小さな後悔を
ひとつずつ折りたたみながら
冷たい雨の中を歩く
しつこい雨音を
ことごとく無視しながら
答えをクシャクシャに丸める
痩せた街路樹は
桜並木になろうとして
つれ ....
またひとつ
誰かがクシャミをする
ハナからハナへ
クラクラするよな黄色い粒子
シカイもシコウもむず痒く霞んで
オン着せがましいIgE抗体
もうひとつ
誰かがクシャミをする
....
心はいつも溢れる洪水の岸にあるけれど
この身は独りモロッコの砂丘にある。
鳥が落とした棒切れを拾い上げ
星形の砂漠に
蜘蛛と猿の地上絵を描く。
砂紋を横切るように
てんてんと残 ....
はじめて
海水浴に行った
遠浅の海を
沖に向かって泳いだ
ふりかえると
父と母と妹が
あんなにも遠い
あわてて岸にもどった
かき氷をを食べて
みんな
家に帰 ....
ちょっと勇気いるんだよね
あたりを見回してひと気ないの確かめたら
ちいさな箱のなかへ素早く潜りこむ
ペナペナなカーテンを閉ざせば
箱のなかにはなんとも顔色悪い薄倖そうな女がひとり
あ ....
小学校の修学旅行で
男子は三つの班に分かれる
クラスのほとんどがいずれかに手を挙げたが
ぼくはどの班に入っていいかわからない
先生が人数を確認していく
「男子がひとり足りないわ」
それ ....
自傷天才詩人の
ブラックモア君は
半端な綺麗事ばかり書くなと
僕を罵った
確かに
君の本音剥きだしの綺麗事は
美しいけれど
明らかに
臆面もなく格好つけていいのは
君のほ ....
苦笑まじりで
激しくうなずく街路樹
あきらめ顔で
でたらめに踊るビニール袋
恥じらいながら
身をくねらせるのぼり旗
慌てふためいて
路上で死んだふりをする放置自転車
....
千夜一夜
回転しながら
浮き沈みするリビドー。
スルタンの青い宮殿の奥深く
幾重もの厚い石壁に隠され
永遠に閉じ込められた
千人の女たちが抱く
太陽の宝石
飽くなき欲動。
薄いヴ ....
海と陸に幾つもの水爆が落とされて
夕日が消えてしまった
森林が砂塵に帰して
息が止まりそうになる
人間が
スピンオフエイプの化石として
砂漠に埋められた
世界は焦土に食べ ....
青灰色に輝く海岸沿いに
小さな赤い屋根の家が立つ
その家には
ブラウニーの妖精たちが棲んでいる
小さな妖精たちは
茶色のボロ着を身にまとい
いつからかその家に棲みついている
....
先輩ってまんまセブントゥエンティーなんですね
褒められているのか
それとも貶されているのか
一回り年下の後輩が私の耳元で囁いた
街中でも見かけるあのスタイル
脚の短さを隠そうとしてパ ....
私のふたつの乳房は
アムリタの豊饒に満たされている
明けたばかりのこの夜
現世が終焉するその前に
私のアムリタをあなたに飲ませたい
真っ赤な舌をチロチロと動かす毒蛇のように
長い
この腕 ....
ぼくはずっと眠っていた
家並みの混んだ路地の奥
細い電線が空に絡まる保育園の
二階のしわくちゃな布団の上で まんまるに
ぼくの夢の上を白茶けた紙飛行機と
たくさんの紙の砲弾が行き来した
....
ああっ、そういえば昨日だったんだよね
意図的に忘れてた訳じゃないし
これって何なんだろうね
「どうしてなんだよ!」
面と向って尋ねられたとしたら何て答えるべきかな
えっとさあ…
....
ねこバスをおりて走れば森の道
裸足でならす五月の姉妹
ねこ紳士希望を連れて空を蹴る
胸に抱くは夢見る少女
もののけが太古に生きる彼の地での
奪う命と生きてく力
迷い込む秘密 ....
「人魂」
オイラが死んだときさ
あれ
よく墓場に出るって
あれだけどさ
300Wで光っていたいもんだね
「ファックス」
置かして
そこ
擱かして
そ ....
パピヨン。
華の世界を。求めて。飛び回る。
紅い。蜘蛛の糸。に囲まれた。夜の華。
満月から。垂らした涎。が呻く。
パピヨン。
黒い管。が伸長する。甘い蜜。
興奮と。恍惚が。摩天楼の ....
もうすぐ
何も書けなくなるかもしれない
春の暁を迎えることもなく
散っていく
桜の木の下で眠る
モンシロチョウの卵のように
冬に埋もれて
全てを白灰に戻し
あなたのことを忘れ
{ルビ ....
私を降ろしたあの汽車は
星の路へと駆け上がる
手には破られた乗車券
夢を追うことに疲れたんだ
信じていた言葉の羅列も
いつしか色を失くしてしまった
思い出すのは、仲間の笑顔 ....
電線を泣かせるのは
木枯らしだ
冬のからだの
声だ
何も掴めないのは
街路樹だ
冬のからだの
手だ
キシキシと縮こまった
エンジンを震わせて
登り坂を這っているのは
....
私のおなかの上で赤鬼みたいな怖い顔をして
額の汗を拭おうともせず
力強さこそが総てと容赦ない恥骨の痛みに涙を流す
*
さきほどまでの赤鬼が嘘のような寝顔
横になって見つめれば不思 ....
1 ピアノ
誰もいない地平で
黒いこども達が踊っている
輪になって
誰もいない地平で
黒いこども達が歌っている
よその国の歌を
どこに置き忘れたのか ....
猫のひげ、五線譜にして奏でるの。エリック・サティ『あなたが欲しい』
虹色のしゃぼんの中にうずくまり うたかたたちの秒針を聞く
燃え尽きたような落陽を懐かしい目で見ている
時の流れはひどく穏やかに僕の首に指をかけ
少しずつ呼吸を減らして眠りゆく
今から三日間消えてしまっても良いですか?
どうか探さないで下さい 僕はどこ ....
あかい花、血の滲みただかなしくて
唇ぬすみ逃げる夕焼け
あかい花、きれいだねってつぶやいた
水に落ちればいつか見た夢
あかい花、口にしたなら消えてゆく
....
午前一時七分
ごらん
粉雪が降っているよ
まるで天使の羽が舞っているように
今は
僕らだけの窓辺
君と一緒に過ごしたクリスマス
最初の告白
....
{引用=
赤くて甘い熟れた先端よりも白くて硬くてすっぱいお尻を
齧ったときのほうがずっと春に近づけるんだってさ。
朝から晩までへたのまわりに齧りついたのに、今日の天気は雪です。
舌がただれて痛 ....
「きらいなの、グリンピースは。」発芽して豆の木になる僕のお皿で
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