港
港には
船ばかりか
多くの鳥が
入港してゐる
夏蝶
夏蝶は
すーと
日の果てへ
吸ひ取られていつた
....
唄声
曙光が
窓ガラスを割つて
侵入した
籠の鳥が
砕け散つたガラスを
呑込む
ガラスは
小鳥の胃の中で
金平糖になつて溶けていき
それからといふもの
....
雨で頭も体も重いから
今日は一日眠って過ごそう
ピンクのタオルケットを
頭から全身被ったら
まるでピンク色のさなぎの様
中から見る色もピンク一色
....
地上へ向かう木の葉が見せる
一瞬の華やかさ
揺らぎ
心の根幹は
頑丈にできているけれど
心の枝先は
いつも何かにあおられている
言葉が
木の葉のように舞い落 ....
コンクリートだらけのこの町に
ポエマーがやってくる
その名は
スーパーポエマー
マンションだらけのこの町に
スーパーポエマーがやってくる
聞くところによると
早打ちらしい
キー ....
何もできなかった
昨日の自分が悔しくて
今日も努力はしたけれど
結局は昨日と同じまま
何もできなかった
昨日の自分が悲しくて
今日も必死になったけれど
結局は昨日と変わらない
....
花の枝
夕景の中
もの思ひに沈んで
俯き歩いて来ると
花の枝が
通せん坊した
朝出掛けるときは
なかつた
―花の枝―
それが夕方
出現してゐる
天使 ....
夏の夜に
いくつもの太陽を揺らすひまわり達
仕事帰りの疲れた男に
わさ わさ わさ わさ
大きい緑の手のひらを振る
日々の職場では
密かな善意を誤解され
....
ぽえむの国の
ぽえむの村に
ぽえむ君が作る
たくさんのぽえむ
いつでも作りたて
春はぽかぽか
夏はぎらぎら
秋はぽくぽく
冬はほかほか
ぽえむ君の家には
ぽえむを仕舞う場所 ....
流れる秋に
ススキが揺れる
過ぎ去るものは
夕焼けの風
気づけば空に
真っ赤なトンボ
心吸われる
我が想い
染めゆく秋に
紅葉が騒ぐ
置き去るものは
夕焼けの風
気づけば道 ....
?.
あなたを
あなたのすてきなところを
一日
大切にする
あなたを
あなたの汚れたところを
裏返して
日に透かしてみると
おかしな影ができるから
その影に指で ....
夜毎に月の灯りが街を照らすと
君の世界への入り口を探す
僕の世界は六角で
君の世界は八角なので
どうもうまく重なれない
僕らは半透明のカーテンで区切られた部屋の両側で
お互い影絵を ....
あなたは手慰みの指先で
わたしの身体をくるくる回す
言いなりになんかならない
と思ってはみても
あなたにだけは嫌われたくなくて
股関節の痛みをこらえ
アンディオールのポーズを取る
(わた ....
部屋の中で物思いに耽り
外で鳴る虫の音を聞きながら
ふと想うことを書き記し始める
書くそばから
一匹の蝿が
頭の後ろで勢いよく飛び回る
ブンブン
ブンブン ブンブン
ブンブン
....
秋の長夜の晩は、
てのひらサイズの文庫を片手に、
白熱電灯の下、鈴虫達の求婚歌をBGMに
一文字一文字刻み込まれた作者の言葉を読み解きませう。
秋の長夜の晩は、
少しばかりの退屈を御供に ....
朝に
林檎がもがれる
それは
太陽になり
風になり
私のもとへとやって来る
おはよう
ごきげんいかが
と はにかんで
さくりと
歯に当てた
ほのかな酸味
....
雨が上がったその道で
どこからともなく吹いてくる
シャボン玉
次から次へと線となり
弧となり
連なる透明の球
曇った空を照らしながら
やがて溶けてゆく
風に流れるシャボン玉
....
旅先で母親に背負われた赤子から
青梅を貰ってきた
長く握々されて熱くなった梅なんか
欲しくはなかったけれど
どうしてもやるというので貰ってきた
いらなくなったからじゃない
奴らは一番好 ....
夕闇の
あの色が好きです
切なさをひとつぶ
いとおしさを一粒
弄んでは
つぶすたびに
広がってゆく葡萄色
甘いあまいのは
街の匂い
あなたとはぐれた
秋の匂い
五 ....
雨の降る夜の路地裏を
酔っ払いの男は一人
鼻歌交じりに
傘も差さずに歩く
涙色の音符を背後に振り撒いて
雨は降り続き
路上に散らばった音符は濡れて
よろけた男の後ろ姿は ....
人々が漏らす{ルビ溜息=ためいき}で
街の輪郭が{ルビ歪=ゆが}む土曜日の夜
場末の Bar の片隅で
翼の生えたアダムとイブの人形は壁に{ルビ凭=もた}れ
虚ろな瞳で古時計をみつ ....
入道雲の夏をして
暑い{ルビ思い出=おもいで}した後に
夕焼け空の秋をして
心も揺れる紅葉する
冷たい雪の冬をする
寒い{ルビ思い出=おもいで}する前に
赤いトンボの秋をして
心も揺 ....
茜空が僕達を照らしてる
きれいなオレンジ色に映るボールを
投げては受け
受けては投げ
弟と家の前の路地で
夜の帳が降りるまで
キャッチボールをしていた
やがて味 ....
パソコンが
空っぽの箱に見えてしまったら
部屋の明かりを消して
Tom Waits の「GRAPEFRUIT MOON」を流そう
グラスに入れたぶどう酒を{ルビ喉=のど}に流せば
....
「ありがとう」と言われたその瞬間
なぜだろう
口の中に栗が入ってきた
思わずその栗を噛み砕く
栗の味とその匂いが
自分を包み込む
なぜだろう
食べてもいないのに
そういえば ....
いつしか子どもたちは
走り方を忘れていった
いつしか大人たちも
走らせ方を忘れていった
走ることの大切さよりも
走ることの危険さが
叫ばれるようになった
走ることによって
強くなっ ....
懐かしい風の吹くこの丘で
過ぎ去った時間に思いを馳せている
変わってしまったのは自分か
それともこの景色だろうか
冷たい風に吹き飛ばされて
僕は消えてしまいそうだ
....
白紙の紙の上には神は宿っている
どんな色にも
どんな言葉も
その白い世界は受けとってくれるんだ
時には失恋の詩を
時には季節風情を
時には魂の知恵を
書き手を紙と ....
夕暮れていく空の
侵略される白と
紫が混ざり合うように
中途半端なまま心は
形を変え続けて年を重ねる
不意に感じる虚無へのやり場のない焦燥感
孤独への抵抗の微熱が
私の中ではあの ....
カレンダーを一枚めくる度に
当たり前に季節は深くなってゆく
ビルとビルの谷間の廃屋にひとり住む老婆は
知らぬうちに彼方からの者を迎え入れる
表通りでは今日も賑やかな工事が進み
誰も気づかぬう ....
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