モンゴルの草原へ
私は行ったことがない
そこにはきっと
私の母に似た
まるくあどけない顔の
少女がいるだろう
草は風に溺れ
風は蒼天を巡る
ゲルの暮らしの中で
羊料理を囲 ....
ピエロは
いつも装っていた
彼のまわりには
いつも明るい{ルビ日向=ひなた}があるように
ピエロは
どうでもよかった
彼のことを
まわりの人々がどう言おう ....
空には空しかなく
梢の葉ははらはらと
大地に垂直に
それは昨日
空には太陽しかなく
落ち葉はひらひらと
大地に平行に
それは今日
空には心しかなく
光の葉はきらきらと
大地 ....
―刺青
そこには船があって
ずっとずっと遠くで
何かを引きずりながら
航海を 続けている
そこには涙があって
ずっとずっと近くで ....
黄金に色づいた銀杏の葉が
枯れて萎んだプラタナスの葉が
静かに落ちてゆく
それら微かな音にも
わたしの耳は鋭く応えるのに
あなたの声が届くことは無い
印したインクの滲み ....
中途半端な気持ちで
何かに向かって
それが叶わなかったとしても
泣きたくはならない
真剣な気持ちで
何かに向かって
それが閉ざされたとしたら
心から泣きたくなる
泣きたくなると ....
丘の上には
{ルビ幼子=おさなご}を抱くマリア像
周囲で秋風に揺られ
{ルビ頭=こうべ}を{ルビ垂=た}れるススキ達
丘の上から
見渡せば 一面の海
きらきらと日の光が踊る ....
一日の仕事始めにコピーした
今日の日付けの書類には
一枚の{ルビ付箋=ふせん}が貼られていた
「 使ってください 」
向いてなかった職場に{ルビ棄=す}てられて
縁 ....
秋の空から声が聞こえてくる
そろそろ交代だね
気が早いね
もう少しいるよ
今年もがんばったね
まあね
白く塗るのがもったいないね
今年はがんばれたよ
....
訪れる人の無い部屋の片隅
透明なガラス鉢の中の
私は金魚
一日一度 あなたの声を待っている
「おはよう」
そうしてドアを出て行く音がすると
私の長い一日が始まる ....
ある日突然
サルたちは言葉をもった
それは悲鳴から
あるいは喜びから
それとも恐怖から
悲しみからだったかもしれない
言葉はものすごい勢いで
増えてっいた
感情を細かい部分まで ....
誰も、だれも、ダレモ
やさしくなんかないんだな
夜、窓から、
外を見ると、
パーキングの明かりだけがまぶしくて
ぼくはポケットにコインをさがすけれど
百円玉いちまいで、
飲み物さえ買 ....
わたしの中を
夜の明ける方へと飛ぶ
一羽の鳥がいる
同じころ
一羽の鳥の中を
どこまでも墜落する
わたしがいるのだ
その日最初の列車が
古い踏切を通過していく
建物の窓はひとつ
ま ....
どんなときだって
それだけで元気になれるんだ
自分が他人よりも
不幸だと思うのは
他人も自分のことを
そう思っている
他人が自分よりも
幸福だと思うのは
他人も自分のことを
そう思っている
不幸も幸福も
他人が決めるもの ....
買った記憶もないのに
本棚に入っている本というものがある
まるで私の目を盗んで狡猾に忍び込んできた
小動物か何かのようだ
そしてそれは
小動物となることで
本としての役割を ....
―冬が来る前に一同集って
旧交をあたためようぜ―
Zからこんな招待状が舞い込んで
まあ、行ってみるか くらいの気持ちで
出かけていった
Zは中学時代の番長で
苛めっ子だった
俺はいつ ....
少年ピエロがやってきて
今日もステージが始まるよ
ひとりぼっちは さようなら
空間を共有するんだ
ジャグリングにパントマイム
火とかも噴いちゃってさ
客もそこそこ集まっちゃってさ
....
マンションからいつも見える
走り過ぎてゆく電車の姿
特急列車のような
決してかっこいいボディではないけれど
いつも決まった時間に
道路の上を
右から左へあるいは逆に走ってゆく
マンシ ....
○さん △さん □さん ×さん
ぶつかりあって
スクラムを組めない
日常の僕らの職場
たくさんの言葉で
自分の正しさを伝えるほど
はぐれてゆく
○さん △さん □さん ....
あなたと踊りたい
宙を跳ねる陽気なリズムで
あなたと話したい
まっすぐな打ち解けた言葉で
あなたと歌いたい
夏草の上で笑い転げて
あなたとキスしたい
何も考えず痛いほど強く
....
空の青さが遠くなる
秋の朝
それは同時に
山の芸術が近くなる
空の光が白くなる
秋の昼
それは同時に
山の葉が輝く
空の光が赤くなる
秋の夕暮れ
それは同時に
山が休むあ ....
まもなく世界が終わります。
まだ手続きのお済みでない方は
2階の受付カウンターへお急ぎください。
現在の世界への名残惜しさが捨てきれない場合は
3階のメモリールームで
一部を一時的に預からせ ....
くぐり抜けていく
いつも裸足だ
闇のそばでは
どうして自分だけは
かわらなくていい、などと
つぶやいていたのだろう
ああ、それはちがうよ
タングステン
熱で溶 ....
優しさとは人を信じること
温かい気持ちで素直に接すること
温かい交流はいつまでも繋がる
お互いに幸せになれる
利害や損得なんて関係ない
楽しく気持ちいい関係
....
今
私が学校に向かおうとする時
私と同じような誰かが
学校から帰ってくる
一人ぼっちで泣いている
仲良しの友達と遊んでいる
口げんかしている
夕ご飯を食べてテレビを観ている
飢えに ....
わたしはくま
バニーにも
子猫にもなれなかった
ちょっと可愛くない女の子
だって言われても
好きなのは甘いハチミツ
大きな森の小さな家で
あなたと暮らす夢を見る
わたしはくま
バニー ....
猫の眼を通って
新しい時空を覗き見る
混沌と静寂のメゾピアノ
僕の着地点が
其処に、在った
色々、ありました
とてつもなく
大きな罪を犯しました
あるいは
一番星みたく
....
夢に月が現れて
どうしてあの山荘に
月見に来なかったか
と咎められた
バイトだよ
欲しいゲームソフトがあったのでね
そうやっておまえは
取り残されていくんだ ....
人は
過去を切り捨てられないまま
今を動く現在がある
人は
今を動く現在があるから
変えることのできる未来がある
人は
生まれてきた事実を否定できないまま
今を生きる現在がある ....
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