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ぼくらの町に
ヨシキリがかえってきた
一羽は川沿いの桜の木に
もう一羽は中州の葦のしげみでなきかわし
恋の歌をうたっていた
そんなとき、子どもたちがドヤドヤやってきて
このちょっと変わ ....
あの日、かれらはこの線路のうえを
電車に乗って去っていった
あの日から線路は
瓦礫におおわれ、寸断したまま
川をわたった橋梁はながされ、レールは宙にういてねじ曲がり
枕木はあとかたもなくきえ ....
きょう、季節の帳簿は冬に逆もどり
北風がふき 雪が
山のほうからちらちら飛んできて
冬のいかつい手が コツコツと
貯めてきた春の貯金を
ごっそり帳簿からかっさらった
開きはじめた菜の花も ....
ぼくの命のともし火が消えるとき
ぼくはぼくの身体を南極の雪と氷の世界にうずめたい
あの長たらしい弔いの儀式に
窮屈な棺のなかでつきあわされるなんて、まっぴら
あげくには数千度の炎にやかれるなん ....
わたしは川になりたい
草原をうるおし、森をいつくしみ
たくさんの魚が群れ泳ぐ
川になりたい
やがて大きな海にそそぐ川に
わたしは、はるか大地のおく
山の斜面にねむる池。夜ごと
星が ....
風の強い日
クモの脳裏に観念が降りた日、
クモは木の葉のうえで
円を描くおまじないのあと
糸をのばし、糸を風にのせ
空を高く上ってゆく。
クモは流れる雲のうえで
海をわたり、山脈をこ ....
ぼくの家の庭には古い井戸がある。むかしは豊かな水が湧き出し、たまには幽霊というオツなものも出たらしいけど、いまではさっぱり。水も出ない。そんな井戸がなぜ残っているのかというと、曾曾おばあちゃんのありが ....
「おかあさん、そとがさわがしいね。
「冬と春がおすもうをとっているのよ。
「ふーん、どっちがつよいの?
「そうね。
まだ寒いから、冬のおすもうさんかな。
でも、さいごは冬のおすもうさんは ....
あれは土星です
あれは金星です
あれは三日月。
東の空、地平線の近くに
水星が太陽に寄りそっています、
地平線の下にしぶる太陽を手招きしています。
太陽が顔を出すまえの
冬の朝の ....