笑った
自閉症 ....
一反木綿


ブランドって何でしょう
トレンドって何でしょう
ステータスって何でしょう
セレブリティって何でしょう
誰かの視線につながれた風船になるよりも
飾り羽が多すぎて飛べ ....
 
子供の頃の、僕と父の写真を指差して、四歳の息子が、
「お父さんがふたりいる」と笑ってる。
それから、今の僕を指差して「お父さんが、もうひとりいる」と笑ってる。
今度は少し、不思議そうな顔を ....
こころ秘かにそう呼んでいた

――温泉宿ではなく海辺の一軒家を

灰褐色をした雑木林と
露出した山肌が囲み、
いつからか戻らなくなった主の代わりに
月に一度か二度、ぶらり現れては泊まって ....
未有花さんのおすすめリスト(6100)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
light_the_light- 小川 葉自由詩6*09-2-15
「_トカゲの日。_」- PULL.自由詩7*09-2-11
レッスン- nonya自由詩11*09-2-11
温み- atsuchan69自由詩11*09-2-10
終わり- 乱太郎自由詩15*09-2-10
ダンス- nonya自由詩10*09-2-9
休憩- 風音携帯写真+ ...1509-2-9
新地のひと- 恋月 ぴ ...自由詩27*09-2-8
逃亡者- nonya自由詩8*09-2-7
置き文- 佐野権太自由詩26*09-2-6
葉女- あおば自由詩7*09-2-5
去る冬- 白昼夢自由詩1*09-2-5
雪に踊る- 石瀬琳々自由詩8*09-2-4
もうひとり帰ってくる気がする- 因子自由詩20*09-2-2
飾り窓のひと- 恋月 ぴ ...自由詩17*09-2-1
あなた- 乱太郎自由詩20*09-2-1
羊羹- 自由詩809-2-1
鳥瞰図- nonya自由詩23+*09-1-31
東京タワー- 沢村 俊 ...自由詩5*09-1-31
漢詩_冬雨吟- 三州生桑伝統定型各 ...509-1-29
わたしは川になりたい- 寅午自由詩209-1-28
百鬼夜行詩_<11>- nonya自由詩6*09-1-28
桜並木の詩- 小川 葉自由詩709-1-27
きらきら- さくら自由詩18*09-1-26
百鬼夜行詩_<10>- nonya自由詩3*09-1-26
次第のひと- 恋月 ぴ ...自由詩28*09-1-25
デューイ- 乱太郎自由詩14*09-1-25
百鬼夜行詩_<9>- nonya自由詩15*09-1-24
今、ここにいる。- 小川 葉自由詩709-1-24
人妻温泉旅館- atsuchan69自由詩13*09-1-23

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