とにかく上に進むこと
蟻地獄のように
もがけばもがくほど
下がってしまうこともあるけれど
きっと何かをつかめるはずだから
悲しくても
続けてゆくしかない
とにかく前に進むこと
迷路 ....
月が消失点のようだ
描かれた風景は
オルゴール、オルゴォル
ピンの抜けたドラムの内側で
漏れる光を、星だと
僕たちはささやきあったね
モルモットの遊具のように
夜空をまわし
時計の ....
全国版の道路地図
なんだか久しぶり
知らない県の
知らない道をたどってみる
知らない町
遠い町
きっと
毎日をそこで暮らす人がいる
道路沿いに家があって
今日も 今も
生活 ....
◇雁
ビルの間を
雁が渡る
窓からいくら叫んでも
届かない
天上の
賑はひをもつて
◇火口湖
火口湖に
白鳥がひとつ
燃えて ....
尾羽を風に吹かれて
鶴はどこまで歩いて行くのだらう
追ひ風に逆毛になつてゐるだけ
見栄えのいいものではない
貴婦人がふくらむスカートの裾を
気にする風情で
遠ざかつてい ....
今は昔、をとこありけり。
いとあやしき箱の詩歌の会にしげく通ふ。
投げ打ちたる文、すなはち返し給う局ありけり。
誰にか会はむと入りしかども、いらへなかり
ければ、つれづれなることを語るうちに、 ....
つきの誘いにうみは揺れ
えいえんのわかれが
ちぎられてゆく
みずのかがみに映るのは
浮かびのひかりか
しずみのそこか
こたえをつかめぬまま
円い波だけが
のこされて
ここ ....
人それぞれに歩みは異なり
知ってか知らずか
寄り添い或いは遠ざかり
ときには
いずれが頭であるのかを迷いながら
もしくは迷われながら
人それぞれに
異なる歩みは終わらない
かくして ....
明けてゆく空 広がる光
世界はこんなにもうつくしい
始まる一日に ほほえんで
今日もわたしは 今をうたう
生きていてもいいのかな
そう思うときが確かにあった
わたしは誰、と 闇に問う
....
カレーパンは秋に食べるのが
一番美味しい
道を歩きながら
秋空に向かって食べる味は
格別にうまい
袋を開けると
油の匂いが風にブレンドされて
まろやかな匂いになる
開ける口 ....
この時を封じ込めるように
祈る
静かな瑠璃色は
両のてのひらを祈りのかたちに
そこに少し息を吹き込むようにして
そっと閉じていて
ひそやかに夢を育んでいる
あなたは
わざと大雑 ....
しんと静まる部屋の片隅
迷い込んだ虫の声
リリリと鳴くは鈴虫か
秋の気配が深まりつ
冷気が足先に絡まって
空を切る目に
眠気はちっとも訪れない
天上を柵に見立てて
ひつじを数え ....
遠い国から
のろいに満ちた手紙が届いた
開くと燃えてしまったから
何と書いてあったかは知らない
遠い国から
いかりに満ちた電話がきた
電波状態が悪いらしく
途切れ途 ....
今まで包まれていたものが割れ
開いた胸の中にちょこんとおさまって
さいごのごあいさつ
ぽつりと佇んで微笑んでいる
あなたのからだが
いまはこんなにも
はっきりと見えるのです
....
秋の葉に虫の音の葉交じりつつ
言の葉添えず秋の深さに
{引用=(歌意)
秋らしい紅葉の葉に虫の音が交ざっている
(その趣は言葉では表すことができず)
秋の深さに言葉を添えられない
....
電車を待っていると
どこからか風鈴の音が聞こえてきた
チリリン
海は楽しかったな
今年は二回も行ったっけ
チリリン
花火きれいだったな
毎年見てた場所また行けるかな
チリリ ....
カリヨンの音色に合はせて
鳩が飛出してくれば
その下にゐるものは
みたまを受けた
みたまを受ければ もうしめたもの
とこしへの命を嚥下したやうなものだから
金銭では買へな ....
秋の日の
妙に蒸し暑い中を
仕方なく買い物に出かけた午後
気持ちも濡れているせいか
無駄遣いをするよりかは
いつもよりも買う物を少なく
いつもよりも短い時間で
目的だけを果たしてゆく ....
ひざっこぞうは
いつでも
こぞうのくせに
ぼくがころんだら
いちばんに
まっさきに
そこだけでいいとでもいうように
すりむけてくれるんだよ
赤チンキぬってさ
カットバンはってさ
....
微かに薄い雲の
漂う空が秋になっていたので
できるだけいっぱいに
四角に切り抜いて
箱の一面に貼り付けて
森へ行こう
こおろぎが鳴く
葉の色が秋になっていたので
できるだけいっぱい ....
まめクジラの水槽には
売約済みの札が貼られていた
まだ幼いのか
さざ波を飲み込んだり
小さな噴水をあげては
くるくる浮き沈み
はしゃいでいる
こっそり水槽に指を垂らすと
あたたかい ....
疲れたようにうずくまる
動物園のダチョウは堅い地面に佇んで
見渡すことのできない世界で
それでも何かを見つめている
鉄の柵は頑丈で
あっちとこっちを隔てているけれど
本当に隔離され ....
ぼくにはわからない
明日の風がどこにむかうのか
ぼくにはわからない
自分がどこに行けばいいのか
ぼくにはわからない
あなたに何を語ればいいのか…
でも
....
生活するために
自分の夢を諦めて
ただ命を維持することは
それはそれで
苦労と忍耐が必要なのであろう
自分の夢のために
自分の生活を我慢して
ただ理想を追い求めることも
それもそれ ....
わたしの中に棲む猫は
夜の闇のように黒い
{ルビ天鵞絨=ビロード}の艶やかな毛皮をもっている
そして
悩ましい緑の目をしている
人に媚びたりしない
いつも物陰から{ルビ窺=うかが}うように ....
雨が通り過ぎた朝
ちいさな秋が浮かんでいた
ひとひらの紅葉
雨が上がったばかりの空の中
道ばたの水溜りに
ちいさな秋が泣いていた
黄色い紅葉
地に落ちるのなら
土の上に
草の ....
君の願いが叶うのなら
どんなことかと尋ねられ
何もいらないと答えた青年は
望みどおり
何ももらわなかった
それでも彼は
幸せだった
願いが叶ったのだから
何もいらない
一文無 ....
可愛いやつと一羽のレース鳩を胸に抱いた
彼の眼差しは恐ろしいほどに優しかった
自分の弱いところを見ているようで
彼と一緒にいるのが嫌だった
彼と友だちだと誰にも思われたくなかった
それでも誘 ....
雨が降る日に鎌倉の寺に行き
賽銭箱に小銭を投げて
ぱんぱんと手を合わせ
厳粛な顔つきで
びにーる傘をさしながら
帰りの細道を歩いていたら
濡れた路面につるんとすべって尻餅ついた ....
交差点の向こう側で
指揮者がタクトを振っている
その動きに合わせて
たくさんの仔猫たちが
次々に海へと入っていくのが見える
カタクチイワシの群れが来ているのだ
胡麻漬け
卯の花漬 ....
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