夜の天幕はマグネット
キミが蹴ったつまらない石ころを
引き寄せて
星にすりかえる
朝が来るまで
せめて忘れたふりしてる
自分が永遠に満たされることのない
闇であることを
さみし ....
ヒツジが眠っている
先を越されてしまったので
きみはなかなか眠れない
ヒツジの夢を追いかける
かすかに指のさきが温かい
温もりはだんだん体じゅうにひろがり
いつもの草の道に迷いこむ ....
外山先生はまた、立ち上がるとホワイトボードのまえでしばらく考えてから、青い字で、
わたしはここにいます。
……と、書いたの。
「たった、一行ですが、これでじゅうぶんだと思います ....
紅白歌合戦に誰がでるのかとテレビは繰り返し
コタツに老婆がひとり
印刷された年賀状に「今年も健康でありますように」と、娘に書き添えた
月はあなたのように
影をしたがえて夜を照らす
夜はあなたのように昼をしたがえて
星のもとに戻す
愛は醸成された悲しみの塊で
いつもその貌を変える
僕の道程は幅広く豊かで優しい表 ....
どうしても言い出せずに
降り積もってしまった言葉の灰を
掻き出す術もないまま
人気も疎らな遊歩道をそぞろ歩く
いつまでも辿り着けずに
色を失くした街を漂う吐息の白を
飲み込む術もな ....
(ようやく、外山先生の絵本教室が始まった……)
鈴木さんの絵はおそろしくヘタだった。
画用紙だと思った紙はよくみると、カレンダーの裏紙で、そこにクレヨンと水彩絵の具でわけのわからな ....
自分を慰める歌も
持ち合わせていないので
枕の上に
生贄のように
投げ出した腕
手のひらに
種が芽吹いて
止める間もなく
こぼれる
花
花
紫苑
私は後悔して ....
お友だちあつめて内閣つくるなよ
パパくれた国という名のおもちゃ箱
棚ぼたを民意と言い換えほくそ笑む
某首相尖閣諸島に島流し
変わり身のオセロを凌ぐ鮮やかさ
日銀を悪魔に渡 ....
森の中に『くまカフェ』がある。とんがり屋根の丸太小屋。夏にはハーブが咲き乱れた庭も、今ではすっかり刈り取られて、来年の春を待っている。
店主のシャルロットが開店準備を終えて、窓のカーテンを開 ....
その金曜日の午後
いつものように黄色いスクールバスから降りてきた
娘達の笑顔を確認してから
思い切り抱き締める
「ねえ、ねえ、今日学校でこれを描いたんだよ」
私の腕を振り切る勢いで バックパ ....
きょうは月よう日。絵本教室の日だった。
夏休みも、もうすぐおわる。あんなにうるさく鳴いていた蝉も、けさはとても静かだった。おかあさんは朝からいそがしく洗濯していたから、わたしも手伝うことにした。 ....
よく通る口笛ひとつ風道に草の穂ゆれるいつか旅する日
風あかるい野は海の底くちづける花のあわさに惑う光を
{ルビ過去=すぎゆき}はさびしさ抱きけれどただ慰めるうた風と聞こえて
....
だれかが来たのかもしれない。わたしはイチローのあとを追いかけて、玄関のドアを開けてみたけれどだれもいなかった。イチローは玄関の前のしろい郵便ポストのうえに、すばやく飛び乗ると、ほそくて長いしっぽをま ....
おそらく僕の知らない
無数のははがいたのだろうと思う
まあ今も昔も聞いたってこたえないだろうが
母の遺品を整理している
書道用具
浦和のなんとか堂とかいうところで購入した
....
伏せた老犬の
足元に転がった小石に
降り注ぐ
オリオンのきらめき
夕暮れの夢の中で
艶めく毛並みを揺らし
撃ち落とされた雉の
芳しい血の香りを追う
狩りは終わった、と
....
封筒の右端に犬小屋を建てました。
赤いペンキで塗りました。
そこで手紙を書きました。
とても短い鉛筆で。
さいしょに友達の名前を書きました。
つぎに夜のあいさつをしました。
あたらしい ....
詩は傷みです
あなたとわたしの間で
血が流れるように
空白を引き裂いた文字です
詩は苦しみです
あなたとわたしが共に
吐き続けたように
空白に汚れたままに散らかした ....
「あずきー、ねぇ、あずきー。」
おかあさんがわたしを呼んでいる。
わたしはいま、絵本を描いているところだから、おかあさんの用事はなにもできないことを知っているはずなのに……。
ぱた、ぱた、 ....
人気の無い埠頭から望んだ街はただ灯ばかりが無機の光を放ち
まるで人間の営みとは無関係な顔をしているみたいで
かすかな海の匂いを抱いてそれでもふと
人を遠い空間にいざなって行く
僕に ....
カップがソラだとしたら
コーヒーが注がれて
夜が来る
苦い夜がニガテであれば
ひとすじのミルクが注がれる
銀の匙は使わない
やがて白い雲は 時間に溶けてゆく
どこかに月が隠れて ....
悲しんではいけないよ
なんて決まり文句
どこでも拾うことはできるけど
悲しみ
そこいらに落ちているもんじゃない
背後から黙ってやってきて
いきなりけられるようなもの
泣いてはいけ ....
記憶はなにを食べて生きながらえているのだろう
指先から冷えていくのを彼女はまだ気づいていない
埃を吸ったあとの掃除機をそっと抱きしめる
モーターの余熱が伝わって やっと明日につながる ....
フレドリック・ブラウンの死にいたる火星人の扉という創元社の文庫本
推理小説だが
彼には火星人ゴーホームという超絶な作品もある
火星年代記というレイ・ブラッドベリの名作
火星の赤い砂はア ....
詰め将棋苦手な僕の歩兵にはロケットランチャー持たせています
も吉と歩く
何もない冬の午後
も吉と歩く
はたちの頃 一年ほど日記をつけた
何も残せず ただ消えてゆく日々が
とてもこわかった
時間はたっぷりあったのに
いつもの散歩道
....
時間を掴み取って宝箱に仕舞っておけるのなら
僕は、初めて君と会ったあの古ぼけた体育館の片隅で
君に卓球をやろうと声を掛け、ガムをあげた
あの時間をそのまま宝箱に入れよう。
あの時の気分あの時の ....
オラオラオラァ!
モダンで薄っぺらな靴なんて目じゃねぇ
ちびて薄汚れちゃぁいるが、これが歩み続けたおいらの勲章でぇ
鳥が啼いてゆく
いつか、いつか、いつか、
赤い夕陽がしたたり落ちて
心を焦がす イタイホドニ
{引用=近づけばまた遠ざかり
遠ざかるとまた近づく
蜃気楼 日々は}
そしてまた ....
秋深しとっとと黒猫歩きけり
紅葉舞う掌の中のぞくはてな猫
落ち葉踏み尻尾を立てて猫二匹
蛙
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