私の小鳥が死んだ
何度か獣医さんに診てもらったりしたけど
これが胸騒ぎなのだろうか
部屋の錠を開けるのももどかしく逆光に沈む鳥かごへ駆け寄れば
初夏の陽射しのなかで彼は小さな亡骸と化していた
....
湖面にさざ波が立って
透明な魚がうまれた
それは夏の風
開け放した窓に
大群となって飛び込んでくる
君は薄い身体を持つ
果物をひときれ口に入れる
今朝もあまり食べないんだね
病んで ....
岬の白い道を歩いてゆく
突端をめざして一歩一歩
五月の空は
高らかに晴れわたっている
風が吹く
記憶が吹く
波が聴こえる
記憶が聴こえる
岬は細く長く
なかなか突端にはたどり ....
夜明け
窓から冷たい空気を
迎え入れたとき
君に恋していたことに気づく
吐く息が白く
一瞬雲になり消えていく
君のいない空の向こうに
なぜ
夏でなくて
この冬の季節に
....
あさとよる
うみとそら
砂浜は境界線
ふたつでひとつ
よせてかえして
あいまいに笑ってる
目はふたっつ
耳はふたっつ
瞬きのためいき
ふたつでひとつ
すってはいて
風が遠くを ....
あなたの言葉が
重過ぎたので
きのう貰った羊羹を
切るみたいに
二等分する
それでも
まだ 重過ぎたので
また 二等分した
羊羹だったら
小さくなるのに
あなたの心は
軽くは ....
落ちた数を数えるよりも
水滴の生まれた場所が知りたかった
ささやき声も空気を振動させるような
ぎりぎり均衡を保っているこの小さな空間で
破裂する寸前の風船みたいな緊張感の中
今、きみが生 ....
どこから始めようかと
腰に手を当てて考える
片付かない過去と
まだ空っぽの未来
どうにでもなる
なんとでもなる
自分のことは自分で決める
汚れた顔を拭いながらでも
明日晴れるなら蜃気楼をみにいこう
僕がまっている何かはまだこず
降り頻る涙の雨を浴びて
脅えながらそれでもなお
コンクリートに覆われた部屋からでずにいた
きてはかえす
....
090429
バナナの実をもいで
大人たちが笑う
バナナは
食べられても
痛くない振りをしている
南国の
強烈な太陽で
鍛えられているのだ
....
階段をのぼる音がする
子供のからだのまま
大人になってしまったこころで
夕暮れ
母は一尾の魚をさばきはじめる
命の尊さも
生きることの残酷さも
何も語らずに
父は形 ....
サーカスのピエロが
玉乗りをしているような
安定しない足元を懸命に
バランスを取りながら問う
上手く乗れていますか
泣きそうな顔で
周りを見渡すと
拍手が返ってくるから
....
{引用=嬰子の褥
闇のひとつ奥に蠢動する白光体がたしかにあった
血に焼かれた嬰子が視えない手のひらに止まって
私の身体に続いている
いやへその緒はぜんまい状に闇に溶けて
それはもうわ ....
※
ちゃぶ台をひっくり返す
それって池田屋階段落ちのカタストロフィなのか
それとも寺内貫太郎の癇癪玉が破裂したのに似ているだけなのか
亡くなった父親がちゃぶ台をひっくり返したのに一度だ ....
一針
また一針
言葉の
日向と日陰を
縫い合わせる
一針
また一針
自分の
頂点と底辺を
縫い合わせる
ときどき痛くて
たびたびくすぐったくて
ちょくちょく嘘で
....
昨夜みた夜空を游ぐ三日月をみた
君は今硝子の壁ごしから何かを伝えたくて
吐息を吐いて窓に何かをかきだした
そのもじは反転していて読めなくて
君は今にも泣きだしそうな顔で
....
ぼくたちはきっと
忘れるために生きているんだね
呼吸の数だけ物語があって
さめてしまった二酸化炭素から
秘密の木箱に片付ける
時々開けて眺めては
過ぎた呼吸を試してみる
そんなこ ....
龍のみち
風のかたち
青より高く
のぼってく
うろこ きらり
こころ ひらり
わたしも翔んで
空をつか ....
せっかく森を着せてあげたのだから
木漏れ日のように微笑みなさい
せっかく草原を着せてあげたのだから
そよ風のような声で話しなさい
あなたはアミメキリンであり
トムソンガゼルであり
....
どこから
ともなく
流れてくる
なつかしい調べ
さえずる小鳥も
枝の上で目を閉じ
一匹のシマリスは
頬を膨らまして
....
090423
懐中時計をポケットにしまう
ジーパンのポケットにしまう
海の中には
海坊主がいて
溺れた人を
丸呑みにするのだと
笑いながら時計を見て ....
私は女ですから、髭を剃るようなことは一生ないものだと思っていました
私はいま髭剃りを手にしているのですよ
少女の私が聞けば目を引ん剥いていることでしょう
何でも機械化する時代ですから
剃刀の刃 ....
震源地も定かではない
取るに足らない心の揺らぎを
マイナス思考回路で増幅させ
大津波が来ると身体じゅうに触れ回る
さっそく駆け出していく
おっちょこちょいの鼓動と呼吸
長期休暇をと ....
どこかで焚火が燃えている
誰もいないのに火の粉が爆ぜる
その色を知る事が出来ただろうか
その熱を感じる事が出来ただろうか
{引用=今しがた誰が手折ったのだろう
一輪の薔薇が土にまみれ ....
箱庭の中に
ふりそそぐ春の雨は
ぎんいろの ひかり
松の木の葉の先の
あの ほそいほそいところまで
全部 ゆるす みたいに
丁寧に 丁寧に降る雨
小鳥が
木の下で雨やみを ....
突き抜けた青天から目をそらし
振り返ってしまうことがためらわれ
気付かなかったことにした
水滴ひとつ浮かばない箱を抱えて
所在を見つけようともしなかった
抜けた羽毛を一枚入れて
ふたを ....
切ない夜を波濤の数だけこえて
やおら滅びゆく貌(かたち)のように虚しく、
何処までも果てのない君とともに
歌うべき僕たちの言葉が見つからない
伏せた漆黒の虚しさは朝日を浴びて
いつしか濡 ....
糊の効いた藍染めをくぐり抜けると
石鹸の香りがいらっしゃいませと迎えてくれる
散歩の途中でみつけたお風呂屋さん
モクレンの香りに誘われて迷い込んだ小路
朝夕通っている駅前通りとはさほど離れ ....
銀色のトラップが巡らされた森の中
ラピスラズリが妖しく光を放つと
遠吠えするサボテンやおしっこ臭いキャベツ人形たちが
深い眠りから目覚める
*
レムの端っこで危なげなア ....
少女がその魔法使いの弟子となったのは、魔法使いを一目で好きになってしまったからだ。川から涼しい風が吹いてきていたある夏の午後、川べりでうずくまる黒い影を少女は見た。すぐには魔法使いだとはわからず、古 ....
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