海へ行こう
冬の、風の穏やかな日に
波の音がすべてを包み
古い貝殻からは異国の歌が聞こえる
覗き込んだ水底には静寂とざわめく生命が
見上げた空はどこまでも突き抜けて青く
足跡は消え ....
うつむいた君のまなざし
梅雨空の雲より重く
今日も紫
かなしいから
空は見ないの
あの深みに沈んでいけたら と願うけれど
かしこいから
夢は見ないの
重力に逆らっても必ず落ちて ....
縁日で
祖母が買ってくれた
空色の風船が
手のひらを
するりと抜けて
空高く舞い上がっていった
東の空へ流れていく
風ははるか上空
西から東へ吹いている
お日様と ....
向う岸めがけて石を投げる
不様なフォームで
何度も 何度も
自分の何処かにへばりついた
決して懐かしくない想いを
危うげな放物線に託して
思いっきり放り出す
届いたことはない ....
わたしの、隙だらけの皮膚を突き抜けて
メタセコイアが生えている
臓器はいつしか記憶を失くし
葉脈を血液だけがめぐりつづけいる
あまりにむごい手つきで
世界が わたしを愛してや ....
父が亡くなっても泣かなかったくせして
MJの死にはわんわんと泣いた
そんなものだよね
近くて遠い悲しみと
遠くても近くに感じられる悲しみ
人生のアルバムから今まで生きてきた記録が ....
みんな頭の上に
金魚鉢を持っていて
歩けば中の水が
ちゃぷんちゃぷん
揺れている
ときどき
金魚が入っている人がいると
みんなが振り返る
水が濁って
少ない人がいた時は
....
花は花で
咲き競い
至福の種子を枝に結ぶ
鳥は鳥で
鳴き集い
矢印となって季節を指し示す
川は川で
せめぎ合い
未だ見ぬ海へと殺到する
雲は雲で
逃げ惑い
苦し紛れに ....
ころころ転がる
ボールのような毎日を
思うように転がせなくて
焦ってしまったり
怒ってしまったり
ぶつけて傷ついたり
気が抜けて凹んだり
それでもまた
弾みをつけて出かける ....
海面を泳ぐ光の青を捕まえようとして手を伸ばしてみる
伸ばしても
伸ばしても
届かない両手をばたつかせて
それでも懸命にもがく君の
溺れそうな
沈みそうな平泳ぎが僕は好きなのさ
夏はもう、
すぐ ....
*
暮れ急ぐ空の半分は明日の為のもので
残りの半分が今日と昨日に残した物を映しているのだと、
お互いに主張して譲らない青と赤が、譲り合い一つに溶け合ったなら紫色を生むのだと、天の切れ間には黄昏 ....
世界は円で完結する
民族も
思想も
姿かたちも
些細な異差の
凝縮された拡大
あなたのどこかが
もしも欠けてしまったとしたら
誰かと
手をつなぐとよいのです
....
シリアスな詩を書いてはいけない
空中に散種する植物の
いい加減さで哀しみを
伝播させてはいけない
難解な詩を書いてはいけない
ペダントリで行間を埋め尽くし
注釈が付くのを待つような
....
かたく凍った夢を砕いて
画用紙に宇宙を描いて暴れだす
果てのない星々の海は瞬き、
チビけた鉛筆が一本
煌く銀河を縦横無断に奔る
つめたく凍った言葉を融かして
原稿用紙に文字を紡いで ....
キラキラしない雫が
後頭部の歪な曲線を
未練がましく伝い落ちて
塩辛い影を作っている
無頼な陽射しと
馴れ馴れしい湿気に
言い返す言葉もなく
帰り道の上をボトボト歩く
いく ....
わたしは
待っているのです
朝がたに
たんぽぽが咲いているでしょう
わたしは
聞いていたいのです
橋の向こうから
....
*
昼に停まった季節の便りは
いつぞやの名残を含んだセピア色の背景に、日向に生まれ落ちたパステルの淡い配色と、幼子の視線のラフなスケッチとなって
単色に描かれていた風景画を小さな額縁の中から取 ....
*
抽象をなぞる指先が、無色透明な肌に存在だけを記して
昨日の空に溶けて行く、輪廻を正しく辿って行けば
全ての人の記憶は一つになると
ついさっき、知りました。
だから、君の香りはどこか懐かしいのだ ....
傘はどうしたの?
由紀さんに言われはじめて気づいた
昨日買ったばかりの雨傘
ガーリーとは思いつつも華やかなレースに一目惚れしたんだよね
教室に置き忘れたのじゃ無いだけは確かなんだけど
....
人でなし
森が忙しく葉を揺らす
カッコウが巣の上で木々を見渡していた
小石のような小鳥の卵を
一つ二つと落としていくのだ
真ん中に一回り大きな卵を産むと
愛しむこともなく ....
くれない匂う 露を宿して
静かに座っている
庭の王が
蝶に語った
――そろそろだから 誰かに話をしたかった
二十日目の夢のことば
咲き定まり
咲き乱れ
さよなら と 無 ....
悲哀の音色と光の乱舞が
互いを完全に打ち消しあって
零れ落ちた沈黙に
回転木馬の夜がくる
めぐり、とまる
とまり、めぐる
繰り返されてきた物語はその結末 ....
嘘を3枚出して
幸福を200g買って
涙のおつりを受け取った
涙のおつりを出して
愛を2個買って
嘘のレシートを捻り潰した
綺麗事を繰り出して
涙のおつりを買おうとしたら
....
夢が 微睡んでいる
緑の葉陰ものうく揺れる
やわらかな午後を
その瞼を 胸もとを つまさきを
うすい風が吹きすぎる
夢は そうして 自らを
夢みている あえかに甘やかに
その夢の ....
{引用=
憂鬱でふくらんだポニーテール
不満でとんがったハイヒール
足がつっておぼれかけたクロール
干したまま雨にぬれたキャミソール
....
無数の雨粒に包囲された
とある休日の午後
僕は僕の形をした部屋を
ひきずっての遊歩道
何度も傘をノックするのは
とあるお節介な日常
僕はミエミエの居留守を使って
知らんぷりの遊歩 ....
ひだまり食べてほっぺた膨らまし
オイラも妊娠5ヶ月になったお腹をぽんぽこぽん
メタボメタボとお騒がせも
そよぐ風が気にするわけでもなし
河川敷は川の流れに追いつけ追い越せと
ジョッギング ....
燃えながら灰のなかから生まれる鳥
その目にうつる火祭りの夜
名前なき舟ならばただ漂うか
海に溺れて星があかるい
不確かさそれのみ満ちる雨のごと
うすい ....
ナスがなった
まだ小さい
そっと撫でた
冷たかった
夏の音
風が聞こえる
雨は降る
土は湿り 葉は大きく広がる
ナスがなる
まだ小さい
重そうに 頭は ....
ある赤ちゃんは公園で
暖かい風に吹かれながら
ベビーカーから見える青い空を見上げる
ある幼稚園児は
ジャングルジムのてっぺんから
人より少し高い所から
雲がゆっくり ....
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