あなた、アオウミガメの背中を
  匂ったことはあって?



少女は
さして、答えを求めるふうでもなく
空と海の継ぎめを見つめたまま
潮風にふくらんだ髪を
そっと抑える


 ....
日没にはまだ少し早い
真昼の太陽で暖まった道は
この足どりを重たくする

ふうと
ため息に似て
諦めともつかない
息を吐きかけたとき
風が首のあたりを
掠めていく

この道の
 ....
やがて
夕闇に閉ざされる海の
光る航跡を追いかけて

白い波間に漂う一人ぼっち
私の貝殻は声もなく
草合歓の葉陰から
かすかにもえる月を見た
藍青の波間にひかるものは
あれは はるかな昔
指から落ちた曹長石のかけら
青みをおびた涙の石の粒


もしも
月の淵から水音がしても
蠍が ....
放課後のプールサイドに一人きり石を投げれば割れる太陽


まだ細い腕もいつかはヘラクレス鏡にうつる半裸少年


肝だめし墓場を歩く君とぼく怖くないよと結ぶゆびさき


花火あがる綿菓 ....
青々と
広がる蓮葉には
明け方の雨の
ひとつぶ、ふたつぶ
みつぶ、よつぶが
それは見事な玉を作り
ころころと
風にゆれながら
まるで生まれたての
宝石のよう

真っすぐのびた
 ....
さびしくなったら
花咲く野辺へゆこう
ごらん
{ルビ凌霄花=のうぜんかつら}に蝶がぶらさがる
月の光がさしこんでいる
誰もいない部屋
片隅で
灰色猫が爪を研ぐ

テーブルの上には
開封されることのない手紙
赤い切手の消印は───

窓の外を
遠い汽笛が通り過ぎてゆく

 ....
通り雨がきらきら光り
僕の目に髪に肩に降りかかる
誰もいない薔薇園にひとり
堅く閉ざされた空を見つめていた
傘もささずに僕は
風に心をさらされたまま


果たされなかった約束は
いま ....
  日の出


小鳥はまだ明けそめぬ闇のうちから

啼き始める

辺りを憚るやうに

ほとんど囁くばかりのくぐもり声で

それは天与の美声を押し殺した 呟きだ


野の鳥よ ....
白い雲青らむ渚描いてく
    心の色は自由自在


砂浜に続く足あと追いかける
    麦わら帽子風のステップ


海の色変えてゆくまに一瞬の
    楽章を見る{ルビ波濤=はとう ....
水が
光のように満ちる
その上に折鶴を浮かべ
はるかなその波紋を数える
 あなたの瞳は美しい
 四囲の変化や季節の移ろいにも
 敏感に反応し
 あますことなく映し取ってしまう
 だからぼくは あなたを見ていさえすれば
 それでもう
 世界を手に入れているよ ....
夏の野は風の{ルビ恋歌=マドリガル}
花摘みの少女は一心に
草のまにまに漂っていた
白い花ひとつ{ルビ挿頭=かざし}にして
赤い裳裾をしめらせながら
濃厚な夏の匂いがたちこめる
姫百合の花 ....
草の上に寝転んで
そのまま流されてゆく
ゆっくり
雲の速度で
紺碧の輝きの海に
許されぬ恋が眠っている
静かにそっと おののきながら
それは波間に漂う白い貝
だけど 今日は
海へ漕ぎ出した
その想いを摘みとるために

 真珠とり
 真珠とり
 ....
 

    カッコウ


  人里に来たカッコウは

  しきりに

  何かを告げようとしているが

  村はあいにく農繁期

  耳をかしてはいられない

  そこ ....
花ならば君を待つのも安きこと
    ラベンダー蒼きこのうすにおい


この想い忘れてしまえマーガレット
    花びら散らし涙にくれる


ローズマリーやさしい罪は思わせぶり
   ....
雨を待つ君

明日を待つ私

並んで
風に揺れる午後
{引用=夜を裂く青星の爪 雄たけび上げ
駆け下りて来い わたしのなかへ}

夜の天蓋に{ルビ静寂=しじま}はこぼれ
瞬くのは
ただ蒼い隻眼
その牙は光り その爪は光り
そのたてがみは光り ....
南極で王樣ペンギンを見たよ。
王樣は一人 いや一匹だけかと
思つてゐたら
何匹もゐたよ。
何千何萬のペンギンが
みんな王樣なんだ。
王樣の王樣がゐるわけぢやない。
みんな同じ王樣なんだ。 ....
 あなたの瞳に映っている森が

 あまりにも美しく澄んでいたから

 僕はあなたの瞳を押し開いて

 中へ入っていった

 あなたは目の前にいた僕を見失って

 慌てふためいている ....
夏を知らせに
来たんだよ

始まりは
白だったかな

密の味は
甘かったかな
何度でも愛しているとくり返す
    雨打つ窓にムスカリ蒼く
金色に染め抜かれた黄昏の中で
一人ブランコをこぐ
おもいでは
陽だまりのようにあたたかく
消え残りの夕光のように
淋しくそこにゆれている
切ないものは
この胸の痛み

今朝一番に見た
青い空
それは
濡れた樹々の梢に透かし見た
緑の扉
明るい庭先のその扉を夢見る
光と影を刻み憧れにたたずんで
あるいは移り変わる街の喧騒の中に
待ちくたびれて
人知れず錆びついていたあの扉
そ ....
一瞬で
それと分かる匂いは
金木犀


 幼き頃の庭遊び
 細かな花びら
 摘み取って
 硝子の瓶に蓋をした
 秋の陽だまりにも似た
 満ち足りた表情で

 その濃い芳香さえも ....
のんちゃんの
さんりんしゃは まっかかで
はんどるのとこに
いろんないろの
フサフサが ついていた
あか あお きいろ みどり しろ
いつつも ついてて きれいだった
あしでけって さか ....
追うように
追われるように
獣たちが駆け抜けていった
土手の草むら


ことし祖母は
言葉をいっぱい失ったので
体も半分になってしまったと言う


秋になって
いちめん ....
未有花さんのおすすめリスト(6094)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
回遊する少女_(アオウミガメ)- 佐野権太自由詩30*06-8-1
夕刻、蝉の声- LEO自由詩14*06-7-28
渚にて- 石瀬琳々自由詩18*06-7-26
緑の月- 石瀬琳々自由詩17*06-7-24
【短歌祭参加作品】半裸少年- 石瀬琳々短歌24*06-7-21
夢見心地- LEO携帯写真+ ...1806-7-18
- 石瀬琳々自由詩9*06-7-18
真夜中の夢- 石瀬琳々自由詩10*06-7-15
恋の名残りに- 石瀬琳々自由詩7*06-7-13
日の出__蝶__あさがほ__……- 杉菜 晃自由詩6*06-7-11
海の画帳- 石瀬琳々短歌9*06-7-4
静か- 石瀬琳々自由詩14*06-7-2
そして_あなたの中へ- 杉菜 晃自由詩6*06-7-2
姫百合野- 石瀬琳々自由詩12*06-6-30
旅行- 石瀬琳々自由詩9*06-6-25
真珠とり- 石瀬琳々自由詩15*06-6-23
カッコウ__オウム__キツネ_・・・・・- 杉菜 晃自由詩6*06-6-22
花言葉- 石瀬琳々短歌14*06-6-16
待ち合わせ- LEO携帯写真+ ...18*06-6-15
シリウス- 石瀬琳々自由詩12*06-6-9
海に向かつて- 杉菜 晃未詩・独白1*06-6-4
深く森の中へ- 杉菜 晃自由詩12*06-5-31
ドロップス- LEO携帯写真+ ...12*06-5-24
失意- 石瀬琳々短歌9*06-5-23
おもいで- 石瀬琳々自由詩6*06-5-17
切ないものは- 石瀬琳々自由詩6*06-5-12
緑の扉- 石瀬琳々自由詩17*06-5-5
思い出『金木犀』- LEO自由詩7*05-10-11
思い出『シロツメクサのさんりんしゃ』- LEO自由詩10*05-10-5
彼岸花- yo-yo自由詩705-9-28

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