目覚めると泣いている
車窓を過ぎる色の落ちた看板
路地裏のひまわり
僕が僕から立ち去ろうとして
ふと吹き込むふるさとがある
立ち枯れた楓の根元にしゃがみこみ
裾を引くふるさと
囲炉裏 ....
満月が
おおきくくちを開けて
新月になる
夜空をひとつ
噛み終えるまで
いくつもの時を食べつくし
それでもなお
夜はおとずれる
無数の星は彼らの目だ
今日もどこかで
....
夜空から吊るされた星たちが
一番白く光り輝く 冬の始まりに
わたしは 一本の細いワイヤーの上を
小熊を抱きかかえて渡っていた
白いネグリジェはバランスをとりながら
ふわりふわりと揺れ ....
町をのぞけば 花のよな
空をあおげば 星のよな
きれいなものが溢れてる
だけど私はつまないし
だけど私は拾わない
そんなにたくさん持ってても
ちゃんとお手入れ出来ないし
歌も聴か ....
もっと
川であれば良かった
素直に
下っていれば良かった
もっと
月であれば良かった
律儀に
満ち欠けしていれば良かった
もっと
波であれば良かった
健気に
寄せては ....
釣りは飽きてしまったようだ
さかながいないからしかたがない
父さんだけが夢中になって
往生際がわるかった
ふりむけば
木のベンチで息子がねむってる
一億年前から
そうしていたよ ....
皆が笑顔で集う
不思議な海の中心で
貝のこころを開いて
歓びを分け合うのも自分
ふいに人と話せなくなり
深海の暗闇で
貝のこころを固く閉じ
独りきりになっているのも自分
....
手首の傷は癒せたとしても
こころの傷は癒せない
ずきずきと痛むこころの古傷は
まるで親知らずの発する悲鳴のようで
嘆いているわけじゃない
こんな季節の溜め息は
寝付けない台所の ....
小鳥は一羽だった
籠にやさしく啼いていた
あの子はお気に入りのデイジーの花飾り
スカートを大きくふくらませ
まわる まわる 歌いながら
笑いながら 泣きながら
きらきらと踊る あれ ....
ねぇきいて
今日の風は黄色だったの
あなたの瞳にはどう映った?
今日の風がささやいた
足元気をつけて
黄色い落ち葉が落ちている
きっと今日の風が塗ったのだろう
足元に佇む ....
階段の上に子供がいる
それはぼくだ
ぼくは階段をのぼる
すると
子供はもういない
階段の下に子供はいる
それもぼくだ
ぼくは階段をおりる
するとまた
子供はいない
かつて誰 ....
{画像=081028104443.jpg}
種の起源を遡る
鯨にあるという地上の記憶のよう
身体の記憶に繋がる原初の記憶
納屋の藁束の上に横たわり
こころを拡げて探り当てる
目を瞑り腰 ....
{引用=副題:狙われた街/狙われない街}
こんな日はめったにないけど
たとえば
なにもかもが真っ赤に染まる絵のような夕焼けの日
空は思いのほかよごれてしまって
あるいは記憶のな ....
からから
からから
糸巻き
運命巻き
繭は糸に 糸は呪縛へと
きつく きつく 縛られた運命の輪
オーロラ姫の紡ぐ先に
針の先が差すみちしるべ
あかいあかい道 ....
夜気に退屈をさらけ出すプラタナスが
細い小枝で編んだ投網で上弦の月を引っかけている
葉陰から木漏れ日のように明かりを点滅させて
モールス信号を送る橙色
きっと月の頬には痕が残るほど
....
皇帝夫人の指輪は 不思議な宝石みたい
疲れを癒やしてくれる 光を放ち続ける
夏は赤く輝いて 冬は青く輝くんだ
是非とも手に入れたいな オイラのモノにしちゃいたい
あの怪盗ルパンも ....
とおく とおく
はなれた街にいる 膝を抱えた少女を迎えに行かねば
夢の中の少女は夕日の沈む部屋にいるだろう
そこでただ独り 膝を抱えているだろう
窓は少しだけ開かれているかもしれない
....
色鮮やかな薄衣をまとった山あいは
戯れて欲しいと無言でせがみ
得も知れぬ愛おしさと
恋の味とは甘さばかりでは無いことを知る
その味わいのほろ苦さよ
古い峠道の傍らで人知れず朽ち果てた祠で ....
いつ見ても
仰向けにひとが寝そべっている
その山のかたちを
いくども夢でなぞった
あれからずっと
山はおだやかに眠っている
なにも変わらなかった
夏のあいだ飼っていたコオロギを
....
もう
ここは冬
になってしまった
日は短くなり
昼からすでに夜の気配がする
けれど迷い人よ
冬のせいではなく
この森はずっと昔から
喪服の切れ端のように暗い
鳥は言う
「さ ....
ひとり遊びしてると
きゅうに孤独を感じることがある
ひとり遊び
という言葉を知らなくても
たしかに僕は孤独だった
夜遅くに
父さんが帰ってくる
忙しくて食べられなかった
と言 ....
冬の立つ前の最後の雨です。
サルビアの花が燃えるように赤くなる。
(巷に雨の降るように)
さびしいさびしい晩秋です。
山ははらはら葉を落とす。
(巷に雨の降るよう ....
日曜日
午前11時
彼
3日前の新聞
細く切り裂いてる
ときどき
思い出したように
朝食の皿
トマト
ブロッコリー
の順で口に運ぶ
最下位のウィンナー
干乾びてる
....
きれいな花は
きみのために咲く
と
胸のボタンをはずして
きみの乳房に愛をささやく
ぼくは天国へゆき
きみも天国へゆく
*
ボタンを押すと
きれいな花が咲く
と
砂漠の少 ....
ひとさし指で手紙を書く
砂のうえに
潮が引くときだけ
ゆるされる
返事が来る
潮が満ちるときだけ
あなたから
光と光の
波にさらわれる
こぼれた文字の
貝殻をひろう
....
叱るつもりが
感情に身を任せ怒っている
自分の醜い姿に気づく
ひとは誰でも
誰かを叱ったり怒ったり出来ないはずなのに
自らの思いを通そうとでもするのか
声を荒げてみたり
ときは手 ....
風の強い日
クモの脳裏に観念が降りた日、
クモは木の葉のうえで
円を描くおまじないのあと
糸をのばし、糸を風にのせ
空を高く上ってゆく。
クモは流れる雲のうえで
海をわたり、山脈をこ ....
月を遠ざけるものを捜して
迷い込んだ森
薄紙で封印された
わたしを引き裂いて
生まれてくるものがある
皮膚がわたしを押さえつけていた
だから、だ
破りとられて流し続ける
温かい ....
浅瀬に繁る葦たちを敏く一望に過ぎ、
彼の地エジプトでの安らかな暮らしを恋う
されど、ああ。すでにサファイアの瞳に囚われたこの身
ただ、鉛色の心に惹かれては哀しみを知り、
涙の雫で翼を濡らしてさ ....
11階の窓を開け放つと
薄荷水のような冷気が部屋を満たした
忘れたいような忘れたくないような
何処かが沁みたからつい遠い目をした
11階のベランダに立つと
雲の戸惑いが見えるような気 ....
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