風は夢を見ている
ゆらゆらと揺れながら
青い空の夢を
気持ちよく描いている
風は夢を見ている
ふらふらと漂いながら
緑の森の夢を
心地よく遊んでいる
風は夢の中で
自分が風に ....
誰かを好きになって
結婚して
こどもを産んで
ごく自然ななりゆき
なんだけど
それを人間らしさと言えるのだろうか
赤ちゃんを抱いた
お母さん
しあわせそうに見えるけど
割 ....
一 アンタレス disk1
君と夜の海辺を散歩していた、
はずなのにいつのまにか
空を歩いていた
頭上に、海
でも今日はよく晴れていたから
涙の一滴も落ちなくて ....
私は暗い地面の中にいた
じめじめとして音もなく何も感じない
自分という人間の存在すら分からない
生きているのか死んでいるのか
そんな簡単な事すら実感できずにいる
闇の ....
黒縁の眼鏡をかけた教授の講義が一段落すると
スクリーン上に映し出されたままの
夏の星座がゆっくりと回転し始める
古びた校舎の窓側を覆う暗幕は
その歳月 ....
自分の中にある
忘れてしまっていた
言葉のアルバムを
ふと開いてみる
何でもなかったことを
こんな言葉で表したのかと
苦笑いしながらも
あのときの自分には
その言葉が似合っていた
....
終電前の
人もまばらなラーメン屋
少し狭いテーブルの向こうに
きゅっ と閉じた唇が
うれしそうな音をたて
幾すじもの麺をすいこむにつれ
僕のこころもすいこまれそう
....
毎日同じ時間 ともに過ごしてきたけど
離ればなれに なっちゃうんだね
いつまでも みんなと 騒いでいたいけど
そういうわけに いかないね
....
真っ黒な雲の中から
大きな目を開いた瞬間
ものすごい声がする
その声だけで家の窓が
殴られている
窓ガラスが割れそうだ
家が震えている
今度はぼくが雷に殴られる
胸からずしんと
体全 ....
太陽が沈み世界が透明になる頃
アルコールランプを消した
吸い出される琥珀は僕の記憶
人目を憚る様に
そっと吸い出されていく
吐き出す息は世界にあわせ
透明に消えていく
僕は酷 ....
昨日もまた
日めくりの暦が一枚消え
昨日を生きた言葉たちが
静かに眠る
昨日一番生きた言葉は
土の道だった
でこぼことした
それでいて不安定な小石の上を
靴底に刺さるかのような痛み ....
若葉の月の頃
風を聞きて静かに思へば
生を愛す心をぞ知る
時は絶へずして流れ
われもまたその一つ
緑薄き葉を見やれば
命の底から伸び広がらむさま
時が開くがごとし
いつしか葉も心も
....
昨日もまた
日めくりの暦が一枚消え
昨日を生きた言葉たちが
静かに眠る
昨日一番生きた言葉は
空だった
そこには故郷がいた
忘れていた思い出が
空の中に浮かんでいた
みんな幸せそ ....
風が
砂の上に言葉を残していく
見えない指先が作り出す
美しい波
足跡を残すこと が
躊躇われる日に
その言葉の意味を知りえたなら
どんなに救われるだろう
....
朝、部屋の窓を開けると
鳥がさえずっている
実はあなた
この鳥ではないですか
朝、食卓につくと
あじの干物がでている
実はあなた
この、あらわに開きにされた
あじではないですか
....
夕焼け空の中だった
買い物から帰る途中の道で
少年は子猫に向かって
石を投げていた
少年はすでに泣いていた
ぼくの家では猫は飼えないんだ
小さな声だった
ぼくが悪いんだ
お腹を ....
ぱらぱらと降っていた雨の間に
少しだけ見えた
澄んだあおいろ
絵の具屋さんには売っていませんでした
とぼとぼと帰る道
水たまりの中に
もう一度そのあおいろを
見つけました
昨日もまた
日めくりの暦が一枚消え
昨日を生きた
言葉たちが静かに眠る
昨日一番生きた言葉は
虹だった
雨が止む間際の
ほんのわずかな時間だけ
光の芸術は空へ浮かび
心に架かる
....
もうどうせ間に合わないと知って
少年はランドセルを鳴らすのを止めた
土手に咲く花々の名を
どれひとつとして知らない
草笛はこんな風に鳴らせるけれども
ずっとむかし
ひとも蛇のように脱皮したのよ
そう言いながら
そのひとは裸になりました
きょうは
わたしの水が澄んでいるから
涙の色がよく見えるとか
そんなことを
とつぜん言 ....
帰り道を歩いていたら
ぽとん
となにかが落ちたので
ふりかえった地面には
電池が一つ落ちていた
( 塀越しの小窓から
( 夕暮れの風に運ばれる
( 焼魚の匂 ....
ふと机に落ちてきた虫の
羽が綺麗に光っていた
いつもは黒く見えていた羽は
さわやかに透明だった
何の因果があって
ここに落ちてきたのか
少なくとも自分に
わずかな命の存在を
教えてくれ ....
大切なもの 見えなくなること ときどきあって
失ってから 気づいてしまって 泣くこともある
悲しい想いは したくないの
寂しい瞳は 見せたくないの
どこまでも空 ....
・
初夏の山は
いいにおいをしたものを
たくさん体の中に詰めて
まるで女のように圧倒的な姿で
眼の前に立ちはだかってくる
たまに野良仕事をしている百姓が
山に見惚れていることがあるが
....
街灯に蛾が群れている
明滅する明かり
雲がさあっと横に分かれて
月が顔を出した
誰もいない
蛾がひっそり群れている
角からぽーんと勢いよく
何かが飛び出した
赤いビニー ....
たいせつなものは
いつだって砂の中。
積み上げても積み上げても
ほろほろと崩れてしまう蛍光性の粒子の奥、
そろそろとうずめてしまいたくなります。
波打ち遠く、
ひっそりとひっそりと ....
空の草原を
風がそっと撫でてゆく
空が左から右へ波打つ
その波を追いかけて
鳥が飛んでゆく
今日の草原は
青に満ちている
草原からの潤いは
地上の緑にとって
かけがえのない
命の源 ....
目を閉じて
深くふかく
海の底に潜れば
もう何も見えません
潮騒もかもめの鳴く声も
そうして人魚の姿すら
目にする事はありません
真っ暗な海の底で
すぅっと通り過ぎる
真っ白 ....
いつもの時間に起きて
いつもの電車に乗って
いつもの決められた勉強をして
いつもの電車に乗って帰る
いつもの時間に
いつものことをする
何の変化もないように見えて
これは大変なことを ....
手が届かないというから
かわりに蛍光灯を換えてあげた
堅くて開かないというから
かわりにフタを開けてあげた
重くて動かないというから
かわりにソファーを運んであげた
うまく出来 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204